損害保険/損害保険関連情報

大阪北部地震を機に知る、災害救助法の支援や地震保険

2018年6月18日、大阪府北部を震源とするマグニチュード6.1、最大震度6弱の地震が発生しました。住宅被害も多数発生、一部損壊となった住宅は3万棟を超えています(2018年7月18日現在)。被災された方は災害救助法の支援を受けられるほか、地震で屋根や壁、柱など住宅の主要構造部、または家財に一定の損害が生じた場合、地震保険金が請求できる可能性があります。今回の地震を機に、改めて確認しておきましょう。

清水 香

執筆者:清水 香

火災保険の選び方ガイド

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災害救助法適用で様々な支援が

災害救助法に基づき、大阪の各所に避難所が開設されている

災害救助法に基づき、大阪の各所に避難所が開設されている


大阪北部で発生した地震で被災されたみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。
地震による被災時には、公的な支援を受けられたり、加入している地震保険から保険金を受け取れたりする場合があります。今回の地震被害を踏まえ、改めて確認しておきましょう。

2018年6月18日の朝に発生した大阪府北部を震源とするマグニチュード6.1、最大震度6弱の地震では、人的被害のほか、住宅の被害も多数出ています。被害状況は徐々に明らかになっており、全壊10棟、半壊231棟、一部損壊となった住宅は3万4052棟にもおよんでいます(7月18日現在)。
今回の地震で、多くの方が生命または身体に危害を受け、または受けるおそれが生じているとして、大阪府は12 市1町に災害救助法の適用を決定しています。

【災害救助法が適用された市町】(適用日:2018年6月18日)
大阪市、豊中市、吹田市、高槻市、守口市、枚方市、茨木市、寝屋川市、箕面市、摂津市、四條畷市、交野市、三島郡島本町


出典:平成30年大阪府北部を震源とする地震にかかる災害救助法の適用について/大阪府報道発表資料より

災害救助法は、災害後、国や自治体が被災者に必要な救助を行うための法律です。適用されると、避難所が開設されたり、食料や飲料水、寝具などが給与されるなど、当座をしのぐために必要な支援が現物支給されます。救助を受ける際、被災者は事情や経済状況を問われることはなく、申請をする必要もありません。

【救助の内容】
避難所の設置、応急仮設住宅の供与
食品、飲料水の供与
被服、寝具等の給与
医療、助産
被災者の救出
住宅の応急修理
学用品の給与
埋葬
死体の捜索及び処理
住居又はその周辺の土石等の障害物の除去


出典:第1回災害救助事務の連携強化に関する協議の場 災害救助法に基づく救助事務について/内閣府(防災担当)提出資料より 


災害救助法による救助のひとつ「住宅の応急修理」は、住宅半壊の被害を受けて経済的に修理が困難だったり、大規模半壊で大がかりな修理が必要になったりした人を対象に、1世帯あたり58万4000円以内 で修理を受けられるものです(2018年度の額)。修理対象となるのは居室や炊事場、トイレなど日常生活に必要な最小限度の部分。修理は現物支給で行われ、金銭ではなく工事そのものを自治体が手配します。自ら修理せず、自治体に依頼しましょう。

出典:「災害救助法について」/防災情報のページ(内閣府)

【お役立ちコンテンツ】
災害救助法適用はどこまで?火災保険が必要な理由 

災害救助法が適用されると、各省庁から監督下にある企業等に対し、災害被災者の被災状況に応じて、きめ細かく弾力的・迅速な対応に努めるよう、さまざまな要請が出されることになります。たとえば金融庁管轄では今回、近畿財務局長・日本銀行大阪支店長の連名で、大阪府内の金融機関等に対し、「平成 30 年大阪府北部を震源とする地震にかかる災害に対する金融上の措置について」を発出しています。

・近畿財務局「平成30年大阪府北部を震源とする地震にかかる災害に対する金融上の措置について(平成30年6月18日現在)【大阪府下】」

その内容は、銀行にキャッシュカード等を失った被災者の預金の引き出しに柔軟に応じる、住宅ローンの返済猶予に応じる、あるいは保険会社に生命保険料や損害保険料の支払いを一定期間猶予するなどの要請です。これを受け、保険会社等は以下のような特別措置を実施をしています。

