非常事態下のストレス、恋愛にどう影響する?
大変な時期を乗り越えゴールイン! 非常時に恋愛感情が燃え上がりやすい傾向は心理学でも報告されています
こうした不安な状況は、恋愛中のカップルにとっては試練そのもの。「デートにも旅行にも行きにくい」「遠距離だと会いに行くのもためらわれる」というカップルのストレスは、この先も続きそうです。一方で、心理学的には、恋愛には「ままならない状況こそがカップルを強くする」という考え方もあります。
今回は2つの心理学キーワードをもとに、非常事態下特有の恋愛感情について考えてみたいと思います。
ロミオとジュリエット効果……障壁があるほど恋愛感情は燃えやすくなる
「ロミオとジュリエット効果」とは、何らかの障壁があった方が目標達成への意欲が高まり、目標を達成しやすいことを意味する心理効果です。ご存じのとおり「ロミオとジュリエット」は、両家の親に恋愛を反対された若いカップルが真実の愛を貫く(結果的には悲劇となりましたが)有名なシェイクスピア劇です。この物語の主人公のように、恋愛感情は何らかの障壁がある方が燃えやすく、恋愛が成就しやすいといわれています。今回のコロナ禍では、多くのカップルに「外で会うと人に責められそう」「キスをしたいのに、万が一の感染を思うと怖い」といったジレンマが生じており、これが恋愛の障壁となっています。このジレンマは、緊急事態宣言が解除になっても当面は続くでしょう。とはいえ、実はこのジレンマが「ロミオとジュリエット効果」となり、お互いの恋愛感情を高め、お互いの恋愛を決定的なものにしてくれるかもしれないのです。
平和な日常であれば、多くのカップルは会いたいときにいつでも会うことができます。ですが、そうしたイージーな状況下では、思い切り恋愛ができる幸福、付き合っている相手へのありがたみなど、たいして感じられないのかもしれません。今回、それができない状況になって初めて、好きな人と共に過ごせる時間の貴重さ、つらいときにいちばんそばにいてほしい人は誰なのかということを、しみじみ実感している方も多いのではないでしょうか。
これは、「ロミオとジュリエット効果」による恋愛感情の高まりだと考えることもできます。
つり橋効果……非常事態下では恋愛感情が高まりやすくなる
また、非常事態下に置かれる恐怖は心身を過剰に興奮させますが、その興奮を恋によるものだと勘違いして、人を好きになってしまうことがあります。これを説明しているのが「つり橋効果」という心理効果です。この心理効果は、「つり橋実験」という有名な実験で明らかになったものです。男性が不安定なつり橋を渡っている途中に、女性からある依頼を受けて電話番号を渡されると、高確率で連絡をしてしまう、というのが実験の結果です。不安定なつり橋を渡っている最中、人は身の危険を感じてドキドキしています。そのときに目の前にステキな人が現われた場合、つり橋をわたる際のドキドキを恋愛感情のドキドキと勘違いして、「自分はこの人を好きなのかも!」と感じやすくなるということです。
今回のコロナ禍では、人と人との接触を避けることが求められており、そうした状況の中では人とすれ違ったり、同じ空間にいたりするだけでも、心は緊張状態になるものです。そうした非常事態下の緊張感でドキドキしているときに、異性から親切にされたり、マスク越しにでも微笑まれたりしたら、通常時より何倍もドキドキして、急に恋に落ちてしまうかもしれません。
このように、非常事態下において恋愛感情が急に高まった場合には、少し冷静になる必要があるでしょう。その感情が本当にその相手を好きだからなのか、非常事態の興奮と恋愛感情を混同しているだけなのか、じっくり考えてみた方が良さそうです。
情熱と冷静の間? 恋愛感情に親しみつつ、冷静さも失わないこと
上で見てきたように、人は非常事態に置かれると、「ロミオとジュリエット効果」や「つり橋効果」といった心理効果によって、恋愛感情に火が付きやすい傾向があります。その結果、恋愛が成就して幸せになれるカップルもいます。ちなみに2011年の東日本大震災の年には、震災を機に結婚した夫婦が話題となり、「震災婚」と呼ばれました。今回のコロナ禍の中でも、結婚を真剣に考えているカップルは少なくないかもしれませんね。一方で、非常事態下では恋愛感情がとても燃え上がっているのに、通常時に戻った途端、その感情の炎が収束してしまう人もいます。そうした人は、「ロミオとジュリエット効果」や「つり橋効果」で一時的に恋愛感情が高まったとしても、その相手は結局、運命の人ではなかったということでしょう。
いずれにしても非常事態下では、恋愛感情は陰にも陽にも揺さぶられやすくなります。人を好きになる気持ちに親しむ一方で、少しその感情から距離を取り、自分の本心や相手との関係を冷静に考えることも大切にしたいものです。