お金の悩みを解決!マネープランクリニック/50代シングルの人のお金相談

52歳会社員、貯金1380万円。もう仕事に疲れました。65歳にはフルリタイアしたいです(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、52歳 の会社員女性。昨年から職場環境によりうつ状態になり、退職を決意。ただ、資金的に老後に不安を抱いているとのこと。さらに住宅購入でも悩んでいるとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 できればすぐ退職、一定の休養を

まず気になるのは退職時期を「55歳」としている点。私は、すぐに辞めるべきだと思います。職場や仕事で体調を崩される方のご相談をよくいただきますが、その場合、何はともあれ、本人の健康が最優先というアドバイスをしています。「セミリタイアしたい!」さんも同様です。内容を見る限り、今後、職場環境が改善される保証はありません。であれば、これ以上、健康を害さないためにも、できるだけ早い退職が望ましいことになります。
 
また、「退職後は60歳まで非正規雇用でフルタイム勤務」とありますが、もちろん体調がまったく問題ないのならいいのですが、多少でも不安があれば、とりあえず慌てて仕事はせず、治療を兼ねて1年程度「ゆっくり」してみる。これまで頑張ってこられたのですから、少し休養を取ってもいいと思います。
 
では、そうした場合のキャッシュフローはどうなるでしょうか。今すぐ退職して、1年間、仕事に就かないとします。当然、その間の生活費は貯蓄から捻出することになりますが、毎月の生活費は約12万円とかなり抑えられています。それでも年間で144万円。あと、予備費、レジャー費としてボーナスから確保している20万円も加算すれば164万円。これを貯蓄を取り崩すことで捻出します。
 

アドバイス2 終身の個人年金保険が効果的

ただし、再就職の意思があるわけですから、失業手当を受け取ることができます。支給額は収入から考えて、月13万~14万円にはなるはず。10年以上、雇用保険に加入していれば再就職活動中に最大120日分(自己都合による退職の場合)支給されますので、その間は逆に貯蓄ができる可能性もあります。

また、退職金も支給されます。データに「150万円」とありますが、この額は定年まで勤務した額(あるいは55歳退職時の額)であれば、今すぐなら100万円程度でしょうか。そこは不確定ですが、ともあれ、失業給付と合わせて、実際に貯蓄から取り崩すのは、さほど多くはないと言えるでしょう。

1年後に退職し60歳までプランどおり手取りで月14万円の収入を得るとします。生活費を変わらず 12万円とし、これまでボーナスから捻出した旅行費用などを月割りすれば、年間の収支はほぼトントンに収まるでしょう。ここでのポイントは、非正規でも構いませんが、厚生年金に加入できる職場を選ぶということ。老後はそう遠くないので、公的年金の受給額はできるだけ増やしたいところです。
 
60歳から65歳になるまでの5年間は「月8万円の収入で月5万円貯蓄を取り崩す」とあります。60歳から受給が始まる個人年金保険からの年金(年額26万円)を加算しての額かどうか不明ですが、もし加算しての世帯収入であれば、5年間で300万円貯蓄を取り崩すことになりますので、1年間休んだ時の生活費の取り崩し分と合わせて、老後資金としては少なくとも1000万円超はまだ手元に残るはずです。

また、時期は未定ですが、現金で1000万円を相続される予定とのこと。それも加算すれば老後資金は2000万円となります。ご本人の目標としては「65歳の時点で3000万円程手元にあれば」とのこと。しかし、2000万円でもそう心配は要らないことが以下の試算でわかります。
 
65歳以降はフルリタイアを希望されていますが、この時点で公的年金の支給が始まります。データには「60歳まで加入の場合で年額155万円」とありますが、再就職は減収となる予定ですから、年金額も10万円程度減るでしょうか。額面145万円の年金額を手取りにすると月額12万円~12万5000円ほどと思われます。
 
さらに、個人年金保険が終身年金というのが、マネープランにおいてとても効果的です。月2万円ほど上積みされますから、今と変わらない生活費(月12万円、予備費・レジャーとして年間20万円)を継続しても、日々の生活費として老後資金にはほぼ手をつけずに済みます。結果、2000万円という老後の予備費(医療・介護費用、その他の不測の支出)ができます。生活費とは別にこれだけ確保できるのですから、一般には十分な額が用意できると考えていいでしょう。
 

アドバイス3 厚生年金加入が望ましいが、国民年金でも心配は不要

ご質問にある「もしも退職後、勤務先で厚生年金に加入できなかったら」について。その場合の詳しい計算はここではできませんが、仮に先の試算(定年まで働いた場合の155万円からさらに10万円ほど減額)から、さらに支給額が月2万円下がったとします。65歳から100歳まで生きたとして35年間で、計840万円。それでも、老後資金は予備費として1160万円という十分な額が確保できることになります。あくまで1000万円の相続が前提ですが、国民年金の加入でもほぼ心配は不要と考えます。
 
もうひとつ、「住宅を購入した場合、家族のいない私が死んだら、どうなるのか」ですが、「セミリタイアしたい!」さんにはご兄弟がいるとありますし、すべて民法で定められた法定相続人となります。その方々が亡くなっても、そのお子さんがいれば、やはり法定相続人に該当します。つまり、「家族がいない」とありますが、少なくとも相続権を持つ相手はいることになります。
 
相続が発生するのであれば、やはりスムーズに行われることが望ましいでしょう。最善策は遺言書を残して、不動産を含めた財産をどうするかを明記することです。ちなみに、相続する相手がいない、あるいは誰も相続しない方がいいと考えるなら、その財産は基本的には国庫に帰属することになるでしょう。
 

相談者「セミリタイアしたい!」さんより寄せられた感想

コロナ禍において、仕事があるだけマシ、と我慢してきたつもりでしたが、それは全て、60歳で定年退職したら悠々自適にすごす為の老後資金作りでした。なので退職を考え始めてから絶望感に苛まれ、毎日お金の事を考えていていました。そんな時に深野先生のアドバイスを頂く機会に恵まれたのは、現状の鬱々とした日々を前向きに変えるチャンスだと思いました。充電期間のつもりで退職後は1年は休養にあてたいと思います。失業保険の事も全くアタマになく、不安でいっばいでしたが、先生より老後は大丈夫とアドバイスを頂けて安心しました。ご相談して良かったです。この度は本当にありがとうございました。


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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
  
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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