・日本損害保険協会「平成30年大阪府北部を震源とする地震に係る特別措置の実施について」
・生命保険協会「災害救助法適用地域の特別取扱いについて(大阪府)」
・少額短期保険協会「災害救助法が適用された地域において被害を受けられた皆様へ」

また、大阪府の防災ネットでは、様々な情報提供が行われています。

「避難所一覧」
「災害による被災者に対する府税の軽減措置等について」

今回の地震で被害を受けた住宅の所有者、入居者に対しては、住まい復旧や再建に関する相談、情報提供を無料で行う「被災者向け住まいの相談専用ダイヤル」も開設されています。相談できる内容は、住宅の損壊の状況や持ち家、借家の種別に応じた住まいの復旧・再建に関する相談、事業者情報の提供、補助金や融資情報の提供、住宅修理など災害に便乗した悪徳事業者に関する注意喚起等です。

・「被災者向け住まいの相談専用ダイヤル
電話番号 06-6944-7907 相談時間 9:00~17:30(月曜日から金曜日)

なお、一市町村での住宅全壊が10世帯以上などの場合、被災者生活再建支援法が適用され、被災世帯には最大300万円の支援金が給付されます。しかし、今回の被災は多くが一部損壊世帯で適用要件を満たしていません。6月27日の記者会見で大阪府の松井知事は、被災者生活再建支援法が適用されるのかを問う記者に対し「(適用)されませんね」と回答しています。

 

地震保険を契約しているなら保険金請求を

保険証券が無くても請求できる。速やかに保険会社に損害を受けた旨を連絡しよう

保険証券が無くても請求できる。速やかに保険会社に損害を受けた旨を連絡しよう


住宅や家財に、地震で一定以上の損害を受けたときは、地震保険の契約があれば保険金を請求できます。

保険金が支払われるのは、住宅の主要構造部(柱や壁、屋根や基礎など住宅の構造耐力上主要な部分)に、3%以上の損害を被ったとき。損害に応じ、4区分(全損・大半損・小半損・一部損)の保険金が支払われます。なお、2016年12月31日までに契約をした場合には、3区分(全損・半損・一部損)の保険金となりますのでご注意ください。
 
2017年1月以降、契約始期の損害認定は「4区分」~建物の場合(倒壊・火災)

2017年1月以降、契約始期の損害認定は「4区分」~建物の場合(倒壊・火災)



既に記したように、今回の地震では一部が損壊した住宅が多いため、支払われる地震保険金は小半損(保険金額の30%)や一部損(保険金額の5%)が多くなるかもしれません。被害がないと感じても、見た目にわかりにくい損害が生じている場合もあります。被害が少ない場合も遠慮せず、速やかに保険会社に連絡をして、損害調査をしてもらいましょう。
 家財は、生活用動産の損害(骨とう品・美術品などのぜいたく品は対象外)を積算して、10%以上の損害が出た場合が対象です。住宅そのものに損害が生じない場合でも、高層マンションなどでは激しい揺れにより、家財に損害が出る場合があります。家電品や家具、食器などの損害を確認してみましょう。

今回、地震で屋根が崩れ、そののちに降雨に見舞われたため、家財に水濡れ損害が生じたケースもあったようです。 地震後の降雨による損害は、地震が間接的な原因になっているとみなされるので、水濡れで使用不能になるなどの損害が家財に生じれば保険金が受け取れます。ただし地震発生の翌日から10日を経過した後に生じた損害は、地震との因果関係が明確でなくなるため保険金が支払われません。早いうちにブルーシートを掛けるなどして損害拡大を防ぐことが重要になります。

【お役立ちコンテンツ】
地震保険が支払われるのは?支払例、適用範囲 

地震保険は、火災保険のように修理費そのものをカバーするものではありません。多数の世帯が被害を受ける中で、被害状況に応じたざっくりとした一時金を速やかに支払うことをその趣旨としています。知っておいてください。

また、保険証券がなくても保険金請求は問題なくできます。中には、被災して地震保険の契約があるかどうか確認できない人もいるかもしれません。そこで災害救助法適用地域で被災した人は、日本損害保険協会の「自然災害等損保契約照会センター」で契約照会を受けられます。原則として被災者本人とその親族(配偶者・親・子・兄弟姉妹)が問い合わせできます。

・「自然災害等損保契約照会センター
フリーダイヤル 0120-501331 受付時間 9:15~17:00(土曜日・日曜日・祝日および12月30日~1月4日を除く)

 

被災地には悪徳業者が跋扈する。ご注意を!

