定年・退職のお金

年金額は増えることはある? 実質的には減るしくみが

公的年金は毎年改定され令和4年度の年金額は0.4%の減少となりました。景気が悪い年なら理解できますが、景気が良くなった場合に年金額が増えることはあるのでしょうか。今回は年金改定のしくみと年金が今後増えることがあるのかどうかを考えてみたいと思います。

川手 康義

執筆者:川手 康義

ファイナンシャルプランナー / サラリーマン家庭を守るお金術ガイド

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《目次》
令和4年度から年金額は0.4%減少します
過去の改定率はどうなっている?
マクロ経済スライドは年金の上昇を抑えるシステム
キャリーオーバーがさらに年金の上昇を抑える要因に
年金が減らされていく理由とは?
まとめ
 

令和4年度から年金額は0.4%減少します

公的年金は毎年4月から改定され令和4年度の年金額は0.4%の減少となりました。これは新規裁定者(新たに年金をもらう人)も既裁定者(すでに年金をもらっている人)も同様です。
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令和4年度の年金改定率は-0.4%となりました

 

過去の改定率はどうなっている?

令和4年度は減少でしたが過去の改定率はどうだったのでしょうか? 厚生労働省は毎年1月に4月からの年金の改定率を発表しています。
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公的年金の金額は毎年改定されます

この図からわかるように令和元年度(+0.1%)および令和2年度(+0.2%)はプラスの改定であったことがわかります。これは年金額が増えていることを表しているのでしょうか。
 

マクロ経済スライドは年金の上昇を抑えるシステム

年金の改定の際には「物価」「賃金」の変動率に加え「マクロ経済スライド」が使われます。この「マクロ経済スライド」とは、社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて年金の給付水準を引き下げるしくみのことです。

例えば物価(賃金)の上昇率が1.5%の時は年金もそれに合わせて上昇すべきですが、マクロ経済スライドによるスライド調整率が-0.9%の場合は相殺され年金の改定率は0.6%になります。
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マクロ経済スライドにより年金の上昇幅は抑えられます

ちなみに令和2年度の改定(+0.2%)の内訳を見てみると賃金変動率が+0.3%でしたがマクロ経済スライドの調整率が-0.1%であったため相殺されて+0.2%の改定率となっています。

つまり物価や賃金が上昇しても年金は同じ幅での上昇はせず、年金の改定率こそ+0.2%でしたが実質的には目減りしているのです。

《参考》厚生労働省 いっしょに検証公的年金
 

キャリーオーバーがさらに年金の上昇を抑える要因に

実はこの「マクロ経済スライド」は物価や賃金が上昇した場合にしか発動されません。物価や賃金が下落した場合は年金もそれに伴いマイナス改定となるため、マイナスに追い打ちをかけるような調整はしないとのルールがあるのです。

しかし一方で発動されなかったマクロ経済スライドの調整率は翌年以降に持ち越しする決まりにもなっており、このことを「キャリーオーバー」といいます。聞こえはいいですが要は年金の上昇抑制を将来に持ち越すありがたくない制度です。

ちなみに令和元年度の改定(+0.1%)の内訳を見てみると賃金変動率は+0.6%でしたがマクロ経済スライドによるスライド調整率-0.2%と、平成30年度にキャリーオーバーされた未調整分-0.3%で相殺され+0.1%の改定率となっています。

つまり年金の改定率は+0.1%と増えたように見えますが、賃金の上昇率の+0.6%には追い付いておらず実質的には目減りしているのです。
 

年金が減らされていく理由とは?

それではなぜ実質的には年金が減らされていくのでしょうか。それは日本の年金制度が賦課方式だからです。賦課方式とは、年金支給のために必要な財源を、現役世代の保険料収入から用意する方式です。現役世代から年金受給世代への仕送りのイメージです。
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公的年金は賦課方式であり現役世代から年金受給世代への仕送りです

少子高齢化に伴い年金受給者が増える一方で、現役世代からの保険料収入は減っていきますので年金支給総額を減らす必要があります。そのためマクロ経済スライドによる調整を行い、将来に向けて徐々に年金が減るようなしくみが作られているのです。
 

まとめ

いかがでしたでしょうか。年金改定のしくみから考えると、景気が良くなっても年金は物価や現役世代の賃金のようには増えず、実質的に目減りすることがおわかりいただけましたでしょうか。現在年金を受給している世代もそうですが、今後年金受給する世代はより影響を受けることを踏まえ、老後のライフプランを考える必要がありそうです。


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