「空気を読む文化」は世界的には珍しい日本の文化?
日本では、場の空気を読んで行動するのがあたり前。しかし、外国ではこの文化は通用しないことが多いのです
このように日本人にとってなじみのある「空気を読む文化」は、国際的に見ると珍しいものだと言われています。
たとえば、多民族や宗教が混在する欧米諸国では、地域や学校、職場の中に異なる文化や言語を持つ人々が生活するのがあたり前で、一つの文化だけの「空気」に頼って生きることは、困難であることが多いのです。
「空気を読む文化」の利点は、ニュアンスで意思の疎通ができること
日本のように、集団の文脈の共有性が高い文化を「ハイコンテクスト文化」と呼びます。「空気を読む文化」は、ハイコンテクスト文化に相当します。一方、欧米のように集団の文脈の共有性が低い文化は「ローコンテクスト文化」と呼ばれています。「空気を読む文化」(ハイコンテクスト文化)の利点は、他人の思惑や行動をニュアンスで理解できることです。
たとえば、日本の中では「“80年代の昭和”をイメージしています」といった言い方をしても、多くの人が「なるほど、そういうことか」と理解できます。これはハイコンテクスト文化ならではの利点。言葉で細かく説明や確認をしなくても、ニュアンスだけでなんとなく意思の疎通ができるのです。
「空気を読む文化」の難点は、言葉で確認する力が育ちにくいこと
一方で、「空気を読む文化」のなかでは、言葉で物事を説明する力や言葉で物事を確認する力は育ちにくくなってしまいます。たとえば、日本の多くの子どもたちは、地域の中でなじみの友だちと共に成長し、同じテレビややゲームの話題で会話します。そして、なじみの大人たちに見守られながら成長していきます。
こうした文化のなかで育つと、「あの子はこういう子」と周りに自然に理解してもらえるようになります。これは子どもにとって楽である一方、自分の意思を伝える力は育ちにくくなってしまいます。
異文化への理解が育ちにくいのも、「空気を読む文化」の難点
また、「空気を読む文化」のなかで生活していると、異文化への理解が育ちにくいという難点もあります。異文化を理解するには、自分と異なるライフスタイルや価値観を持つ人がいることを肌感覚で知り、多様性を前提にして物事を考えることが必要です。しかし、多様な文化を持つ人々と日常的にかかわる機会がないと、この意識は育ちにくくなります。その結果、異文化を偏見的に捉えたり、移住者を「よそ者」として排除する意識につながってしまうことがあります。
「空気を読む文化」ならではのストレス…「同調圧力」と「忖度」
忖度は、日本人の常識。しかし、忖度に失敗すると「配慮のできない人」と疑われてしまうことも
「同調圧力」とは、少数派の意見が無視され、多数派の意見に従わされるプレッシャーです。同じ文脈を共有する人の間では、しばしばその集団の中に「これをしない人は仲間ではない」などの偏った暗黙のルールが形成されます。すると、そのグループのメンバーは仲間から排除されないために、周りに合わせてやりたくないこともやらなければなりません。これは、とてもストレスフルなことです。
「忖度」とは、相手の気持ちを推し量って配慮すること。「空気を読む文化」では常に忖度が求められますが、いくら同じ文化を共有していても、他人の気持ちは理解できないことも多く、良かれと思ってしたことが迷惑になってしまうこともあります。「空気を読む文化」では忖度の失敗が重なると、「気が利かない人」と見なされてしまうことがあります。
忖度によるストレスについては「「忖度ストレス」に強くなり人間関係を良好に保つコツ」記事もあわせてご覧ください。
「空気に依存しない文化」に慣れ、人間の多様性を理解する
これからの日本は、グローバル化の進展、人口の減少により外国人労働者が増え、移民も増えていくでしょう。すると、日本に住む人の多様性が拡がります。したがって「空気を読む文化」だけに依存していると、地域や学校、職場での協働と信頼関係は成立しなくなってしまいます。こうしたなか、慣れていくべきなのが「空気に依存しない文化」すなわち「ローコンテクスト文化」です。集団の文脈に依存せず、互いに理解できないことを言葉で説明して理解を促すことです。とはいえ、言葉だけに依存しないことも大切。ジェスチャーや絵などの表現方法も駆使し、多様な表現方法で、意思疎通を行っていくことです。
そして何より大切なのは、人には個々の文化や特性を背景にした価値観があり、自分の価値観と合わないことがあることを認め、多様な価値観を尊重することです。
アフターコロナの日本では、多様な人々(年齢、性別、文化、境遇、出身国等の異なる人々)と共に学び、働く社会が確実に到来します。そのときになって慌てることのないよう、日頃からコミュニケーション・スキルを高め、多様性を尊重する思考に切り換えていきませんか?