ヨーロッパ西部のおすすめ世界遺産
世界遺産「バチカン市国」のサン・ピエトロ大聖堂からの眺望
この地域は北海、地中海、大西洋に囲まれた半島で、ほとんどが北海道と同じかそれより北にある。にもかかわらず温帯に属するのはカリブ海から流れ込む北大西洋海流の影響による。温暖な気候からもともとは大森林地帯だったが、11~13世紀の大開墾時代から現在までに多くは伐採され、原生林はあまり残っていない。スペインの「ガラホナイ国立公園」やポルトガルの「マデイラ諸島のラウリシルヴァ」のように大西洋上の島の一部には深い照葉樹林が残されている。
スイスの世界遺産「スイス・アルプス ユングフラウ - アレッチ」のアレッチ氷河
現生人類(ホモ・サピエンス)がヨーロッパに渡ったのはおよそ4万年前。当時の人類とされるクロマニヨン人の壁画が世界遺産であるフランスの「ヴェゼール渓谷の先史時代史跡群と洞窟壁画群」やスペインの「アルタミラ洞窟と北スペインの旧石器時代の洞窟画」で、当時の様子を伝えている。
紀元前5,000~紀元前2,000年頃にはメンヒルと呼ばれる直立石やストーンサークルなどの巨石記念物がヨーロッパ中で立てられる。イギリスの世界遺産「ストーンヘンジ、エーヴベリーと関連する遺跡群」や「オークニー諸島の新石器時代遺跡中心地」が一例だが、立てた民族もその意図も不明だ。
その後西ヨーロッパを広く支配したのはケルト人とラテン人だ。特にラテン人の建てたローマは、1世紀前半にはアフリカ、アジア、ヨーロッパにまたがる地中海全域を版図とした。イギリスとドイツ共通の世界遺産「ローマ帝国の国境線」のハドリアヌスの長城がケルト人に対するローマの防衛線であるほか、当時の世界遺産は数多い。
白い壁ととんがり帽子の屋根がかわいらしいアルベロベッロの街並み
宗教的には、ローマのテオドシウス帝が392年にキリスト教を国教化して以来、ヨーロッパ西部のほとんどの地域に広がり、大航海時代に世界中へ布教される。中心はローマ教皇(法王)で、ローマ教皇庁が治めるのが世界遺産「バチカン市国」だ。また、16世紀以降の宗教改革でプロテスタントがバチカンを中心とするローマ・カトリックから分離し、その中心をなす英国国教会の総本山は世界遺産「カンタベリー大聖堂、聖オーガスティン大修道院及び聖マーティン教会」に登録されている。
では、ヨーロッパ西部の代表的な世界遺産を紹介しよう。
ストーンヘンジ、エーヴベリーと関連する遺跡群
草原の中に突如姿を現すストーンヘンジ ©牧哲雄
草原にたたずむ巨石サークル、ストーンヘンジ。円と馬蹄型の楕円が同心円状に並ぶ不思議な形をしており、夏至や冬至の方向を意識して造られている。最大で50tにもなるサーセン・ストーンは30km離れたマルバラーの丘から、82個はあった4tのブルー・ストーンは250km先のプレセリの丘から運ばれたと考えられているが、誰がなぜ造ったのかわかっていない。時代も紀元前2,000年前後といわれるがはっきりしておらず、いまだ謎に包まれている。
紹介記事はこちら>>ストーンヘンジ/イギリス
ウェストミンスター宮殿、ウェストミンスター寺院及び聖マーガレット教会
ネオ・ゴシックが特徴的なウェストミンスター宮殿 ©牧哲雄
11世紀、イングランド王エドワードは市街地の西に新しい宮殿と寺院を建設する。西の修道院=ウェストミンスターだ。1066年にハロルド2世がウェストミンスター寺院で戴冠式を行うと、代々の王がここで戴冠を行うようになる。王は自分が暮らすウェストミンスター宮殿で諸侯と接見したがしばしば対立し、諸侯は王との交渉機関として宮殿に議会を設置、これが近代議会の原型となる。宮殿は現在も国会議事堂として使用されている。
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