ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

2019年1~3月の注目!ミュージカル(7ページ目)

2019年、皆さんはどの演目からご覧になりますか?今年は『ナターシャ・ピエール&ザ・グレート・コメット・オブ・1812』『キューティ・ブロンド』はじめ、注目の舞台が続々登場。少しずつ記事を更新していきますので、どうぞお楽しみに!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

 

姉妹の不思議な夢物語を繊細に描く『夢の続き』

3月27日~4月1日=劇場HOPE
『夢の続き』

『夢の続き』


『夢の続き』の見どころ
姉と妹は、いつも同じ夢を見る。スコットランドやインド、NYと様々な場所を舞台にした奇想天外な夢の数々は、なぜか必ず“死で終わる”という共通項があった。それは何故なのか……。
『夢の続き』

『夢の続き』

ファンタジーと現実、生と死のあわいを繊細に描くオリジナル・ミュージカルが、待望の再演。オリジナル・キャストの山崎佳美さん・伽藍琳さんペアに加えて、今回は河合篤子さん・五十嵐可絵さんペア、鈴木結加里さん・王子菜摘子さんペアという3組上演が実現します。作・演出の佳田亜樹さん、作曲の林アキラさんらがじっくり年月をかけて練り上げた作品は虚と実のバランスがほどよく、演じ手にとっては人生経験をどう膨らませて演じるか、演じ甲斐がありそう。3組がそれぞれに異なる味わいで人生の悲喜こもごもを表現してくれることでしょう。

公式HP
 

C・ポーターの波乱の人生を華麗に描く『Red Hot and COLE』

3月1~17日=銀座 博品館劇場、3月21日=森ノ宮ピロティホール、3月24日=富士市文化会館ロゼシアター大ホール、3月27日=刈谷市総合文化センターアイリス大ホール
 
『Red Hot and COLE』の見どころ
『Red Hot and COLE』製作発表にて。(C)Marino Matsushima

『Red Hot and COLE』製作発表にて。(C)Marino Matsushima

ミュージカル『エニシング・ゴーズ』『キス・ミー・ケイト』の楽曲をはじめ、数々のスタンダード・ナンバーを生み出した作詞作曲家コール・ポーター。その波乱万丈の生涯を描いた『Red Hot and COLE』が、小林香さんの翻訳・演出によって演劇性豊かに洗練。実力と華を兼ね備えた8人の日本人キャストによって、見ごたえたっぷりの舞台として登場します。
 
1891年、米国の裕福な家庭に生まれ、30代でブロードウェイの売れっ子作曲家となったコールは、ハリウッドにも進出。絶頂を極めていた1937年、落馬事故で両足の骨が砕け、その後は苦痛と闘う日々となる。葛藤の中で、彼は友人に勧められたシェイクスピア劇のミュージカル化にとりかかるが……。
『Red Hot and COLE』製作発表にて。(C)Marino Matsushima

『Red Hot and COLE』製作発表では楽曲披露も。(C)Marino Matsushima

コールを演じるのは、『ドッグファイト』等で舞台俳優としての存在感を見せている屋良朝幸さん。製作発表では思いをこめて「I’m a Gigolo」を歌唱、「(ポーターの曲は)難しいです。本番ではもっと素敵に歌いたい」と抱負を語りました。また友人、妻らコールを巡る人々を演じるのは矢田悠祐さん、吉沢梨絵さん、彩乃かなみさん、木内健人さん、真瀬はるかさん、そして彩吹真央さん、鈴木壮麻さん。ドラマ部分をしっかり見せつつ、歌・ダンスともに定評のある方々ばかりとあって、ポーターの名曲の数々を高橋亜子さん(訳詞)、岩崎廉さん(音楽監督)、加賀谷一肇さん(振付)のもと、華やかに歌い踊ってくれそうです。
 

ブリックトップ他役:彩吹真央さんインタビュー

ポーターの物語の中に舞台人の葛藤も織り込まれた、素敵な作品です
彩吹真央 大阪府出身。宝塚歌劇団で男役スターとして活躍し、2010年に退団。『サンセット大通り』『シラノ』『ロコヘのバラード』『ラブ・ネバー・ダイ』『アドルフに告ぐ』『イヌの仇討』『マリー・アントワネット』等の舞台や、コンサート等の音楽活動、声優など幅広く活躍。「End of the RAINBOW」の主演ジュディ・ガーランド役では体当たりな演技で観客を魅了した。4月に芸歴25周年記念ライブ「Le Printimps-春-』を開催。(C)Marino Matsushima

彩吹真央 大阪府出身。宝塚歌劇団で男役スターとして活躍し、2010年に退団。『サンセット大通り』『シラノ』『ロコヘのバラード』『ラブ・ネバー・ダイ』『アドルフに告ぐ』『イヌの仇討』『マリー・アントワネット』等の舞台や、コンサート等の音楽活動、声優など幅広く活躍。「End of the RAINBOW」の主演ジュディ・ガーランド役では体当たりな演技で観客を魅了した。4月に芸歴25周年記念ライブ「Le Printimps-春-』を開催。(C)Marino Matsushima

――開幕した舞台を拝見しましたが、密度の濃い、素晴らしい舞台ですね。何より皆さんのぴったり息のあったビッグナンバーに胸躍ります。
 
「嬉しいです。今回は(コール役以外は)皆、何役も担当し、歌も踊りも芝居も満載なので、出来ればあと1週間ぐらいお稽古の時間がほしかったけれど、お互いコミュニケーションをとりつつ、精いっぱい積み重ねました」
 
――今回のように数役ずつ演じる場合は、一つの役を軸として演じていらっしゃいますか?それとも時間の経過につれてどんどん変わっていくというイメージでしょうか?
 
