中学受験

中学受験に入る前の親がしがちな誤解5つ…小4入塾組に抜かされる!?

入塾してから「え、そうだったの!?」と驚くことがないよう、中学受験の世界に入る前の親がしがちな「誤解」を5つお伝えします。新年度の初めから授業を受けるためには、1月には塾を決める必要が。ただ、この世界に入る前に受験について誤解をしている人も多いものです。

西村 創

執筆者:西村 創

学習塾・個別指導塾ガイド

中学受験に入る前の親がしがちな誤解5つ……塾に入る前にチェック

中学受験の誤解……小4入塾組に抜かされる!?

早くから塾に通わせれば、そのぶん成績が上がるとはかぎらない

中学受験では、新年度の初めから授業を受けるためには、1月には塾を決める必要があります。ただ、この世界に入る前に受験について誤解をしている人も多いものです。

入塾してから「え、そうだったの!?」と驚くことがないよう、“中学受験の世界”に入る前の親がしがちな誤解を5つお伝えします。
 
<目次>
 

誤解1. 低学年から“席取り”しないと、満席で入塾できない

首都圏トップの合格実績を出している塾SAPIXで、いくつかの校舎が「募集停止」をしていることから、「低学年から席取りをしないと、入塾できなくなる」と、年長のうちから入塾テストを受けて、1年生から入塾するという動きが盛んになっています。

でも、焦ることはありません。年度の途中で募集停止になっても、年度が上がるタイミングでは入塾可能です。もちろん入塾できるのは、入塾テストで基準点を超えればの話ですし、学年が上がるごとに、そのハードルは高くなります。

「じゃあ、なおさらハードルが高くなる前に入塾しないと!」と思うかもしれませんが、そんな方にこそ、伝えたいことがあります。それは、SAPIXのような最難関校の合格実績を売りにしている塾では、カリキュラム、テキストも最難関校に受かるために作られているということです。

そのような塾に、入塾ハードルが低いからと小学校低学年から入っても、小4、小5と進級していくなかで、「いま、入塾テストを受けたら落とされるだろうな」という成績で通い続けるだけになりかねません。そうなると、授業内容を理解しきれずに、ただ塾に通うだけの、いわゆる「お客さん」状態になってしまうのです。塾にとっては、大勢の塾生のひとりとして教室の席に座らせておくだけで毎月数万円収めてくれる、いい資金源です。そうならないように、ぜひ、お子さんの学力にあった塾に通わせてあげてください。

そもそも、塾は早くから通わせれば、そのぶん成績が上がるとはかぎりません。もちろん、早くから入塾した子が、学ぶ楽しさを味わって、学習習慣が身について、基礎学力が無理なく身について、だから希望の学校へ入学することができたということもあります。でも、じゃあその子が小1ではなく小3の2月から入塾したら、そこまでの学力が身に付かなかったのかというと、それは検証できないわけです。

事実、小学校低学年のうちに成績上位だった子のほとんどは、小4以降に入塾してきた子に抜かれます。後から入塾してきた子にどんどん抜かれていくのは、メンタル的なタフさか、人は人、自分は自分という線引きができる子でないと、親子ともに、なかなかきついものがあるでしょう。

低学年のうちは、いろいろな体験をして、広い意味での「勉強」をする。そのような「急がば回れ」的な考えも、決して誤りではないということを、塾業界に25年以上いた筆者からお伝えしておきます。
 

誤解2. 両親ともに「公立高校出身」だから不利

両親ともに公立高校出身で中学受験経験がないご家庭では、何もアドバイスしてあげられない、と不安に思ったり、ふがいなく感じてしまうこともあるでしょう。ただ、筆者の経験では、ご自身が中学受験を経験していない保護者は、むしろ、わが子をうまくサポートできている印象です。

「経験がない」「知らない」というのは、「先入観がない」という利点でもあります。先入観がないと、新しい情報がそのまま頭に入るのです。逆に、あまりうまくいかない傾向にあるのが、自分自身が中学受験を経験していて、その成功体験を子どもの受験に当てはめようとする保護者です。

学校の偏差値は、株価と同じように変動します。10年前とは別の学校というくらいの変貌を遂げているところが、いくらでもあります。親世代の方たちが子どもの頃には人気のなかった学校が、いまや超人気校になっているというケースは珍しくありません。

また、受験のシステムや試験内容もどんどん変わっています。今は知識を問う問題の比率が減って、「思考力重視」の問題が増えています。塾業界も、30年前には存在しなかったSAPIXという塾が、今や絶対的なトップに君臨していますし、オンラインの塾はこの3年で急拡大して、対面授業専門の塾も映像授業配信を導入するようになりました。

学校説明会もオンラインが主流になりました。去年まではそんなことなかったのに、オンラインに切り替えたら説明会予約が殺到して申込上限に達して、急に締め切るような学校も出てきたのです。

