防犯/防犯小説

愛の迷宮… 愛と故意のラビリンス?第1回

【全6回】32歳の会社員・逸美が男性との出会いを求めて行動する。そこで出会った運命の男と交際を始めるが、愛の苦悩と葛藤に身をやつす。逸美の愛はどこへ向かうのか?

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

※故意
(1)ことさらにたくらむこと。わざとすること。「―に負ける」(2)〔法〕 自分の行為が一定の結果を生ずることを認識していて、あえてその行為をする意思。刑法上は罪を犯す意思すなわち犯意をいう。
※ラビリンス 1 [labyrinth]
(1)ギリシャ神話で、怪物ミノタウロスがクレタ島の王ミノスによって閉じこめられた迷宮。ラビュリントス。(2)ゴシック聖堂の床などに表された迷路の紋様。(3)生け垣などでつくった庭園中の迷路。
※迷宮
(1)中に入ると出口がわからなくなるように造った建物。(2)事件の捜査が困難になり、解決がつかなくなること。(大辞林・大辞泉より)
※記事のタイトルの「ラビリンス」は「迷宮」の意味合いとして書いています。


※この記事は、最近起きた事件をヒントにした創作です。

運命の出会い

パーティは出会いの場
パーティは出会いの場
春、弥生3月。その地方で一番大きな街の洒落たレストランで、あるパーティが行われていた。20代から30代の男女が十数名ずつ集まっており、司会者がマイクを手に、場を盛り上げようとしている。初め、男性が女性の席を順に回って、一人一分間ずつそれぞれ自己紹介タイムがあった。それから、フリータイムとなる。気に入った異性に積極的にアプローチすることができるのだった。

それは、26歳から36歳までの未婚男女の集まりだった。「出会いパーティ」「カップリングパーティ」と呼ばれるこうした集まりは、出会いの少ない大人の男女の出会いの場所として、あちこちで開催されている。その女はこれで三度目の参加だった。前の二回が好みの男性も見つからず、いい結果を得られなかったので、(これでいいのがいなかったら、もうヤメ。他の道を探そう)と思っていた。

そして、この日、司会者がフリータイムの説明をしている間中、女は一人の男に目を奪われていた。(イケる。この人だわ)わずかな時間の自己紹介でも、とても感じが良かった。他にもっと顔のイイ男性も、服装がイケてる男性も、年収が高いという男性もいた。だが、女には他の男は目に入らなかった。まるで磁石で吸い寄せられるように、その男に近付いていった。

柔らかいシフォンのスカートが蝶のように翻って、買ったばかりのヒールを履いた脚がもつれそうになるのをこらえて、男のそばにたどり着くと、「あのぅ…」と声を掛けた。彼はさわやかな笑顔で振り返った。互いに社交的な微笑みを交わすと、女は恥ずかしそうに下を向いてクスッと笑った。(ウフ。もしかしたら、この人が私の未来の夫になるかも)二人並んでいることが、まるですでに結婚披露宴で親戚や友人・知人たちの前で並んでいるかのような錯覚を覚えた。

身長も自分とバランスが取れている。近くでよく見ると、日に焼けた顔が誰かタレントか俳優に似ていると思った。誰かは思い出せないが、好きなタイプの顔だった。歯を見せて笑った顔が、少年のようでもある。整った歯並びがまた点数をアップした。「あ、えーと、白崎さんでしたっけ?」全身で女に向き直ると、男は誠実な様子で話し出した。


*  *  *  *  * 

32歳の会社員・白崎逸美は「負け犬」という言葉が大嫌いだ。別に喧嘩をしたわけでもないのに、なんで勝ち負けがあって、一方的にそう呼ばれなくてはならないのかわからない。仮に「勝ち犬」だったとして、だから何だと言うのか? 人の人生に勝つだの負けるだのと勝手に勝負を決めつけること自体が不愉快だ。最近は、実家の母親までもが、「あんただけよ、いい年をして結婚していないのは。誰かいい人でもいないの?」とうるさい。

仕事は順調だし、預金も十分ある。だが、問題は男がいないことだ。二十代の大半を一人の男性とつき合っていたが、長すぎた春とでもいうか、相手の転勤をきっかけに別れてしまっていた。それ以来、なかなか縁がない。二十代後半の女性とは結婚を意識するせいか、男性もなかなかまともにつき合おうとしてくれなかった。そして気がつくと三十代に突入していた。


→女友だち……p.2
→→男選び……p.3
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