防犯/防犯小説

女フリーランサー、身の守り方(2ページ目)

取引先の男性が自宅にまで訪ねてきてしまった…。どう切り抜けたらいいのか? 洋美は考えていなかった事態にパニックになっていた。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

友だちに相談

女一人では困難?
女一人では困難?
急に力が抜けたようになり、どっと疲れた。何がいけなかったのか? まず、「名刺」の問題だ。独立して自宅を仕事場にしている以上は名刺の住所は自宅しかないと思っていた。郊外とはいっても、逆に○○のように自宅が近いということもあり得るのだった。しかし、自宅の住所を書かずにどうすればいいのだろうか? 

どこかの編集プロダクションに所属するしかないのかもしれないが、それでは独立した意味がない。今夜のように取引先が突然やってくる危険性もある。女一人で仕事をするのは難しいということだろうか。とりあえず、○○の仕事を紹介してくれた友人の麻里子にメールを送って、相談したいことがあるので電話してもいいかどうか、まず確かめた。結婚している友人だが、夜型で起きているから電話を待っていると、すぐに返事が来た。

「もしもし? あ、麻里子? 私、洋美。ごめんね、こんな遅い時間に」
「いいの、いいの。こっちも仕事が煮詰まっているところだったから。どうしたの?」
「実はね、……」
一部始終を話すと、麻里子は大いに憤慨した。

「そうかぁ。あの○○め。そんないやらしいことをするような人だったんだ。ごめんね、ヘンな人を紹介しちゃって」
「ううん。いいのよ。仕事先を紹介してもらって助かってるし。ただねぇ」
「何がいやって、フリーだと名刺に自宅の住所を書かなくちゃならないってことよね。私はダンナと一緒だから安心だけど。あ、彼は今日、編集部で徹夜。校了間際だから。電話が長くなっても平気よ。そういえばさ、『私設私書箱』って聞いたことない?」
「私設私書箱?」

「うん。郵便局のは条件があって普通、個人では借りられないのね。民間でやっている有料の私書箱で、自宅を知られたくない女性とかが利用しているって。都心部に多いみたいだから、仕事に使うのにいいかもよ」
「ふーん。私書箱っていうからには、郵便物とか荷物とか預かってもらえるの」
「もちろん。コースや料金が色々あって使い分けできるみたいよ。仮に一万円かかっても、事務所を借りるよりは全然安いじゃない?」
「そうね」
ストーカー対策に使う女性もいるらしくて、私書箱の住所の付近でうろうろしているストーカー男もいたりするみたい。ただ、怪しいところだと犯罪に使われたりすることもあるみたいだけど、ちゃんとしたところなら」
「へ~。でもま、そこに住んでいるわけじゃなければね。あとは郵便物を取りに行くときに気をつけるってことか。でもここでも逆に個人情報を出さなくちゃならないんだ。それもなんだかなぁ」

「あと、レンタルオフィスとか」
「あぁ、SOHO向けのミニオフィスね。どうなんだろ、ああいうのって」
「知り合いが使っているんだけど、すごく狭いけどさ、一人なら十分だし、コピー機とか色々事務所に必要なものは共用で使えるし。便利じゃないかな」
「うーん、でも費用が掛かるよね」
「たしか、一坪3.3平米くらいの広さからあって、机と椅子があってと最低限でも、仕事には十分でしょ。住所も使えるし」
「それでいくらくらい掛かるのかな」
「さあ、場所によると思うけど」
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