(筆者Marino Matsushimaをツイッターでフォローいただけますと、記事更新時にお知らせします)
*1月の注目!ミュージカル
『ナターシャ・ピエール&ザ・グレート・コメット・オブ・1812』←観劇レポート&松原凜子さんインタビューをUP!
『どうぶつ会議』←上山竜治さんインタビューをUP!(2頁)
『ベルサイユのばら45~45年の軌跡、そして未来~』←観劇レポートをUP!(2頁)
*2月の注目!ミュージカル
『キューティ・ブロンド』(3頁)←観劇レポートをUP!
*3月の注目!ミュージカル
『KAKAI~歌会2019』(4頁)←原田優一さんミニ・インタビューをUP!
『DOWNTOWN FOLLIES Vol.11』(5頁)←高平哲郎さん・北村岳子さんインタビューをUP!
『プリシラ』(6頁)←観劇レポートをUP!
『夢の続き』(7頁)
『Red Hot and COLE』←(7頁)彩吹真央さんインタビューをUP!
*別途特集した(予定の)ミュージカル
『ラブ・ネバー・ダイ』←製作発表レポート、鳳蘭さん、咲妃みゆさん、小野田龍之介さんほかインタビューをUP!
『スリル・ミー』←成河さんインタビューをUP!
『パリのアメリカ人』←製作発表レポート、稽古場見学&演出・振付クリストファー・ウィールドンさんインタビューUP!
『ロミオ&ジュリエット』←三浦涼介さんインタビュー&観劇レポートをUP!
『レ・ミゼラブル』←佐藤隆紀さんインタビューをUP!
『ノートルダムの鐘』←佐久間仁さん、清水大星さん、光田健一さんインタビューをUP!
ロシアの名作文学がベースの“革新的”ミュージカル『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』
1月5~27日=東京芸術劇場プレイハウス『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』の見どころ 名作文学集には必ず登場する、トルストイの長編小説『戦争と平和』。その一部(第二巻第5部)を抽出して舞台化、2017年のトニー賞で12部門にノミネートされた本作が、早くも日本に上陸します。
愛のない結婚生活を送るうち、人生の意味を見出せなくなってしまった貴族ピエール。彼は美しい令嬢ナターシャの駆け落ち騒動に巻き込まれるが……。モスクワの上流社会で起こる男女の悲喜劇が、多様なジャンルの音楽にのせ、疾走感たっぷりに描かれます。
ブロードウェイでは人気歌手ジョシュ・グローバンが演じたピエール役には、井上芳雄さん。裕福だがさえない容姿の人物を“ミュージカル界のプリンス”がどう演じるのか、注目されます。またナターシャ役には生田絵梨花さん、ピエールの悪妻エレン役に霧矢大夢さん、ナターシャを誘惑するアナトール役に小西遼生さんら、華やかなキャストが集結。劇空間と客席が“まざりあう”仕掛けも登場予定とあって、新春にふさわしい“わくわく感”が期待できる演目です。
『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』観劇レポート:19世紀初頭のロシアが鮮やかに蘇る“新感覚”ミュージカル 升席状の客席と、アクティング・スペースが混然一体となった舞台。昔の日本の芝居小屋を思わせる空間を、まずは出演者たちが楽しげにひやかしながら歩き、ひとしきり場内をあたためた後で本編がスタートします。 ナポレオン戦争下のロシア。戦地へ赴くアンドレイと婚約者ナターシャの別れの抱擁の後、アコーディオンを弾くアンドレイの友人ピエールを先頭に、人々が登場します。 “ナターシャは自由、(従妹の)ソーニャはいい子、(名付け親の)マーリャは豪快”……。同じフレーズが何度も繰り返されながら少しずつ人物紹介が長くなっていき、観客はいつしか脳内に相関図をインプット。こうして、愛のない結婚をした貴族ピエールが読書と酒に耽る日々と、ナターシャが色男のアナトールに誘惑される騒動が並行して描かれ始めます。 悪妻エレンに愛想が尽き、生きる意味を見出せないピエールは、半ばやけになって彼女の不倫相手ドロホフと決闘するものの勝ってしまい、虚無感はピークに。 いっぽう、アナトールから何通ものラブレターを受け取った天真爛漫なナターシャは、ころりとその言葉に騙されてしまう。姉妹のように育った従妹のソーニャが何とか眼を覚まさせようとするものの、ナターシャは3日前に出会った男を”100年愛してきた“ような気分になってしまい、遂に駆け落ち決行の日が。彼女の運命やいかに?
