自宅マンションについて、子どもへの相続も見据えた判断のポイントを教えてください

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、毎月21万円の住宅コストがかかっており、老後を見据えて住宅をどうしたらいいかを相談したい54歳の公務員の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料です)

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毎月20万円以上の住宅コストは老後には負担になりそう、どうする?

毎月20万円以上の住宅コストは老後には負担になりそう、どうする?



■相談者
ぺこさん(仮名)
女性/公務員/54歳
東京都/持ち家・マンション
 
■家族構成
子ども2人(2人とも大学1年生)

■相談内容(原文まま)
大学生の子ども2人を抱えて離婚したばかりです。大学費用は2人合わせて4年間950万円(平均月額20万円)。養育費は月10万円を20歳まで(240万円)。住宅ローンを5000万円(80歳まで)抱えています。子ども1人は障害があるため、私が生きている限りは面倒をみる予定(死亡保険1200万円を1/2ずつ残します)です。私は何歳まで、いくらくらいの年収を確保すべきでしょうか。収入確保策は、働き続けるほかに、自宅(時価約1億円)のダウンサイジングがありえます。自宅は気に入っている上、今後も時価が下がりにくいといわれている一方で、80歳まで月額20万円程度の負担となっており、いつまで保有するか迷っています。今後、給料は、63歳まで定年が延びたとしても4割カットまで下がると思います。退職金は2000万円といった予想です。年金は65歳から月額18万円くらい、10年間は個人年金で月額10万円補てんされます。自宅について、相続も見据えた判断のポイントをご教示いただければ幸いです。
 
■家計収支データ
相談者「ペコ」さんの家計収支データ

相談者「ぺこ」さんの家計収支データ



 

■家計収支データ補足
(1)収支について
給与55万円と養育費10万円。養育費は子どもが20歳になったら(来年)終わりです。
 
(2)住宅ローンについて
購入時の物件/新築マンション
借り入れ時期/2013年
住宅ローン控除/年間20万円は2023年まで適用される
 
物件価格/7700万円
諸費用/150万円
頭金/2450万円
ローン残高/5000万円
借り入れ期間/32年
金利のタイプ/変動、金利0.775%
毎月の返済額/17万円
※管理費が毎月4万円
ボーナスの返済額/なし
固定資産税/15万円
 
(3)ボーナスの使いみちについて
繰り上げ返済か貯金
 
(4)加入保険について
・生命保険(死亡保障1200万円)
・医療保険(終身払込・年払い3万5000円)
・個人年金(10年間100万円)
 
(5)食費について
家事の省力化等などのため外食・中食が多い
 
(6)自宅の査定額について
自宅マンション時価は不動産会社の簡易査定を受けた金額

■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 相続対策も兼ねて、ローン負担が重い自宅の買い換えを
アドバイス2 子どものために、遺言書を残しておく
アドバイス3 不安に思うことを早く解消し、趣味や娯楽などにお金を使う
 

アドバイス1 相続対策も兼ねて、ローン負担が重い自宅の買い換えを

80歳まで続く住宅ローンは、さきざきご心配ですよね。お2人のお子さまへの相続対策も含めて、ご提案します。
 
まず、相続はこのまま何事もなければ、20年、30年後の話です。今のマンションに住み続けると、自宅不動産と金融資産が相続税の対象になりますが、マンションについては、建物部分の評価はかなり低くなると推測されるため、土地が中心になる可能性が高いでしょう。マンションは土地の持ち分が少ないので、それほど相続税の心配は必要ないかもしれません。心配であるとすれば、20年、30年後にマンションの価値が上昇している場合と考えられます。

ただ、20~30年先で相続税の改定もあるかもしれないので断定はできません。一方の金融資産ですが、現在の収支状況では、現預金を取り崩していくことになり、相続時にどれほどのキャッシュが残っているか、ということになります。現預金を取り崩すことになる最大の問題が、住宅ローンです。毎月20万円以上の返済が、80歳まで続くのは、かなり重荷ではないでしょうか。
 
