大学生の就職活動

「デキる新卒」と「手がかかる新卒」、入社直後の“言動”ですでに差。大手企業の研修講師が見たリアル

4月に入社した新入社員が現場に配属されて数カ月経つと、仕事で成果を出せる人と苦戦する人に分かれてくるが、実は新入社員研修時点で既に行動に差が出ていることが多い。今回の記事では、現場で即活躍する社員の新入社員研修時での特徴を解説する。

小寺 良二

執筆者:小寺 良二

ライフキャリアガイド

活躍する新入社員は研修時点で違う!

活躍する新入社員は研修時点で違う!

毎年4月になると大手企業を中心に新入社員研修の講師を務めるが、この仕事が実に面白い。入社式では就職活動時と同様に、全員が黒髪とリクルートスーツで同じように見えるが、新入社員研修が始まると当然それぞれの性格や行動が現れ始め、こちらからはその後の社会人生活の様子が、占い師のように見えてしまうこともある。

実際に研修中の行動だけを見て感じた、その社員が現場に配属されてから早い段階で活躍しそうか、逆に活躍するまで少し時間がかかりそうか、という印象は、その後の現場での活躍とつながっていることが多い。

多くの企業では新入社員研修後に、報告書という形で受講者である新入社員の研修時の行動や状態を、会社側にフィードバックする。その際に個別に名前を出しながら、即活躍が期待できる社員とフォローが必要な社員を人事に伝えることもある。

その後現場に配属されて働いている様子を見ることはないのだが、人事から報告を受けたり、半年後に「新入社員フォロー研修」などで再会したりした際に、活躍している社員はだいたい新入社員研修時に評価した社員と一致しているのだ。

では新入社員研修時に分かってしまう「現場で即活躍する社員の特徴」とは何なのだろうか?

特徴(1) 講師に対して積極的にコミュニケーションをとってくる

これは講師としては最も分かりやすい行動特徴である。

新入社員研修では、講師は新入社員にとって「最初の上司」となる。研修中に分からない点などを講師に質問できる人は、配属後に業務で不明点があった際に上司に遠慮なく質問できる可能性が高い。逆に講師に質問をためらう社員は、現場の業務で問題が発生しても、周囲に言えずに自分で解決しようとする人が多い。

新入社員は仕事力においては同期でそこまで大きな差はない。差が出てくるとすれば、いかに周囲の先輩や上司と早めに関係構築して味方につけ、有効活用できるかだろう。そういった意味で目上の人に自分からコミュニケーションをとりにいく姿勢は重要である。

ただ「講師に対するコミュニケーション」ひとつとっても、その行動の内容によってレベルに差がある。

先ほどの「研修中に分からないことを質問する」は評価としては「中の上」だ。当然できないよりはできた方がいいのだが「この社員は現場でたくさんの先輩たちにかわいがられるだろうな」という評価には至らない。研修中の自身の評価を意識した「優等生型」の受講者がよくとる行動でもあるからだ。

逆に現場で多くの先輩たちを味方につけそうな社員の特徴は、「休憩中に話しかけてくる」ことだ。しかも「雑談に近い質問なんですけどいいですか?」と言いながら、研修の内容ではなく冒頭の講師紹介のときに話した過去の経験や出身について質問してくれる。スポーツや留学経験など共通の話題があると一瞬で仲良くなるし、その社員の顔と名前も覚えるので、たった1~2分で関係構築ができてしまう。

本人は何の意図もなく素でやっていると思うが、日頃から相手に興味を持ち、相手も話したいだろう内容を無意識に場やタイミングを見計って質問できる力は、現場の関係構築でも大いに生かされるだろう。

特徴(2)空気に負けずに、一旦立ち止まることができる

新入社員研修では、ビジネスシミュレーションのような、架空のケースで現場に近い業務を体験して仕事の進め方などを学ぶワークがよくある。

当然制限時間もあるし納期意識も求められるので、チームで協力しながら必死に作業を進める。時間内に与えられた仕事を完了することは社会人として大切なことだが、その仕事が仕事の依頼者(顧客や上司)の求めているものと合っているのか?という視点も仕事を進めていく上では重要である。

多くの新入社員研修の受講者は、自分たちなりの解釈で一旦作業を進めようとする。しかし業務経験も少ない中での判断になるので、当然その作業内容は依頼者の期待や目的とズレていることが多い。本来はワークの後のふり返りで、そのズレに気付き、仕事は依頼者の意図や目的をしっかり掴むことが大切であるという学びにつなげるのだが、時々その部分を事前に気付き軌道修正してくるチームがある。

そういったチームにはだいたい「ん?ちょっと待って……」とズレに気付き、チームの作業を一旦止めることができる社員がいる。この行動はなかなか簡単にできることではない。人間は自分が決めた判断を疑いたくない生き物だし、まずは時間内に終わらせることを最優先しようとするのが一般的な新入社員が目指すゴールであるからだ。

その空気に負けずに一旦立ち止まることができる社員は、仕事に没頭しながらも、自分やチームを客観的に見ることができる能力がある。どんな仕事も最初の計画が完璧なものなどほとんどない。だいたいは軌道修正しながら進めていくのだが、それが新入社員研修の場面でできるというのは、現場の業務においても優れた軌道修正能力を発揮する可能性が極めて高い。

特徴(3)研修の自分の行動や成果を本気で悔しがっている

先ほどのような新入社員研修での実践ワークでは、時間内に完了できなかったり、仕事の依頼者の期待とズレていたりして、結果としてうまくいかずに終わることが多い。

そんなときにその結果をどれくらい自分事として受け止めるかは受講者によって差が出る。ほとんどの新入社員はワークが終わったときは悔しそうな表情を見せるが、研修が終わるとケロッとして帰る。研修の中での失敗なので、そこまで引きずらなくてもいいし、仕事のオンオフをつける意味でも研修が終わったらしっかり休むことも大切だ。

しかし中にはそのワークでの自分の行動やチームの成果を本気で悔しがり、その体験を通じて自身の課題と向き合おうとする社員もいる。そういった社員はだいたい研修終了後に残って講師に相談してくれることが多い。

例えば、

「学生時代も含めて自分はリーダーになったときはチームを引っ張ることしか考えてきませんでした。しかし今日はメンバーのフォローをもっとすべきだったと反省しています。ただそのバランスを仕事ではどう取るべきかアドバイスがほしいです」

のような相談だ。これは自分の成長や成果を出すことに貪欲な人でなければ出ない質問だ。同じ結果でも「また次頑張ればいいや!」と流す人もいれば、このように自分の課題と向き合う機会にする人もいる。当然後者の方が、その後の行動変容につながる可能性は高い。

現場に入った後は、ほとんどの新入社員はOJT(On the Job Training)で現場の業務を通じて自分を成長させていかねばならない。そのときに、こうして自分の行動や仕事の成果をふり返って、必要に応じて周囲に助言を求めることができる社員は、当然仕事を通じた成長も早く、成果を出すこともできるようになるのだ。

現場に配属された新入社員には、ぜひ自分から周囲の上司や先輩に積極的にコミュニケーションをとりながら、時には立ち止まり、自分の行動や仕事の成果をふり返りながら、日々の成長につなげていってほしいと思う。
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