パン/パン屋さん取材レポート(東日本)

食パン専門店セントル ザ・ベーカリー 青山にオープン

食パン専門店ブームの発端となった銀座の人気店「セントル ザ・ベーカリー」が青山の国連大学横に青山店をオープン。これからは青山でも北海道・美瑛産の「ゆめちから」と「きたほなみ」を使った国産小麦の角食パンをはじめ、3種類の食パンが楽しめます。

清水 美穂子

執筆者:清水 美穂子

パンガイド

食パン専門店、セントルが青山店をオープン

ラックにパンが整然と並んだ風景は朝、みられるかもしれない。

ラックにパンが整然と並んだ風景は朝、みられるかもしれない。


最近、食パン専門店が増えています。食パンとロールパンの「ペリカン」以降、半世紀以上、専門店がなかなか現れなかったのですが、2013年、銀座に「セントル ザ・ベーカリー」がオープンし、連日の行列が話題になってからは「俺のベーカリー&カフェ」や「焼きたて食パン一本堂」など、食パンの専門店が続々登場しています。
 
国産小麦の角食パン(JP)

国産小麦の角食パン(JP)


トレンドの発端とみられる「セントル ザ・ベーカリー」が、2018年11月1日、国際連合大学の横に青山店をオープンします。青山店は銀座店のようにレストランを併設せず、パンの販売のみ。そのパンは店内で焼かれています。セントルの特長のひとつは「焼きたて」にあるのです。
 
セントル ザ・ベーカリー青山店

セントル ザ・ベーカリー青山店

 

焼きたてパンの店

国産小麦の角食パンをはじめ、3種類を製造販売

国産小麦の角食パンをはじめ、3種類を製造販売


「うちは、焼きたてのパンを売る店です」

セントルを経営する株式会社ル・スティル代表取締役の西川隆博さんの何気ない一言に、ハッとしました。「焼きたて」という言葉はあまりに使いふるされていて、あたりまえのようで、意識することがなかったけれど、実はあたりまえではないと気づいたからです。
セントル ザ・ベーカリーは焼きたての食パンの店

セントル ザ・ベーカリーは焼きたての食パンの店

看板や幟(のぼり)に「焼きたてパン」とあるのを目にすることがありますよね。しかし、いつでも、どのパンでも、焼きたてを買えるとは限らないと思いませんか。

「本来の焼きたてパンを体験していただくために、お客さまをお待たせすることもありますが、そのとき何を待つかといえば、パンが窯から出てくるのを待つのです。セントルでは、香りがよくておいしい、まだ温かいパンをお渡しできるよう、努めています」
 
焼きたてのパンのカタチを崩さないように、大切に持ち帰るための紙製トレイ。これごと紙袋に入れてくれる。

焼きたてのパンのカタチを崩さないように、大切に持ち帰るための紙製トレイ。これごと紙袋に入れてくれる。

 

「湯種」はセントルの角食パンの命

セントルの食パンは銀座店オープン以来変わらない3種類のみ。いずれも2斤サイズで、国産の超強力小麦「ゆめちから」を用いた角食パン「JP」(800円)、北米産小麦を使ったプルマン「NA」(800円)、山型イギリスパン「EB」(700円)の3つです。

ラインナップは変わりませんが、同じパンを今日より明日もっとおいしくするために、厨房では常に製法の研究がなされ、少しずつ進化しているのだそうです。

「いろいろ目先の違うものをつくって、どれも中途半端になってしまうよりも、プロのパン屋としてはベーシックなものを、よりおいしく究めていくのが正しいと思うんです」と西川さんは言います。
湯種はセントルの角食パンの命

湯種はセントルの角食パンの命

厨房には、一般的なパン屋さんには見かけないものがあります。たとえば大型給湯器、大鍋とIHコンロ、そしてこの、かなり大型のミキサー。中を真剣なまなざしでのぞきこんでいたのは、ベーカリー統括シェフの奈良晴之さんと、今回、青山店のシェフに就任したばかりの吉澤一也さんでした。セントルでは、小麦粉の質の見極めから調整まで行える技術者たちが食パンを焼いています。このミキサーはパン生地より固い糊状の湯種を混ぜるときに、パワーを発揮するのだそうです。給湯器や鍋も、湯種のための設備です。

湯種とは、簡単にいうと、小麦粉を熱湯で捏ねたもので、パンのもちもちした食感やしっとりしたやわらかさを持続させる役目を持っています。セントルの角食パン(JPとNA)の命、ともいえるでしょう。
 

セントル ザ・ベーカリーの3種類の食パン

イギリスパン(EB)

イギリスパン(EB)


3種類の食パンの特長について、以前の記事でもご紹介していますが、ここでもおさらいしておきましょう。

角食パン「JP」は焼きたてをできるだけ早く、そのまま食べたいパン。たまごやハムなど、普通のサンドイッチも、ふんわりしっとりとしたこのパンを使えば記憶に残るおいしさになるでしょう。翌日以降はトーストがおすすめです。

焼いたときに立ち上る香りは上質なバターと、液種によるもの。液種は水とイーストを加えた小麦粉を長時間発酵させた種で、パンの香りと味わいを深めます。

プルマン「NA」も「JP」と同じ湯種液種製法ですが、トーストしたときによりサクッとした食感が際立ちます。チーズトーストやカツサンドなどに最適です。ちなみに北米では、角食のことをプルマンというので、北米産小麦を使ったこのパンの呼び名になっています。

いずれの角食もトーストしたときに香ばしさを増すクリスピーなミミと、柔らかな中身の対比は絶妙です。また、水の代わりに使われている美瑛の脱脂乳の、ミルキーでやさしい甘みも特長です。

イギリスパン「EB」は3種のなかで一番スッキリとした味わいで、トースト向き。薄切りにして焼いて、カリッと軽快な口あたりを楽しみたいパンです。このパンには湯種が入らない代わりに、VIRONの銘柄粉「レトロドール」が入っているので、味はお墨付き。スライスしたバターをたっぷりのせて楽しむのもいいし、BLTサンドなど、トーストサンドもおすすめです。
 

パリで日本の食パンを

パリのCARRÉ PAIN DE MIE(キャレ パンドミ)

パリのCARRÉ PAIN DE MIE(キャレ パンドミ)


セントル ザ・ベーカリーは、今からちょうど一年前、2017年の秋になんと海を越えて、フランスはパリに進出しています。

場所はマレ地区とポンピドゥセンターの間(5 Rue rambuteau 75004 PARIS)です。店の名は「角食パン」を意味するCARRÉ PAIN DE MIE(キャレ パンドミ)。

そこで、日本と同じ、北海道は美瑛町の「ゆめちから」と「きたほなみ」でつくる角食パン「CARRÉ」と、VIRON社のレトロドールでつくる山型食パン「TOAST」の2種類を製造販売しています。

パリの人たちの反応はいかに、と思いきや、週末には150本近くを売り上げているそうです。パンはもう海外から上陸するばかりではなくなってきているのです。

セントルのパンには特別な技術を持つ職人の確保が必要とされるため、他の出店の予定は今のところないそうです。
セントル ザ・ベーカリー青山店

セントル ザ・ベーカリー青山店

■セントル ザ・ベーカリー青山店

住所:渋谷区神宮前5-52-2 青山オーバルビル1F 
電話:03-6451-1067
営業時間:10時~19時(売切れ次第閉店)無休
Yahoo!地図情報
東京メトロ表参道駅B2出口徒歩3分

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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