中学受験をめぐる状況は目まぐるしく変わっているため、「知っているつもり」が怖いのです。中学受験の経験がない方は、これからお子さんと一緒に学んでいけば大丈夫です。
 

誤解3. 「中堅校」なら入れそう

「中堅校」と聞くとハードルが高くないイメージを持つかもしれませんが、そう簡単には入れません。特に、中学受験を考えたきっかけが、「学校のテストでいつも100点を取っているから」とか、「偏差値の高い学校じゃなくて、中堅校に入れれば十分だから」といったご家庭は、要注意です。

学校のテストは毎回100点、成績がすべて最高の評価なのは、中学受験勉強を始める前提条件に近いものですし、中学受験塾の偏差値50は、高校受験の偏差値60以上の位置づけです。中堅校に合格するには、小3の2月から中学受験専門塾に通って本気で勉強する必要があります。

また、大学を出ている大人であっても、中学受験の内容に日々触れていない素人には、そう簡単に解けるものではありません。試しに、四谷大塚のサイトで『予習シリーズ』というテキストのサンプルを見てみてください。「え、これを小学生が解くの?」と衝撃を受けるはずです。
 

誤解4. 「有名大手塾」に入塾させれば安心だ

SAPIXに入れば、浜学園に入れば、成績が上がっていくだろうと安心するのは大きな誤解です。塾に通うことを決めても、お金さえ払えばあとは子どもの成績が勝手に伸びていく、というわけではないのです。大手だから、有名だから、ブランドがあるから、人気があるから、合格実績がすごいからといって決めると、失敗します。

そもそもトップ塾で成績上位クラスに入れるのは、本当に限られた生徒だけですし、入ったところでそのクラスを維持するのは大変なことです。塾のなかでは、熾烈な争いがくり広げられているのです。実際、有名塾に入ることができても、転塾をする方は多くいらっしゃいます。

塾は、入ってから、そこでどれだけ習ったことを吸収できるかで成績が上下します。大事なのは、入塾した環境の中で、どれだけのことを身に付けられるかということです。

そして同じくらい大事なことは、お子さんに合った塾に預けるということです。有名塾の看板がなくても入塾させたいと思える塾か、そして、勉強する本人であるお子さんにとって合いそうな塾か、という視点で選ぶことをおすすめします。
 

誤解5. 第一志望に合格できるのは“3人に1人”

「第一志望に合格できるのは3人に1人」というのは、中学受験業界に広く知られている話です。なぜなら、多くの子が第一志望にするような学校の倍率がだいたい2~4倍なので、ということは、2人から4人に1人しか合格しないということだからです。

たしかに、“最終的に”組んだ受験プランで、実際に受験する複数の学校のなかの第一志望に合格するのは、3人に1人くらいでしょう。でも、それは“最終的に”ということです。筆者は、第一志望に合格できるのは、3人に1人ほど多くはなく実はもっと少ないと思っています。

だって、中学受験勉強を始める前は、私立中に詳しくなくても、知っている有名な学校にみんな憧れたはずです。あの学校に入れたら、と理想を思い描いて中学受験塾に入塾するわけです。その理想の学校が本来の「第一志望」ではないでしょうか。でも、小5、小6と進級していって、何回も模試を受けて成績表が返ってくるにつれて、現実がわかってくるんです。

そして、実際にどの学校をどんな順番で受けるかという受験プランを組む時期がやってきます。直近の模試の偏差値よりも、10も20も上の偏差値の学校、過去問を解いても合格最低点に数十点差がある学校は厳しいだろうなと悟り、合格する可能性がある“現実的な”第一志望校を定めるのです。

その“現実的な”第一志望校に合格できるのが、3人に1人というわけです。だから、そもそも入塾前に思い描いていた当初の第一志望には、3人に1人どころか、5人に1人、いや10人に1人くらいしか合格できていないのではないでしょうか。

夢のないことを言わないでほしいと思うでしょうか。でも、見方を変えれば、3人に1人でも10人に1人でも、合格している人がいるということです。合格している人がいる以上、わが子にも可能性はあるということです。

小4で入塾してきたときは、自信がなくて消極的でいつもうつむき気味に小さな声で話していた子が、小5、小6と成長していくにしたがって、自信がついて別人のように堂々とした態度になり、誰もが羨む学校に合格して進学する……そんな姿も、筆者は何度も見てきました。得意なやり方を見つけて、楽しんで続けられるやり方を見つけて、そのやり方を続ければ、たいていのことは達成できるというか、むしろ、目標を大きく超えることができるんです。

そもそも筆者は、第一志望の学校ではなく、第二志望や第三志望に進学することで、人生が不利になるとは思いません。筆者自身も、まったく興味のなかった商業科の高校に進学しましたが、そこで学んだ簿記の知識が、10年後、駿台香港校の校長になった際に活かされ、「経理のこともわかる校長」として活躍することができたのです。

どんな進路に進んでも、無駄なことはないのです。第一志望校に進学できるのはすばらしいことです。でも、他の進路に進んだとしても、その環境でしか得られないことが必ずあって、それがあったからこそ、本当にやりたかったことをできるようになる、ということがあるのです。どんな結果も、それをどう今後に生かすかで、その進路の価値が決まります。受験勉強を通じて、そんなしなやかさも学ぶことができれば、人生が楽しくなります。
 

【動画】中学受験の誤解TOP5



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