キーワードは“イマーシブ”(溶け合っている) 特定のメロディ(モチーフ)をちりばめるというミュージカルの定型に則らず、様々な曲調、旋律がぽんぽんと飛び出し続け、聴き手のメモリー容量に挑んでくるかのような本作。次にどんな音が来るか分からない緊張感が続くこともあって、2幕でわかり易くノリの良いナンバー“バラガ”が始まると、出演者たちが通路に降りて来るのを待つまでもなく場内は大盛り上がりに。観客のうち何人かはキャストからエッグシェイカーを渡され、演奏(?)に参加しますが、ふと自室にひきこもっているピエールを見やると、彼も酒を飲みながら同じエッグシェイカーを振り振り。二つの空間が別々に描かれているようで、このように時に溶け合っているのが、“イマーシブ(溶け合う)”というキーワードを掲げた今回の舞台らしい趣向です(演出・小林香さん)。 ピエールを金づるとしか見ていない奔放な妻エレンに、アンドレイの偏屈な父親、うさん臭い射撃の名手ドロホフら、いずれ劣らぬ“濃い”キャラクターとロマの人々が、時に騒々しいほど生き生きと割拠する日々のなかで、普通ならおよそ交わることのない、さえない“ひきこもり”男と若く美しい令嬢の人生がふと、交錯する。静けさと、極寒の地の凍えそうな、澄んだ空気を思わせる青白い光に包まれながら、おずおずと展開するこの場面はこの上なく美しく、本作のタイトルの意味が味わい深く思い出されることでしょう。
自由闊達に舞台を動き回るキャストたち このカタルシスへと導くのが、“予想のつかない”楽曲を見事に操り、溌溂と19世紀初頭のロシアの物語へと観客をいざなう出演者たち。ピエール役の井上芳雄さんはベートーヴェンのような髪型と不格好な動きでピエールの“世捨て人”感を体現しつつ、6分にわたるビッグナンバー“塵と灰”はもちろん、大勢が歌うなかでワンフレーズ発するだけでも存在感を発揮。 生田絵梨花さんは18歳のナターシャをこれ以上ないほどのリアリティをもって演じ、特に終盤、喪失感の中で人の優しさに触れ、心を動かしてゆく描写で迫真の演技を見せています。 霧矢大夢さんはエレンという悪女に“自由に生きる女”としての魅力を加え、時にアンサンブルとして踊る姿も美しい。小西遼生さんはナターシャとの1幕でのデュエットでそのドライにして温かみのあるユニークな歌声が活き、アナトールという“色男”役にも嫌みを感じさせません。 松原凜子さんのソーニャ役にはナターシャへの愛が溢れ、彼女を決して道を踏み外させまいと決意するソロナンバーに芯の強さを滲ませます。水田航生さんのドロホフはワイルドでやりたい放題だがちょっと抜けたところもあり、人間臭い造型。はいだしょうこさんは父親に尽くすつつましい女性と見えて、客席の男性に驚くような申し出をするマリア役を大真面目に、楽し気に演じています。 また明るく華のあるオーラで、大ナンバーを盛り上げるバラガ役のメイリー・ムーさん、力強い歌唱で館の主としての貫禄を見せるマーリャD.役の原田薫さん、そして誠実で真面目なアンドレイとその頑迷な父ボルコンスキー老公爵を鮮やかに演じ分ける武田真治さん、ほかロマ役の面々も舞台から客席まで歌い踊りながら縦横無尽に動き、劇空間の自由闊達な空気に貢献しています。 音楽における多様性、“曖昧さ”を生かした演出から、一度ならず何度もキャストが観客と繰り広げるコミュニケーションまで、多方面で“イマーシブ”が顔を覗かせる舞台。人によっては“好み”の分かれる部分もあるかもしれませんが、一つ確かなことは今、最も“攻めている”舞台であること。観劇後に何を感じるか、予想がしにくいところもまた面白い作品といえるでしょう。
ナターシャの従妹ソーニャ役・松原凜子さんインタビュー(18年12月取材)
「イマーシブ」な舞台にドキドキしていただけると思います松原凜子 岐阜県出身。東京芸術大学声楽科出身。在学中に『THE カラオケ・バトル』に出場。18年3月テレビ朝日『関ジャニ∞のTheモーツァルト音楽王NO.1決定戦』優勝。15年に『LITTLE WOMEN~若草物語~』でプロデビューし、17年『レ・ミゼラブル』にエポニーヌ役で出演。ほか『GHOST』等に出演。19年10月には『ラ・マンチャの男』にアントニア役で出演予定。(C)Marino Matsushima
――松原さんはこの作品、ブロードウェイでご覧になっているのですか?
