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住宅ローンを借りるときに加入する団体信用生命保険
通常、住宅ローンを借りるとき、団体信用生命保険(以下、団信)に加入することになっています。ほとんどの金融機関では、加入を義務付けていますが、加入にかかる保険料は銀行が支払うので、契約者の負担はありません。団信は、返済途中に、契約者が死亡、または高度障害になり、その後のローン返済が困難になった場合に、団信から支払われる保険金で、残りのローンが相殺されるというものです。これは銀行側が万一の時に貸し倒れにならないため、ということもありますが、遺された家族にとっては、家を失うことがなく、生活の安定、安心につながる保険であると言えるでしょう。
「住宅ローンを借りるなら、団信に加入する」というのは、常識です。
しかし、最近の団信には、3大疾病特約をはじめ、さまざまな疾病特約を付けたものが多く、特約を付けるべきなのか悩むケースが増えてきています。いかにも、「○大疾病特約付き住宅ローン」と聞くと、おトクに感じてしまうかもしれません。
あれも不安、これも不安、ガンになったら働けないかも、今の仕事を続けられないかも、収入が減るかも、と不安を募らせ、「たくさんの疾病特約が付いた住宅ローンなら安心」と思い、団信だけでいい人でも、疾病特約付き団信のある住宅ローンに申し込むケースが多くあります。
疾病特約とは? 一般の医療保険には未加入?
本来、団信は住宅ローンと紐づいていますから、セットで考える必要がありますが、団信だけであれば、どの金融機関で住宅ローンを借りても、万一のときに住宅ローンがなくなるという保障自体は同じです。しかし、疾病特約付き団信にするかどうかは、現在加入している、生命保険、医療保険との兼ね合いで考えるべきです。詳しくは、「住宅ローンに三大疾病の保険ってホントに必要?」に詳しく書きましたが、保障対象となる疾病によって、住宅ローンが相殺される条件が異なります。保険会社で加入する生命保険や医療保険と異なり、特約で該当する病気のみ、ということです。該当すれば住宅ローンの支払いはなくなりますが、特約に該当しない病気・ケガでの入院や手術の際の保険金は支払われません(一時金が支払われるタイプもある)。
また、多くの場合、疾病特約付き団信の場合は、住宅ローン金利に、0.25~0.40%程度が上乗せされ、これは契約者負担となるのです。これが、本当に特約疾病付き団信に加入すべきかどうか、悩むところでしょう。
ネット銀行系で、保険料負担ゼロの疾病特約付き団信が取り扱い開始
これまでの住宅ローンは、金利で選ぶ、取引銀行の中から選ぶなどといった方法が一般的でした。団信への加入や疾病特約付きかどうかは、その金融機関の住宅ローンに付随するもので、実のところ、あまり選択の余地はなかったと言ってもいいかもしれません。しかし、直近では、住宅ローン金利そのものが低く、申し込みがラクということで、ネット銀行の住宅ローンを利用する人が増えているのも事実です。昔のように、住宅ローンはメガバンクで借りるという時代ではなくなってきています。
それを象徴するのが、2018年8月に取り扱いが開始された「楽天銀行」の、「全疾病特約付団体信用生命保険」です。これは、楽天銀行の住宅ローン(金利選択型)を利用する契約者全員が対象で、死亡、高度障害状態にあった場合に、住宅ローンの返済が免除される従来の団信に加え、すべての病気、ケガ(一部、精神障害などを除く)などで就業不能となった場合の特約保障が保険料タダで付いたものです。
契約者の保険料負担がゼロ。つまり楽天銀行側の負担となるため、どんな病気が対象なのか、保険料負担はどうなるのかと悩む必要もなく、住宅ローンを借りる、団信に加入する、全疾病特約が無料で付いてくる、とワンストップで完結できる内容となっています。
通常、ガン特約などの場合は、保障開始から90日間の「免責期間」があったり、入院が条件にあったりしますが、そうした条件もありません。ただし、借入の住宅ローンは金利選択型のみなので、長期固定金利(フラット35、フラット35S)で検討している場合には、対象外となります。
これ以前にも、住信SBIネット銀行では、保険料負担なしで8疾病保障団信を取り扱っていましたが、2017年6月に全疾病保障付きの団信に変更されました。じぶん銀行でも「ガン50%保障」(ガンと診断されたら、住宅ローンの残債の半額を免除。ガン100%は保険料負担あり)の団信を扱っていましたが、2019年3月に保障内容が改定され、全疾病保障が追加されました。現時点では、保険料負担なしの疾病特約付き団信のなかでは、最強と言えるかもしれません。
●楽天銀行
「楽天銀行住宅ローン(金利選択型)」の全疾病特約付団体信用生命保険<特徴>
◎就業不能給付金:支払い基準日において、保障開始日以降に生じた病気やケガを原因とする所定の就業不能状態が15日を超えて継続していると医師によって診断された場合、毎月の返済額を保障
◎就業不能保険金:支払い基準日において、保障開始日以降に生じた病気やケガを原因とする所定の就業不能状態が1年を超えて継続したと医師によって診断された場合、住宅ローンの残金を全額弁済
◎余命6カ月以内と判断されたとき、住宅ローンの残金を全額弁済するリビング・ニーズ特約付き
◎免責期間なし、入院要件なし
●住信SBIネット銀行
「住信SBIネット銀行 ネット専用住宅ローン」の団信・全疾病保障<特徴>
◎精神障害を除く、すべての病気、ケガで就業不能になったら、月々の返済額を保障
◎就業不能状態が12カ月経過したら、住宅ローンの残高がゼロになる。ただし、8疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中、高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎)以外の場合は、入院によって就業不能になったときに保障の対象となる
◎女性の契約者には、これに加えて「ガン診断給付金特約」が無料で付帯する
●じぶん銀行
「じぶん銀行 住宅ローン」のがん50%団信+全疾病保障<特徴>
◎がん(所定の悪性新生物)と診断確定された場合、住宅ローン残高の50%を保障
◎死亡・所定の高度障害状態になった場合、医師の診断書などで保険加入者に余命6カ月以内と診断された場合、すべてのけが・病気(全疾病保障)で入院が継続180日以上となった場合(精神障害を除き、最初の31日は連続した入院であること)、住宅ローン残高を保障
もともと、ネット銀行の住宅ローン金利は、一般の銀行に比べて低い傾向にありますから、こうした新しい疾病特約付きの団信が登場したのは、魅力的です。
今後は、住宅ローンを借りる金融機関選びにおいて、これまでとは異なり、「金利+団信の中身」をチェックすることが重要になってきたと言えるでしょう。