ストレス

仲間を蹴落とすと会社の生産性は下がる!心理的安全性とは

【産業カウンセラーが解説】何が流行し廃れるか予測不可能な社会。企業が成功するために必要なのは、チームの「心理的安全性」のようです。これは米国Googleの高生産性チームに共通している特性でもあります。チームの心理的安全性を高めるために、ベースとなるコミュニケーションが「承認」です。不確実な時代に結果を出せる働き方をしていくための「心理的安全性」と「承認」の重要性について解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

Googleの高生産性チームに共通する特性……「心理的安全性」とは

発表する女性スタッフ

生産性の高いチームに共通するポイント、それは「心理的安全性」が高いこと

あなたが働いている職場の雰囲気は、「心理的安全性」が高いですか? 心理的安全性(psychological safety)とは、 周囲に悪く見られることを心配せず、自分の感情や意見を忌憚なく話し、ありのままに行動できることです。

「心理的安全性」は心理学で使われている言葉ですが、世界的に注目されるようになったのは2012年、米国 Google社の生産性向上計画の分析結果がきっかけです。同社が社内で生産性の高いチームの特性を多角的に分析したところ、共通する点が「心理的安全性」だったのだそうです。つまり、恥をかくことやを悪く評価されることを心配せずに、忌憚なく意見を言えるような雰囲気の中で働けることが、生産性向上の要因になっていたのです。

この分析結果には、当のGoogleだけでなく世界中が驚きました。なぜなら、企業とは利益を追求していく集団です。しかも、グローバル企業は世界中を相手に競争している組織です。そんな企業で働く人間には「他人を蹴落とすようなタフさや闘争心」がないと生き残れない――こうしたイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。しかし、世界1、2位を争うグローバル企業、あのGoogle社内の高生産性チームに共通していたのが「心理的安全性」であったのです。

予測不可能な社会だからこそ「心理的安全性」が成功を生む

 しかし、この分析結果は的を射ているように思えます。なぜなら、今、私たちが生きているのは「VUCA社会」すなわち、常に変動し不確実で複雑、あいまいさを特徴とする予測不可能な社会です。VUCA社会」については、「VUCA時代、活気ある後半生を目指す50代の3課題」で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。 

過去のパターンを分析しても、これから流行するものを予測できない。今流行しているものが、翌年には廃れるかもしれない。今、みんなが使っているプラットフォームが、来年には入れ替わるかもしれない――こうしたVUCA社会だからこそ、利益を生み出す働き手は「心理的安全性」を求めるのでしょう。何が成功のカギかどこに落とし穴があるのか予測がつかないからこそ、チームのメンバーと忌憚なく語り合い、協力して危険を回避し、よいアイディアを生み出せる関係でありたいと願うのではないでしょうか。

何気なく言ったこと、良かれと思ってやったことが上司やメンバーから嘲笑され、つるし上げられるような環境では、前例のないチャレンジなどできず、誰も当たり障りのないことしか言えません。こうした中で働いても斬新なアイディアなど出せるはずはなく、生産性は低下してしまうのです。

「心理的安全性」のためにメンバーができること……それは「承認」

ブレインストーミングをするスタッフ

どのような意見に対しても、まずはそれを出してくれたことに感謝し、貴重な意見として受け止めるのが「承認」

では、チームの「心理的安全性」を高めていくためには、何が必要なのでしょう? マネジメント側にできることには、企業理念やトップメッセージの明確化、企業のブランド価値の向上、衛生要因と動機づけ要因のバランシングなどたくさんのことがあります。「衛生要因と動機づけ要因」については、「入社して後悔する前に…ブラック企業の見分け方」でも解説しています。


そして、チーム・メンバーにできることの1つに、「承認」というコミュニケーションがあります。つまり、お互いを認め合うことです。「そんな簡単なこと……」と思うかもしれませんが、承認は与える側がその意味を理解して使わないと、相手に伝わらないコミュニケーションです。上っ面な感覚で使うと、自分も相手もしらけてしまいます。

真に他人を承認できる人は、アイディアを出してくれた人のモチベーションを下げるようなことは絶対にしません。「そんなのできっこないよ」「それ、誰が買うの?」「古いよ、そんなアイディア」といったようなことは言いません。クスッと鼻で笑ったり、適当な返事で受け流したりするようなこともしません。

「なるほど、そういうアイディアもあるよね」「ありがとう。それも書いておこう」と、意見を出してくれたことに感謝し、すべてを貴重な意見として受け取るのが承認です。そのうえで「他にも良い案があるかもしれないね」と、さらによいアイディアが出ることを期待して待ちます。1つ目は平凡なアイディアしか出せなかった人でも、2つ目、3つ目にはキラリと光る意見が出せるかもしれません。こうしたやりとりを見ると、周りの人も触発されて次々にアイディアを出してくれるようになります。

こうして、チームの中でたくさんブレインストーミングをしながら、みんなの力で斬新な商品やサービス、合理的な工程や手法を考えていきます。こうした承認のコミュニケーションをベースに心理的安全性は高まり、生産性も向上していくのです。

 心理的安全性の高い会社で働くと、会社や仕事を好きになる

 繰り返しますが、VUCA社会で成功するには、チームの「心理的安全性」が必要です。過去の成功パターンを踏襲できず、何が流行し廃れるか分からない時代には、少数派の意見やメンバーのささやかな感想こそが、思いがけない価値を生み出すかもしれないのです。そして、率直な意見や感想は心理的安全性が感じられてこそ表出できるものなのです。

 心理的安全性の高い環境で働いていると、会社やチームを好きになり、仕事へのやる気も高まっていきます。こうしてメンバーのモチベーションが向上すると、さらなる生産性向上が生み出されます。ぜひ、自社の「心理的安全性」を振り返り、メンバー同士の「承認」を増やしながら生産性向上を目指していきましょう。

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