「実際の舞台は観ていません。オーディションを受けるにあたってはトニー賞授賞式での映像を観たり、現地でご覧になった方の感想や、原作小説の『戦争と平和』を全部……は読む時間がなかったので、粗筋を読んだりして準備しました」
――資料にあたる過程で、どんな第一印象を抱きましたか?
「私はもともとロシアの雰囲気がすごく好きで、小さい頃から『アナスタシア』というアニメ(注・最後のロシア皇帝ニコライ2世の第四皇女を巡る物語)を観て育ったんです。試験の前にも『アナスタシア』の曲を聞いて自分の気持ちを高めたくらい好きでしたね。
ロシアのコサックであったり貴族の雰囲気、民俗衣装、そして音楽の、躍動感がありながらちょっと物悲しい感じが昔から好きだったので、映像を見た瞬間から“あ、好きだ!”と思えました」
――ちょっとパーティーのような雰囲気もある作品で、日本ではいったいこれをどう上演するのだろうと思いましたが……。
「私も思いました(笑)。今回は、演出の小林(香)さんが“イマーシブ・シアター”と言って、舞台と客席が溶け合うような作品を意識して作っていらっしゃいます。
ステージの作りにしても、“コメットシート”という客席がステージ上にありますし、既存の客席にも役者が降りていって、それも一度だけではなく複数回降りていってコンタクトをとったりと、なるべく入り込めるように作られてるので、コメットシート以外の方にも臨場感を味わっていただけると思います」
――歌詞の中でソーニャを“いい子”と形容したりと、シンプルな表現が多用されているところをみると、文学的に深掘りをするより、疾走感であったりお祭り的な空気感を楽しむ作品なのでしょうか。
「それもイマーシブというか、まざっているイメージですね。パーティーのように勢いよく進むいっぽうで、しっとり、静かに歌う場面もあります。それにパーティーといっても、そこにいる全員が同じ気持ちでいることってないじゃないですか。小林さんは、いろんな感情、いろんな性格の人がこの世界を作っているということを示したい、とおっしゃっていました。
大人数が集う場面でも、(井上)芳雄さん演じるピエールが一人、別室で本を読んでいるという演出になっていたりするので、ただ勢いに飲み込まれるような作品にはならないと思います」
――観客も参加する場面があるでしょうか?
「あるところで役者が客席に降りていって、何人かの方に“一緒に振ってね”とある小道具をお渡しします。ナンバーが始まったらその方々にも一緒に振っていただくという趣向です。
もう一つ、役者が一人のお客様を選んで……という場面もあって、選ばれた方は大変かもしれません(笑)」
――どきどきしますね!(笑)
「私がお客さんだったらかなりドキドキすると思います」
ナターシャとの強い絆 ――松原さんが今回演じるのは、ヒロイン・ナターシャの従妹ソーニャ役。どんな人物でしょうか?