「演目やその方にもよると思います。私は今回、主に3役と、名前のない“ダンサー”や“女優”といった役を担当していますが、中でもブリックトップというアイルランド人と黒人のハーフの女性役を核として演じていますね。彼女はコールがパリで出会うクラブ経営者で歌手なのですが、彼女が黒人らしく見えるよう、化粧やヴィジュアルを重視すると同時に、(ほかのキャラクターとは)歌い方も変えるようつとめています。ポーターの曲を歌っている歌手の中に、私の好きなエラ・フィッツジェラルドのイメージを参考にしています。『シカゴ』のママ・モートンのような、黒人のかっぷくのいいお姉さんが歌ったらこうなるかな、というイメージですね。実際にかっぷくをよくすることはできないので(笑)、歌のパンチだけでも出せたら、と思っています」
『Red Hot and COLE』より

『Red Hot and COLE』より

「好きな作曲家は何人もいますが、その中でもポーターは一位ですね。宝塚歌劇団入団前に、宝塚版の『キス・ミー・ケイト』を観て“なんて素敵な音楽!”と興味を持ったのがきっかけです。調べてみると、あのジャズの曲も彼の曲なんだとか、宝塚のショーでもけっこう彼の曲を使っていたりという発見がありました。以来良く聞いてきましたし、自分でライブをやるときには、必ず1曲はポーターの歌を歌っていますね。3年前のライブではメドレーで、“Night and Day”“Anything Goes”“Begin the Beguine”と、『キス・ミー・ケイト』の中から“Too Darn Hot”など何曲も入れて歌っていました。今年4月のライブでもコールの楽曲を歌う予定です」
 
――彼の音楽の魅力を言葉で表現するとしたら?
 
「彼は歌詞も自分で書いていて、英語の分からない私にでもわかるような韻の踏み方などが面白いし、キャラクターがすごくストレートに伝わってくる、素晴らしい曲ばかりだなと感じられます。ライブで原語での歌唱にチャレンジしていると、胸に染み入ってくるんですよ。あと、彼は曲をたくさん書いているので、中にはどこか似たような曲調のものもあるのですが、それがまた“この展開がポーターらしさだな”と思えたりして、いいんです」
 
――音楽においても言葉においても、センスがいい方なのですね。
 
「そう思います。王道、古典的なミュージカルの作曲家として、コール・ポーターは大好きですね。ライブで歌う時は彼のジャズを選びたくなります」
『Red Hot and COLE』より

『Red Hot and COLE』より

――舞台の話に戻りますが、本作ではポーターの栄光だけでなく、大事故に遭い、苦しみに満ちた後半生も描かれます。最終的には何を描いている作品だと感じていらっしゃいますか?
 
「おそらく“Show must go on”ということではないでしょうか。この作品に携わることで、私はポーターの闇の部分を知ることが出来ましたが、人生を楽しく過ごしているように見えていた彼にも、そうではない時期がありました。けれどもそれにも関わらず、彼の音楽愛は変わることが無かった。最終的には、人生は(絶望的ではなく)ポジティブなものなのだ、ということを伝えている作品ではないでしょうか。
 
先ほど、ブリックトップという役の話をしましたが、私は終盤に『キス・ミー・ケイト』の脚本を書いたベラ・スピワック役として、ミュージカル作りの裏側を少しお見せするシーンがあります。お客様は普通、開幕して以降の舞台をご覧になるわけですが、それに至るまでには作り手たちのいろいろな葛藤がある。そんなことが感じられるのも、この作品の醍醐味だと思います」
 
――主演の屋良さんとは久々の共演だそうですね。
 
「4年半ぶりの共演です。稽古が始まって“大人びたな”とも感じましたし、彼がショービズの中で歩んできた歴史と、ポーターの人生のいろいろな局面がリンクするように感じられました。この作品は周囲の人々がかわるがわる“コール・ポーターはこんな人だった”と語ってゆく作品なのですが、今回、屋良っちを私たちも微力ながら自然と支えさせてもらえるのも、彼の度量の大きさから。頼もしい男性になったなあとひしひし感じます」
 
――公演後半に向けて、どんな思いを抱いていらっしゃいますか?
 
「ポーターを(国民的作詞作曲家として)よく知っているアメリカ人と違って、わたしたち日本人にとって、この作品は(初めて知るエピソードが多く)とても情報量の多い作品かもしれません。だからこそ、“もう一度観たい”と思っていただける作品なのでは? 伏線を確認して観ていただくことで、改めて“こういうことだったんだ”と楽しんでいただけると思います。目が追い付かないこともあるかもしれないので、一度の鑑賞ではもしかしたらあの役、この役を見逃していらっしゃるかもしれません(笑)。できれば二度、三度とご覧いただきながら、私が愛してやまないコール・ポーターの魅力を感じていただけましたら嬉しいです」

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