アメリカが生んだウイスキーハイボールカクテル

 
ジョー・リッキー(ジムビームライ・ベース)

ジョー・リッキー(ジムビームライ・ベース)

3回にわたってウイスキーハイボールのはじまりについて語ってきたが、ここで鉄道説やゴルフ場説と離れて、ウイスキー&ソーダに関わるいくつかの興味深い話をしよう。
ジンベースのスタンダードカクテルのひとつに、ジン、ライムジュース、ソーダ水でつくる「ジン・リッキー」がある。実は、もともとはジンベースではなく、アメリカンウイスキーベース(おそらくライウイスキー)の「ジョー・リッキー」という名のカクテルだった。
1883年にアメリカ・ワシントンD.C.の『シューメーカー』というバー・レストランで、民主党ロビイストであったカーネル・ジョー・リッキーとバーテンダーのジョージ・ウィリアムソンによって生まれたものである。誕生の詳細を“バーボンエッセイ・アメリカの歌が聴こえる70回『ジョー・リッキー』”で語っているのでそちらをご一読いただきたい。
ウイスキーベースの「ジョー・リッキー」がその後、ブランデーやジン、ラムなどいろいろなベースに変えて楽しまれていき、ジンベースが最もメジャーとなり、「ジン・リッキー」がスタンダードになったのである。
で、何が言いたいのか。「ジョー・リッキー」はいまでいうアメリカが生んだウイスキーハイボールである。しかしながらこのカクテルに関しての古い文献を眺めると、ソーダ水で割っていながらハイボールという表現、記述がされているものがない。
アメリカ鉄道説に立って述べるならば、ハイボールはアメリカ南西部の鉄道敷設(1890年頃にはほぼ網羅)で生まれた表現であり、1883年頃の東部にはまだ伝わっていなかった、ということになるのだろう。
 

丈の高いグラスをハイボールと呼んだ

 
響JHハイボール

響JHハイボール

もうひとつ。1890年代のアメリカでは丈の高いグラスをハイボール、丈の低いグラスをローボールという呼び方が流行ったそうだ。
これはグラスを握る手が、野球のボールの握りに似ているからそう呼んだ。
そこからこういう分析がされてもいる。丈の高いグラスで飲むロングドリンクには水やソーダ水、トニックウォーターなどで割るものが多い。とくにソーダ水で割るものは丈の高いグラスの中を小さな気泡が上昇していくので、その様子とともに、いつしかソーダ水で割るスタイルをハイボールと呼ぶようになった、というものだ。
これって、他の説と比べて割とすっきり爽快な説ではある。
アメリカでは20世紀はじめから禁酒法施行(1920年~33年)前までの間には、ハイボールという呼び方は定着していたようだ。1910年前後のアメリカンウイスキーの広告には、飲み方としてウイスキー&ソーダをすすめているものがいくつかあり、そこにはハイボールという言葉が使われている。

さて、4回にわたってハイボールのことを語ってきたが、いつ、どこで、誰が、ということはわかっていない。この他にもさまざまに語られている。ちなみに日本では昭和のはじめにはハイボールを飲ませるバーがあったようである。
現在は角ハイボールを主役に、いろいろなブランドのウイスキー&ソーダが楽しまれている。「ジムビーム」をはじめとしたバーボンのバニラ様の甘みのあるハイボールもいい。ちょっと嗜好を変えて「ティーチャーズ  ハイランドクリーム」のスモーキーハイボール(「ウイスキーハイボールの歴史3」参照)もおすすめする。もっとスモーキーをというならばシングルモルト「ラフロイグ10年」のハイボールを試すといい。「カナディアンクラブ」の軽快ながらちょっと辛口ハイボールもリフレッシュできる。
もうすぐお正月。わたしは「響JAPANESE HARMONY」のハイボール(「ウイスキーハイボールの歴史1」参照)で新年を迎える。日本人の晴れの日ウイスキーは「響」がふさわしい。
 

関連記事

ウイスキーハイボールの歴史1・酒をソーダ水で割る
ウイスキーハイボールの歴史2・アメリカの鉄道説
ウイスキーハイボールの歴史3・英国ゴルフ場誕生説
バーボンエッセイ・アメリカの歌が聴こえる「ジョー・リッキー」
ティーチャーズの歩みから探るブレンデッドの歴史5
スーパープレミアムブレンデッドの魅力・私感2
ブレンデッドウイスキーの魅力・私感1
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。