「ナターシャのそばにずっといる従妹で親友なのですが、同じ貴族でありながら、ナターシャより身分は劣るんですね。彼女の家に引き取られてお世話になっている点で負い目を感じていますが、ナターシャがとても優しく接してくれていることに心から感謝しているし、彼女の美しさや明るさ、飾りけのなさに心から尊敬を示しています。素直に“素敵な人”と思いながらそばにいる感じですね。
ナターシャをいつも支え、あるときは逆に慰めてもらっている。彼女の心がいつも明るく素直な状態であるよう、気を使い、助けているような存在かと思います」
――ナターシャは婚約者がありながら、別の男性によろめいてしまいます。でもそんな彼女を、ソーニャは決して見捨てないのですね。 「見捨てる選択肢はないと思います。今まで稽古をする中で、見捨てようと思ったことは一度もなかったですね。
というのは、ナターシャを演じるのが生田絵梨花さんということで、彼女のかわいらしさや努力する様子、実力含めすべてに尊敬を抱いてるので、そのままの心情で演じられるんです。すごくやりやすいです」
――ブロードウェイ版のオリジナル・キャストは個性的な声の方で、ソロ・ナンバー「ソーニャ・アローン」も個性的に歌っていらっしゃいましたね。
「そうですね、もともとシンガーの方で、ご自分でギターを弾いて歌われている方だそうです。哀愁が漂っているというか、個性的な歌唱ですよね。このバージョンが素敵すぎて、はじめはすごく意識してしまったのですが、それではダメだと思い、今ではなるべく普段のままというか、声を作ろうとしないで、その時その時の感情のままの声でいられるように心がけています。
この歌の中に(ナターシャが自分を)“引き取ってくれた”という歌詞があるのですが、それは小林さんいわく、かなり意訳なのだそうです。この言葉を受けて、ナターシャへの愛であったり、彼女を絶対守りきるんだ、私を引き取ってくれたこの家族をナターシャに捨てさせないという強い思いを出して歌いたいですね。
ブロードウェイ版のこの歌は、ずっと嘆いているようにも聞こえかねないとも感じたのですが、そういう方向にはいかないように。小林さんもそう意図されているようで、何度も“(そこで)泣かない!”と言われています」
個性的なキャラクターが揃う中でも、お気に入りは……
――ソーニャ以外に、お気に入りキャラはいますか? 「皆さんお気に入りなのですが、面白いのは武田(真治)さんのボルコンスキー老公爵ですね。ナターシャの婚約者アンドレイ(武田さんの二役)のお父さんで、厳しくて偏屈な人物なのですが、娘マリア役のはいだしょうこさんとのシーンがコミカルで。稽古でも思い切りコメディを演じていらっしゃいます」
――肉体美のご披露は?(笑)
「老公爵役の時には肉体美はお見せにならないのですが、筋肉がおありだからこその動きというのはありますね。歩みがおぼつかない表現をするとき、足をわっと開いて戻すんですよ。筋肉がないと絶対足を痛めそうで、私にはできない、すごい!と思いながら毎回、拝見しています。歌稽古の時から笑いが止まらなくなっちゃうくらい、武田さんの老公爵は面白いです」
――ピエール役の井上芳雄さんはいかがですか? 「今まですごくかっこいいイメージの芳雄さんが、こういう一面もお出しになれるんだ、と率直に思いましたね。原作では“クマみたい”と形容されているピエールですが、今回は大きな体格ではなく、猫背と眼鏡で寂しそうなピエールを表現されています。
この人は女の人に騙されたり、みんなに金づるのように思われそうだな、というさえない空気を、あんなにかっこいい芳雄さんが出していらっしゃることに驚きます。
さきほどちょっとお話した通り、ピエールはたいてい自分の書斎にいて、他の空間と並行して演技されているのですが、細かく決められてないのでアドリブ的な部分もあって、お菓子をつまんだり悠々自適に自宅でくつろいでる感じのアドリブが、かわいらしくて面白いんです。本筋を観ていても、ついつい(ピエールに)目が行ってしまうと思います(笑)」
――音楽的にはいかがでしょうか?
「音楽的にもイマーシブというか、いろいろな音楽が出てきます。ロシア民謡的なものもあれば、低音のビートが効いた現代のクラブ音楽も、私の歌うソロのようなフォークソング風のナンバーもあります。
モスクワの狭い範囲のドラマですが、その中にも多様な人々が、いろいろな思想・性格・背景を持って集まっているからこそこういう音楽になるのだなと感じられますね。
ほかの作品だったら統一感なく思われるかもしれませんが、コメットシートや客席に降りてゆく演出もあるこの作品だとすっと納得できるような気がします」
――どんな舞台になりそうでしょうか。
「ひとことでまとめるのは難しいですが、“新感覚の舞台”でしょうか。私自身、初めてのことが多くて新しいなと思うし、お客さんにとってもそうだろうなと思うんです。
オペラ的にすべての台詞に音がついている作品なのですが、オペラならレチタティーヴォ(台詞的な歌唱)の後にしっかりメロディのついたアリアが来て、またレチタティーヴォ……という構成になっていて、同じメロディが何度も使われて最後にはそれを口ずさめるようになっていたりしますが、この作品は同じメロディがほとんど出てこないんです。
時がどんどん流れていくことだったり、一人として同じ人はいないということの表現なのかもしれませんが、とても新鮮に聴こえるんですよ。面白い舞台だと思います」
「4オクターブの声」に気づいたきっかけ
――プロフィールについても少しうかがわせてください。松原さんは4オクターブの声をお持ちだそうですが、そのことにはいつごろ気づいたのですか?
