中学受験

中学受験塾の成績下位クラスは「振込くん」?抜け出す方法3パターン

中学受験塾の業界でも使われる隠語「振込くん」「お客さん」。 マンガ『二月の勝者』の中にもこの言葉が登場します。塾運営の仕組みから「振込くん」「お客さん」が重要とされる理由について解説し、お子さんのタイプに合わせた中学受験の対処法についてもご紹介します。

宮本 毅

執筆者:宮本 毅

学習・受験ガイド

<目次>

中学受験塾の裏用語「振込くん」「お客さん」とは?

中学受験塾の裏用語「振込くん」「お客さん」

学力別にクラス編成がある中学受験塾

中学受験では大手進学塾を中心に、入塾テストに合格した後、学力別にクラス編成があります。そんな中、夏休みも前にして成績下位クラスから抜け出せずに伸び悩んでいらっしゃるお子さんもいらっしゃるでしょう。ところで『二月の勝者』(高瀬志帆)のマンガの中に「お客さん」という言葉が出てきたのをご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 
主人公・黒木蔵人が務める桜花ゼミナールでは、6年生1人当たりにかかる費用は年間126万9000円(※作中の一例)となっていますが、これは相当控えめに設定された数値でしょう。首都圏や関西の有名進学塾では、年間250万円以上かかるところもあります。

しかも、それらの授業料はすべて「銀行引き落とし」になっているため、保護者が気付かないうちに莫大な費用を塾に振り込んでいるわけです。多くの保護者は具体的にかかる費用をきちんと計算しませんから、こうした金額が「高い」のか「相当」なのかはあまり議論されてきませんでしたが、ぜひ一度通帳記入をなさって引き落とされた総額を計算してみてください。
 
「振込くん」または「お客さん」という塾業界の隠語について、前出の黒木蔵人はこう言い放ちます。

「上位校合格の見込みのない生徒には、夢を見させ続け、生かさず殺さず、お金をコンスタントに入れる『お客さん』として、Rクラス(下位クラス)には『楽しくお勉強』させてください」

まさにこのセリフは、塾業界の本質を言い表しています。
 

難関校合格者は塾にとって「金の卵を産む鶏」

「塾の経費」は莫大です。こうした莫大な経費を賄うために、中学受験塾の授業料設定は一般的に高額となっています。この高額な授業料を同じように払っても、生徒の全員がトップ校に合格できるわけではありません。

しかし、塾の宣伝広告を見て集まってくる“消費者”たちは、華々しい実績にしか目がいきません。そのため塾側は「トップ校に合格できる、ごくごく一部の成績上位の生徒」に充分な力を注ぎ込み、何としてでもトップ校に合格してもらおうと頑張るわけです。何しろ、ライバル塾より1人でも多くのトップ校合格者を出せば、その広告の実績を見た次年度の新入生が増えるわけですから。

いわばトップ校合格者は塾にとって「金の卵を産む鶏」というわけです。塾によっては合格させた講師に結構な金額の「特別ボーナス」を出すところもあるほどです。
 
しかし、塾の経営上「トップ校に合格できるごくごく一部の成績上位の生徒」だけを相手に商売はできません。もともと、成績優秀な生徒は数が少ない上に、今は塾が群雄割拠している状態ですから、そうした子の取り合いになります。ひとつの塾に振り分けられる「トップ校に合格できるごくごく一部の成績上位の生徒」はさらに少なくなります。そのため、その子たちの保護者から得られる授業料だけでは、とても莫大な経営経費は賄いきれません。
 

「振込くん」「お客さん」から抜け出すには? 3パターンの方法

そこで必要になってくるのが、多数の「トップ校には合格できないけれど、夢を追いかけて入塾してくる生徒」たちです。そうした生徒の親たちは「うちの子もトップ校に合格できるかもしれない」と大手進学塾に入塾させてくるため、塾の言いなりになり、必要もないオプション講座や超割高な夏合宿を受講してくれます。

こうした生徒を前出の黒木蔵人は「お金をコンスタントに入れてくれるお客さん」と評しているわけです。「振込くん」という表現もこれと同義ですね。
 
では、下位クラスに在籍している生徒は、中学受験に成功できないのでしょうか。そんなことは決してないと私は思います。まだお子さんが小学4年生であればこれから精神成長はきっとあるでしょうし、成績だってこれから伸びていくに違いありません。ですから現段階では焦って結論を出す必要は全くないとお考え下さい。

一方で小学5年生、6年生のお子さんをお持ちの方は、下位クラスに在籍している生徒を大きく分けて3つに分類したときにどのタイプに当てはまるかを判断して対処していくことをオススメします。ひとつは、本当は秘めたる才能を持つ原石だが、伸び悩んでいる「原石」タイプ。もうひとつは、トップ校は目指せないがある程度までは成績を伸ばすことができる「マイベスト」タイプ。最後は、残念ながら中学受験で勝負するには不利な「将来に期待」タイプの3つです。それぞれのタイプ別に検討していきましょう。
 

1. 本当は秘めたる才能を持つ「原石」タイプ

「原石タイプ」の子にはどう対処する?

