連載第1回 人妻が落ちた真昼の奈落~第1回
連載第2回 人妻が落ちた真昼の奈落~第2回 を先にご覧ください。
<前回までのあらすじ>
夫が単身赴任中のある日、万引きを見られてしまった奈美恵は、女性に連れて行かれた喫茶店で許されざる仕事を勧められた。迷ったあげくに、断るつもりで電話をしたが、パートの仕事を休んで出かけた。
パートを休んで…
何気ないマンションの一室で |
夫に内緒の銀行口座。週に2日、必ず入金される金額は、15,000円から30,000円。ときに35,000円という数字もあった。1ヶ月に200,000円前後になっていた。着実に貯まっていく預金は、奈美恵の“仕事”への熱意の証だった。奈美恵は、「仕事」と割り切っていたのだ。
あの日…、宮下と名乗る女性に電話をかけて、断るつもりだった。しかし、「とにかく遊びに来てみて。ちょうどあなたと同じ、ダンナさんが単身赴任中の奥さんも来るから。話を聞いてみたらいいじゃない?」と誘われて、つい好奇心で行くつもりになってしまった。「それじゃ、本当にちょっとお邪魔するだけで」と、ターミナル駅からの行き方を教えてもらい、パートの仕事先に休むと連絡を入れたのだった。
朝のラッシュが終わった時間帯の電車は空いていた。窓からの明るい景色を眺めながら、何か不思議な感覚でいたことを思い出す。ターミナル駅から歩いて数分のところにある中規模のマンションは場所柄、事務所と住宅が混在しているようだった。正面玄関からではなく、建物の横手にある非常階段を上がってすぐ二階にその部屋は見つかった。表札は「○○商会」となっている。
インターホンを押すと、「はい?」と宮下らしき声が応答した。「あのぉ」と言っただけで、すぐに「はい、今開けるから待ってね」とガチャリと音がして、すぐに玄関に人が近づいてきた様子がわかった。ドアスコープから一瞬、確かめられるとドアが開いた。
「いらっしゃい。よく来たわね。さ、入って。どうぞ」「どうも…」お邪魔します、という言葉を言うべきかどうか迷ったが、玄関に入ると宮下はすぐにドアのカギをかけた。「きっと来てくれると思っていたのよ。これ、おニューだからね」と、新品らしいスリッパを出してくれた。「場所はすぐにわかった?」「ええ。言われた通りに歩いてきたらすぐにわかりました」「よかったわ」
靴はシュークロゼットにしまわれた。短い廊下の先にあるドアを開けると、そこまでのごく普通のマンションの内装が、がらりと変わった。赤いカーペットに暖色系の強い照明。左側に待合室のようなソファの置かれた狭いスペースがあった。そして廊下の両側に並んだドア。「ここはねシャワールームなの。奧にもう一つ別のシャワールームもあるのよ」「はぁ」「それから一番奥に事務所があるの。こっちよ」低い小声で説明してくれる宮下。
いくつかの小部屋があるようだった。事務所に通されると思いの外、ごく普通のくつろげる居間のような雰囲気だ。「どうぞ、今、お茶をいれるわ。そのへんに座って」と、宮下が声をかけた。「今ね、二人お客さんのお相手をしているの」「こんな時間に?」まだ午前中なのに、と不思議に思った。「だって、人妻だから日中がメインなのよ。もちろん、夜も営業するけどね」「お客さんがいるんですか?」「朝からだってソノ気になる人はいるわよ。フフ」
手際よくお茶をいれてくれて、宮下も事務用の椅子に座った。「どう? こんな感じなの。別に恐い感じじゃないでしょ?」「あ、全然」「個室の方はね、後で見てもらうけど、好きにしていいのよ」「は?」「自分の荷物が増えるでしょ。自分の好きなように飾ってもいいのよ。個性があるでしょ。ただローテーションにもよるけど。他の人と共有する場合は、仕事が終わったらそのロッカーに入れておくの」「はぁ。でも、まだよくわからないんですけど」
2p.初 仕 事
3p.報 酬