そこで、現在の自宅は売却し、残りの住宅ローンを清算し、残った資金で4000~5000万円程度のマンションを現金で購入します。仮に9000万円(査定価格の1割減)で売却できたとしたら、住宅ローン5000万円を清算。売却益がでますが、居住用財産の3000万円控除の特例を受ければ、税金はそれほど多くはかかりません。諸費用分は手持ちの預貯金からまかなえるでしょう。
 
相続時には、お子さまのお1人は障害があるとのことですから、この買い換えたマンションはそのお子さまに。もう1人のお子さまには、相応の金融資産を相続させるようにするのがベターではないでしょうか。そのためにも、預貯金を取り崩さず、残しておくことが大切と考えられるのです。
 
住宅ローンがなくなり、さらに毎月20万円の教育費も4年後(ぺこさん58歳)にはかからなくなり、支出がかなり改善されます。57歳でぺこさんの収入が4割カットされても、年間で270万円程度残ることになります。この時点で金融資産は4500万円前後になっている計算です。
 
ぺこさんが63歳で退職し、年金受給の65歳までは預貯金の取り崩しになりますが、65歳時点で、公的年金と個人年金で、毎月28万円の収入ですから、収支は問題ないのではないでしょうか。毎月5万~6万円を預貯金から取り崩すことになっても、90歳で3000万円以上残ります。
 
自宅をこのまま売らずに、住宅ローンを払い続けることは可能ですが、金融資産が残らず、ぺこさんの老後資金が不足することにもなりかねません。自宅を賃貸にするとしても、ほかに住居費がかかるうえ、思うように賃貸収入が入らなくなることも考えられます。自宅の買い換えで、生活のゆとりを得られたらいかがでしょうか。
 

アドバイス2 子どものために、遺言書を残しておく

相続に関して、もうひとつアドバイスするとしたら、相続人がお子さま2人だけだとしても、遺言書を残しておかれたほうがいいでしょう。特に、今回ご提案したように、すべての資産を2分割するのではなく、自宅マンションは、障害のある子どもに、預貯金は、もう1人の子どもにとなると、ペコさんのご遺志を明確にしておくことで、トラブルを回避することができるからです。相続税が発生した場合は、終身保険の1200万円から支払えば問題ないでしょう。
 
また、障害の程度がわかりませんが、ぺこさんに万一のことがあった場合、お子さまの生活を支えていく資金も必要になるかもしれません。お子さまへ生前贈与などで残していくことも、考えてみてください。
 

アドバイス3 不安に思うことを早く解消し、趣味や娯楽などにお金を使う

最後に、ぺこさんご自身のことが気になります。確かに、今は、住宅ローンと教育費が重く、支出が多いように見えますが、それ以外の支出は、かなり切り詰められているように思います。食費はぺこさんの家事省力化のための必要経費として、このままでいいと思います。しかし、趣味娯楽費や旅行など、いわゆるレジャー費が少なく、家族でもっと楽しむためにお金を使ってもいいのではないでしょうか。住宅の問題の目途がついたならば、切り詰める生活から少し緩めた生活にかえるようにしましょう。
 
住宅ローンの不安が大きいばかりに、将来のことも過剰に不安になってしまうのは、ストレスを溜めることになります。今、手をつけられるマイナス要因を払拭して、精神的にも金銭的にも余裕のある生活をしていただきたいと思います。ぺこさんご自身が書かれていたように、住宅のダウンサイジングをすることで、これからの生活を楽しんでください。
 

相談者「ぺこ」さんから寄せられた感想

アドバイス、感謝します。私は大雑把な性格で、何にいくらかかっているかなど普段見返す時間もなく、漠然と色々な不安に包まれておりました。数字でアドバイスいただくと明確になるものですね。結局、最大の不安要因はローン返済で、自宅をダウンサイジングしてローンを失くせば、無理して労働する必要もなさそうですね。遺言、生前贈与、居住用財産の3000万円控除の特例なども、勉強になりました。次の課題は次の自宅探しになりそうです。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子


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