「原石タイプ」の子にはどう対処する?

「原石」タイプのお子さんは、「のみ込みが早い」「頭の回転が速い」といわれるような子です。例えば、「2割増し」「3割引き」といった割合の問題を同じように教えても、理解にてこずる子がいる一方で、このようなタイプの子はとても吸収が早いものです。

このような原石タイプのお子さんはこれから伸びていく可能性が高いですから、しばらくこのまま静観して良いでしょう。少なくとも小5の9月頃までは様子を見ましょう。

しかし、もしなかなか成績が上がってこなければ、今通っている塾のシステムが本人の学習に合っていない可能性があります。せっかく良いものをもっているのに活かし切れないのは、ちょっともったいないですよね。

そんな場合には転塾するのもひとつの選択肢です。いまの塾にたとえ確たる不満がなくとも、成績が伸び悩んでいるのであれば、環境を変えてみるのも良いと思います。大手進学塾に通っている場合には校舎を変えるという方法もあります。
 

2. 難関校には不向きな「マイベスト」タイプ

トップ校は目指せないがある程度までは成績を伸ばすことができる「マイベスト」タイプ。このタイプのお子さんの場合、保護者の方が価値観を変えられるかが重要となってきます。すなわち「偏差値至上主義」を捨てられるかどうかです。偏差値にいつまでもこだわっていると、全受験生のトップに立たない限りどこまで行っても「負け」が確定してしまいます。

そろそろ偏差値の呪縛から取り放たれて、「マイベスト」の志望校を探してみてください。そんな学校が見つかれば、それに必要なレベルの問題だけをやればいいわけです。無用なオプション講座を取る必要もなくなりますし、宿題だって減らすことができます。

宿題を減らすことができれば深夜まで眠い目をこすって勉強する必要がないため、親子の軋轢もずいぶん解消できるでしょう。ストレスのない中学受験生活を送れますし、無理のない志望校なら、受験が終わった後の満足感や達成感も違うため、「中学受験をやって良かった」と心から言えると思います。
 

3. 中学受験で勝負するには不利な「将来に期待」タイプ

最後に「将来に期待タイプ」のお子さんの場合はどうするのか。「どうせ中学受験を諦めろって言うんでしょ」と思われた方も多いかと思いますが、「高校受験に回った方がいいかもね」と言われるのには理由があります。

何しろこのタイプはとにかく「勉強をしない」のです。勉強しないから成績だって伸びないし、クラスも上がりようがないわけです。クラスが上がらないから、講師からは「楽しく通って授業料さえ振り込んでくれればそれでいい」と思われてしまうわけです。

ここから脱出するには「勉強する」か「やめるか」です。それ以外の選択肢はありません。本人がどうしてもやる気が出ないのなら、いつまでも塾にお金を振り込んでいるのは無駄ですから、今すぐ中学受験からは撤退しましょう。そのうち精神的に成長すれば勉強するようになる時期が来ますから、長い目で見守りましょう。

どうしても中学受験にしがみついていたいのなら、親は仕事や習い事など一切やめて、つきっきりで子どもにお勉強させるしかありません。中学受験とはそういう世界です。

とにかく勉強をしない子に対して、一体何をどうすればよいのかというと、子どもに小さな「成功体験」を積ませる、ただそれだけです。算数なら計算練習帳を毎日やらせましょう。計算力が上がれば自然と算数の力は身についてきます。国語なら漢字をしっかり覚えさせ、毎日書写をさせましょう。理科や社会は暗記のお手伝いをしてあげてください。口頭試問が効果的です。親がテキストをもってお子さんに問題を出してあげてください。小さな成功を積むことが、子どもの勉強のやる気につながります。
 

「塾業界がつくり出した価値」に縛られる必要はない

塾業界がつくり出した価値に縛られなくていい

塾業界がつくり出した価値に縛られなくてよい

現代ほど価値観の多様化が叫ばれている時代はありません。そんな中にあって私たちは、新たな価値観を創出する必要性に迫られています。

偏差値の高い学校に合格させるだけが価値を持っているわけではありません。もちろんそこに価値を見出す人がいてもいいと思いますが、それだけじゃない価値を切り拓くのも、次世代に我が子を送り出す保護者の責務ではないでしょうか。

「マイベストな学校を探し出してそこに通う価値」あるいは「中学受験を回避する価値」だって、あっていいと思いますよ。なにも、塾業界がつくり出した価値に縛られる必要はありません。

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