前回「東日本大震災 損害調査の現場から その1」につづき、今回も東日本大震災で損害調査を担当されたFさんへのインタビューです。
 

分譲マンションの専用部分の損害は、共用部分で判定するのが基本

今震災では、一戸建てのみならずマンションでも被害が

今震災では、一戸建てのみならずマンションでも被害が

清水:宮城県仙台市は大都市ですから、分譲マンションも数多く建っていますよね。分譲マンションの損害はいかがでしたか?

Fさん:仙台市内で全損と認定された分譲マンションは少なくなかったようですね。

清水:分譲マンションは共用部分と専有部分で構成されています。建物が全損かどうかは、専有部分の損害の程度だけではなく、共用部分の損害も確認して判定するのですよね。

Fさん:そうです。共用部分、つまり躯体部分の損害です。それから専有部分、つまり室内の損害区分については、専有部分の損害に関わらず共用部分で認定された基準をもとに保険金が支払われることもあることを、ご存じないオーナーさんも少なからずいらっしゃいます。

清水:となると、室内の損害がさほどなかった場合でも、共用部分が全損と認定されていたら、専有部分も全損と認定されることがあるということですね。ただ、これからの建物の修繕や再建を考えるときには、問題はむしろ共用部分の損害ですよね。建物の躯体、つまり建物の骨組み。
 

管理組合が共用部分の地震保険に未加入の場合はどうなるの?

Fさん:そうです。分譲マンションの共用部分については、一般に管理組合が火災保険や地震保険の契約をしますが、火災保険には入っていても地震保険に入っていないケースが多いように感じます。

清水:負担が増える話は、なかなか話し合いのテーブルに上がりにくいのでしょうか?うーん。

Fさん:困ってしまうのは、管理組合が共用部分の地震保険に入っていないと、そもそも主要構造部の損害調査をすべき保険会社がいないということです。そうはいっても、先ほどお話したように専有部分の損害認定は共用部分の損害認定が基本になりますから、どうしても共用部分の損害調査が必要になるわけです。

清水:では、誰が損害調査に出向くことになるのですか?

Fさん:マンションの住民が自分の専有部分(室内)に地震保険の契約をしていれば、まずはその契約保険会社が専有部分の損害調査をします。そこで、最初に住民の専有部分の損害調査を行った保険会社が、その分譲マンションの共用部分についても損害認定をすることになります。また、専有部分の実際の損害を確認して、それをベースに認定区分を決めることもあるのですが、先ほどお話したように、専有部分の損害認定が一部損であっても共用部分の損害認定が半損なら専有部分も半損で支払うことになります。いずれにしろ、共用部分の損害調査はしなくてはなりません。

清水:保険契約がないにもかかわらず、共用部分の認定をしなければならないのは考えてみればおかしな話ですね。

Fさん:はい。それに共用部分の損害調査は、損害保険会社の損害調査担当社員だけで行うのは難しく、1級建築士や測量士に調査を依頼するのが通常です。

清水:そもそも、管理組合による地震保険契約は少ないかもとのお話でした。大きな損害が発生し建物修繕や再建を行う場合、共用部分に地震保険契約がなかったら修繕積立金の取り崩しだけでは不足するケースも出てきますよね。そうなると住民の追加負担が必要になるでしょうから、個々に住宅ローンを抱えた住民負担は相当重くなりますね。住民合意をスムーズするためにも、ある程度の資金的根拠がないと……。分譲マンションの管理組合では、最低限のリスクマネジメントとして地震保険契約は必須といえそうですね。
 

地震保険金をしっかり受け取るには

清水:保険金をしっかり受け取るためには、契約時にこれだけは最低限知っておいて欲しいな、と思ったことはありましたか?

Fさん:おもに建物に関してですが、火災保険金額を設定するとき建物の現在価値をきちんと評価して、正しく設定しておくことが大切だと思います。建物の価値に不足した火災保険金額ですと、最大でもその50%までしか設定できない地震保険は受け取れる保険金がさらに少なくなってしまいます。

清水:そもそも地震保険金だけで家が建たないのに、さらに少なければ生活再建にも支障が出てしまいますものね。それに、設定すべき火災保険金額は時間の経過や物価とともに変化しますから、保険金額は定期的な見直しも必須ですよね。

Fさん:ええ。たとえば、物価が安いころに1000万円で建てた建物の火災保険金額が1000万円なら、地震保険は500万円までです。仮に、物価の変動で今その建物を新たに建てたら2000万円かかるということになれば、再築価額基準の火災保険では保険金額2000万円でかけますから、地震保険も1000万円までかけられます。現時点で、きちんと建物を評価して、保険金額を設定することが大切ですね。


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