「“4オクターブ”と(プロフィールに)書き出したのは大学4年の頃です。以前から高いところまで出るなと思っていたところに、『THEカラオケ・バトル』という番組で初めてポップスの方々と交流するうち、“凜子ちゃんってホイッスルボイスが出るね”と言われたんです。
ホイッスルボイスって何だろうと思ってマライア・キャリーさんの映像を見て、この声も歌に使えるんだと知り、練習を始めました」
――例えば(モーツァルトのオペラ)『魔笛』の夜の女王のアリアなどは楽勝ですか?
「そうですね。音域的には楽に出ます」
――それは素晴らしいです! ミュージカルを志すようになったのは?
「大学1年のころからミュージカルサークルに入っていたので、ずっと好きでした。それ以前に合唱団でミュージカルの曲を歌ったことはありましたが、本格的に作品に触れたのは大学に入ってからでしたね。
音楽大学で、周囲を見ても(オペラの道に進むために)留学したり大学院に進むのが普通という環境だったのですが、私は言葉の観点からミュージカルを選びました。
というのは、コンサートでオペラの曲を歌うと、声や技術が前面に出てしまっていたせいなのかもしれないのですが、(外国語ということで)意味が伝わらないんですね。歌う前に説明をしたり、歌詞カードを配ったりしても、どうしてもリアルタイムでの反応というものがないんです。
でも日本語で歌うとお客様の反応がいいなと感じて、伝わる歌を歌いたい、と思った時に、それがすべて叶うのがミュージカルだったんです。
はじめに『若草物語』という作品に出させていただいて、そこで初めてプロの方々とご一緒させていただいて、自分の至らなさもすごくわかった反面、ご覧になった方から“よかったけど、もっと大きいところでやらないとね”と言われたことがありました。
小劇場でもいいものをやっているのに、と悔しい思いをしつつ、そう思う方がいらっしゃるなら大劇場に立たないとと思い、『レ・ミゼラブル』のオーディションを受けました」
――『レ・ミゼラブル』なら、どの女性の役でも行けそうですが、エポニーヌを選んだのは?
「コゼット、エポニーヌ役でオーディションを受けさせて頂き、審査の結果、エポニーヌ役で出演させて頂くことが決まりました。ソプラノとしての私を知る周りの方々からは意外だという声が多かったのですが、私としては、自分も知らないような側面を見付けて頂いた気がして、嬉しい気持ちでした」
「共感される表現者」を目指したい
――名作中の名作に参加され、手ごたえはありましたか?
「一言では言えないくらい、多くのものをいただいたなと思っています。中でも一番大きかったのは、集まった皆さんの素晴らしさですね。
実力も人柄も、経験も含め、大先輩が一堂に集結しているカンパニーで、10か月くらい一緒にいられたということが一番大きかったです。そういう方々の歌い方、演技の仕方、お人柄に触れられたという経験が一番の宝物ですね。
あとはエポニーヌをやるということで喜んでくださったファンの方もいらっしゃったし、周りの方々の記憶に残れたということも嬉しかったです。『レ・ミゼラブル』のエポニーヌだからということで足を運んでくれた方もいらっしゃって、それはこの作品の作品力なんだなぁと思いますね。
最も知られているミュージカルでエポニーヌを演じたことで喜んでいただけだというのは自信につながったし、すごく幸せな時間だったと思います」
――どんな表現者を目指していますか?
「共感していただける表現者ですね。お客様に寄り添えるというか、“あ、わかる”“私もああいうことあるよな”“こういうふうに優しくなれたらいいな”と思っていただけたら。
お客様の記憶を引き出したり、普段の生活で凝り固まったところがちょっとほぐれるような、お客様の感受性を豊かにできるような表現者になれればと思っています」
*公式HP
*次頁で『どうぶつ会議』をご紹介します!