その謎を探るべく、All About編集部はメーカーの山崎製パンを取材。その内容をもとに、マーケティングガイドの筆者が同キャンペーンに秘められた「戦略」について解説します。
最も引き換え枚数が多かった年は約2200万枚!?
「春は新生活がスタートする季節のため、手軽でおいしいパンが朝食などで食卓に並ぶ機会が増えます。そのような時期に、日ごろの感謝の気持ちを届けたいということで、毎年春にキャンペーンを行うようになりました」
―――毎年のお皿のデザインはどうやって決まりますか？
「1981年の第1回目から約40年にわたって、毎年『白いお皿』の新しいデザインを選定しており、アルク・フランス社の代理店を通じてお皿のデザインを提案いただいています。
今回の『白いスマイルボウル』については、昨年の『春のパンまつり』キャンペーンがまだ行なわれている3月頃から、流行やトレンドなどをもとにデザインの検討に入り、8月頃には10種類程度に絞りました。さらに消費者モニターからのご意見を参考に、サイズや使い勝手について検討を重ね、11月に決定しました」
―――特に人気だったお皿は何年のものでしたか？
「白いお皿の引き換え枚数が最も多かった年は2012年になります。例年、平均1200～1500万枚の白いお皿をプレゼントしていますが、2012年の白いお皿『白いモーニングボウル』は小ぶりなサイズであったため、引き換えできる点数を20点に設定したことと、使い勝手の良さから予想以上にご好評をいただいたことが相まって、最終的な引き換え枚数が約2200万枚に達しました」
―――今年の応募者に一言お願いします
「今年の『白いお皿』は少し深く、底が広いボウル型です。あったかいスープや野菜たっぷりのサラダを入れて使っていただくのがおすすめです。
『春のパンまつり』キャンペーンは、今年も食パン、菓子パン、和菓子、洋菓子、さらにはサンドイッチやおにぎりまで、幅広い商品を対象としています。ぜひとも、ご家族の皆さんで色々なおいしさを味わって、楽しみながら点数シールを集めてください」
42回目を迎える「春のパンまつり」の戦略
春の恒例イベントとなっているヤマザキ「春のパンまつり」。なんと今年で42回目を迎えます。ヤマザキ製品についている点数シールを集めると必ずもらえるアルク・フランス社製の白いお皿の引き換え枚数は毎年1000万枚を超え、2018年には累計5億枚を突破しています。実は筆者もこのキャンペーンで白いお皿をゲットした一人。この「春のパンまつり」が長年愛される理由は、アルク・フランス社製の白いお皿のクオリティとシンプルで飽きの来ないデザイン、そして毎年変わる食器の種類にあるといえるでしょう。
お皿は強化ガラスでできていてなかなか割れないですし、パンプレートやディナープレート、サラダボールなど毎年食器の種類が変わり、ついつい集めたくなる人も多いはず。他社のキャンペーンでは、商品を購入して点数を集めても抽選でしか景品がもらえないケースも多いですが、「春のパンまつり」では必ず白いお皿がもらえるのも人気の秘訣です。
食器は毎日使うものですし、「春のパンまつり」でもらった白いお皿で食事をすることにより「ヤマザキ」というブランドが自然に刷り込まれ、店頭で無意識にヤマザキ製品を選ぶことも期待できます。
毎年1000万枚から2000万枚の白いお皿を無料で配るのは多大なコストを要しますが、1981年からスタートして今年で42回目を迎えるということは白いお皿が「ヤマザキ」ファンを増やすことに一役買っており、費用以上にその効果が大きいことを物語っているといえるでしょう。