地震保険では、専門知識と経験を持つ鑑定人が損害調査を行っている

地震保険では、専門知識と経験を持つ鑑定人が損害調査を行っている


地震で住宅被害を受けた後、依頼をしていないのに住宅の損害調査を行うコンサルタント業者や住宅修理業者が現れたら要注意です。強引かつ執拗に住宅修理契約を結ばせようとする、建物調査をして保険金請求を代行するかわりに支払われた地震保険金の3割などを報酬として支払わせる契約を結ぼうとするなど、いろいろな便乗商法があり、熊本地震のあとにも、国民生活センターに複数の相談が寄せられています。

独立行政法人 国民生活センター「ご用心 災害に便乗した悪徳商法」

地震保険は法律に基づく保険であり、補償内容はもちろん、保険金が支払われる時の調査方法も全社一律です。鑑定会社によって損害調査の結果が異なることのないよう、損害調査の方法はマニュアル化されており、木造、鉄骨、さらに細分化された建物の構造ごとに異なるチェックシートで鑑定されます。マニュアル化されているとはいえ、地震被害の鑑定には専門知識や経験が必要なので、一定の鑑定能力や経験のある鑑定人(建物や動産の保険価額の算出、損害額の鑑定、事故の原因・状況調査などを行う専門家)が手掛けることになっています。ですから、外部の「自称プロ」に報酬を支払ってまで建物調査を依頼する必要は、そもそもないわけです。

【お役立ちコンテンツ】
損害調査担当に訊く 火災保険事故のウラ側 その3 
損害調査マンに訊いた土砂災害のウラ側2 
火災保険に絡む、悪質勧誘・トラブルに注意! 

鑑定は通常、鑑定人と契約者が一緒に住宅を見て回り、損害箇所の確認をしていきます。しかしながら、住宅の損害調査は通常、建物の外観で判断されて損害区分が決定されるので、外観はさほどでないものの実は建物内部が大きな被害を受けているというケースがあるかもしれません。

ほかにも、時には損害箇所の見落としがあったり、契約者から損害の申告が漏れてしまうことがあるかもしれません。そのような場合には「二次鑑定」を行い、改めて認定しなおすこともできます。損害に見合った適切な損害区分を適用しなければ、正当な保険金を受け取ることができませんから、気になることがある場合には、保険会社に問い合わせてみましょう。

【お役立ちコンテンツ】
出る?出ない?地震保険金

また、損害認定などの保険金支払に関する苦情を申し立てたい場合には、常設の「そんぽADRセンター」でトラブルの解決を行っています。

・そんぽADRセンター
ナビダイヤル 0570-022808 受付時間 9:15~17:00(土曜日・日曜日・祝日および12月30日~1月4日を除く)

【お役立ちコンテンツ】
火災保険などに関して、苦情を申し出たいときは?

地震保険は契約者と保険会社の間の契約であり、損害の発生により保険金を支払うのは保険会社です。損害を受けたら、見ず知らずの第三者に委ねることなく、まずは保険会社や代理店に問い合わせましょう。

地震はいつ、どこで起きるかわからず、被災は決して他人事ではありません。突然の被災で混乱してしまいがちなとき、前もって押さえておいた知識は大きな支えとなり、力となります。ぜひこの機会に、改めて確認しておいてください。



【関連リンク】 
防災情報のページ(内閣府)大阪府北部を震源とする地震に係る被害状況について(第13報) 
大阪府「被災者向け住まいの相談専用ダイヤル」の開設について
大阪府「府民の方々への支援等について」
日本損害保険協会「平成30年大阪府北部を震源とする地震に係る特別措置の実施について」

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