【連載第1回】 人妻が落ちた真昼の奈落~第1回 
【連載第2回】 人妻が落ちた真昼の奈落~第2回 
【連載第3回】 人妻が落ちた真昼の奈落~第3回 
を先にご覧ください。

<前回までのあらすじ>
万引きを見られてしまった普通の主婦・奈美恵は、その女・宮下から誘われて禁断の仕事に手を染めていた。順調に仕事と生活をこなしていたが……

手 入 れ

奈美恵は月に1~2日だけ、体の差し障りがあって休むときは事前に宮下に伝えてあった。それ以外は、確実に火曜日と木曜日に出てくる奈美恵には、宮下から電話が来ることは一度もなかった。奈美恵からかけることもなかった。宮下にとって、奈美恵はよく働く生真面目でカタイ女だった。何ごとにも一生懸命な点がここでも認められていたのだ。

その週の火曜日、宮下のマンションに奈美恵は向かっていた。月に4~5日の差し障りがたまたま前の週は火曜日木曜日とも休む巡り合わせになっていたので、前々週の木曜日以来、12日ぶりの出勤日だった。半年やってきて、月に一度だけ一日休むことはあったが、毎月少しずつのズレでたまたま前の一週間、顔を出せなかった。

久しぶりの仕事になんとなく足取りが軽く感じられた。いつの間にか、自分の生活に秘密の仕事がなじんでいた。いや、体がなじんでいたのかもしれなかった。ターミナル駅からマンションに向かう道のりで、思わず笑みがこぼれそうになった。「宮下さ~ん、お久しぶりです」「あら、ホント。久しぶりね。めずらしいわよね」「すみませ~ん。でもまたガンバリますから」「頼むわね」

事務所でお茶を飲んだり、他愛のない話をしたりしているうちに、一人の女が指名の常連客の対応に個室に消えていった。音を小さくした小型テレビを見てヒマを持て余していると、もう一人の女にも指名が入った。いつものように客から前払いで受け取った金を、テキパキと半額に分ける宮下の様子を見ていると、わずか十日あまりの不在だったのに懐かしさも覚えた。それでも、宮下と二人で事務所にいると、なんとなくあせりを感じたが、「大丈夫よ。これからお客さん、必ず来るから」と宮下に言われて、あせることもないとのんびりしようとした。

火曜日と木曜日にほとんど必ずいることがわかっているので、奈美恵を指名する客もぼちぼちいるのだ。誰から連絡が入るだろうか? わりと気に入っている常連客の顔を思い出して、フフッと笑みがこぼれた。そこでインタホンが鳴った。「あら、誰だろ。セールスかな」宮下が応対すると、女性の声で「管理組合の者なんですが」と奈美恵の耳にも聞こえた。マンションの管理組合からのお知らせか何かだろうと思った。宮下は、「何かしらねぇ」と不安そうに玄関に向かった。いつものようにドアスコープから相手を確認してドアを開けるだろう。奈美恵はお茶を飲み、テレビに目を向けた。

すると、突然、大きな物音とともに、「動くな!」「はい、そのまま、そのまま」「誰も動かないで」と大声で、何人かの男たちがなだれ込んできたようだった。異様な雰囲気に、ハッと身が固くなって、奈美恵は動くことができなかった。「開けなさい!」と大きな声とドアを叩く音。「キャー」と女の叫び声も聞こえた。無遠慮な靴音が奧の事務所にもやってきた。何が起きたのかわからなかった。だが、自分のバッグを掴んで、逃げようと思っていた。「はい、あんたもね、そこから動かないで。何もしちゃダメだよ、そのままでいて」と、ジャンパー姿の男に手で制された。



→連行される
→→重なる不運
→→→夫の告白
→→→→奈落の底を打つ
  • 売春防止法(抜粋)