防犯/防犯小説

【連載第5回】女が戻りドアを開けると、そこには テレクラの甘い罠~深夜の訪問者(3ページ目)

女がコンビニに出かけて戻ってきたと思ってドアを開けると、そこには女以外の人物がいた。数人の男が闖入してきてK介はわけのわからない事態にパニックになる。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

物言わぬ証拠

物言わぬ証拠…湿ったタオルを両手で前に突き出した
ミサキに救いを求めるように声をかけた。ミサキは無言で今度は両耳を手でふさいだ。

「タケダさん。問題はね、彼女が何を言ったかじゃなくて、あんたが彼女に何をしたかなんだよ。彼女は未成年でオレの彼女なの。あんたはその彼女をホテルに連れ込んでヤッたんだろ。その事実が大事なんだよ」

「事実と言っても…」

「おい」



ナカニシが顎をしゃくって指示すると、もう一人の男がバスルームに入っていった。湿ったバスタオルを二組、掲げて部屋に戻ると、両手で前に突き出した。

「どっちも使ってますね」


その言葉を受けて、ナカニシがK介を振り向いた。

「二人ともタオルを使ったんだろ? つまりシャワーを浴びた。これは証拠じゃないのか?」


また、もう一人の男に向かって今度はベッドの方に視線を投げて、顎でまた指示をした。何をするのかとK介が不安に思って見ていると、男がベッドに近づいた。そして脇にあるトラッシュボックスに手を突っ込むと、ティッシュペーパーの固まりを取り上げて見せた。

「あれは、何だよ。ヤッた証拠じゃねーか?」

「……」



もう一人の男は、乱れたベッドの枕の周辺を探って、今度は指で何かをつまみ上げて見せた。

「ミサキの髪の毛じゃないっすか」


K介は、ミサキのセミロングの茶髪が枕に広がっていた場面を思い出した。

「タケダさんよ。これでもヤッてないって言うのか」

「しかし…」

「しかしもカカシもねえだろっ!」

「いや、だけど、自由恋愛じゃないのか」



必死の思いでそう口にして、直後に後悔した。つまり、事実を認めてしまったのだ。ナカニシはニヤリと笑った。



【連載第6回】テレクラの甘い罠~夜明けの苦悩 に続く


【連載第1回】テレクラの甘い罠~夫の言い訳 
【連載第2回】テレクラの甘い罠~女からの誘い
【連載第3回】テレクラの甘い罠~シティホテル
【連載第4回】テレクラの甘い罠~インザルーム
【連載第5回】テレクラの甘い罠~深夜の訪問者
【連載第6回】テレクラの甘い罠~夜明けの苦悩
【連載第7回】テレクラの甘い罠~妻の覚悟
【連載第8回】テレクラの甘い罠~ヤツらの最後

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