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東日本大震災 損害調査の現場から その2(2ページ目)

今回は、「東日本大震災 損害調査の現場から その2」。東日本大震災では、損害保険会社から多くの損害保険会社の社員や損害鑑定人が現地に赴き、損害調査がおこなわれました。前回に引き続き、損害調査の担当者Fさんにインタビュー。分譲マンションでの地震保険の損害認定状況や、保険金をしっかり受け取るためにどうしたらいいかなどを伺いました。

清水 香

執筆者:清水 香

火災保険の選び方ガイド

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地震が原因の火災は、火災保険の対象外

清水:保険金額が正しいかどうか以前の問題として、地震保険の契約をしているか、していないかが認識されていない可能性もあるのではないでしょうか。

Fさん:そうかもしれません。お客さまからの問い合わせの場面で、「地震保険、わが家は契約してなかったんですね……」とがっかりされる方もいます。

清水:この機会にわが家の火災保険証券を確認して、わからなければ代理店や保険会社に問い合わせておくことも必要ですね。他に気になったことはありますか?

Fさん:地震が原因で発生した火災は、火災保険の対象にはならず地震保険がないと補償されないのですが、それがあまり知られていないように思います。

清水:そうですか!地震が原因で火災になったときには、建物が倒壊したり道路が通れないなど通常通り消防車が来られないことがあります。そのため、地震火災は止められない恐ろしい被害といわれるので、知っておいていただきたいですね。ある程度の地震でも倒壊しないような丈夫な住宅でも、地震火災で損害を受ける可能性は残りますし。

Fさん:たくさんの方に、リスクを認識してほしいです。地震リスクは甘く見られているのではないでしょうか。「自分だけには来ない」と思いたい気持ちもよくわかるのですが……。

清水:ここは損保業界としても、知っていただくために相当な努力が必要でしょうね。そうしないと、個々の生活者の方はリスクに気づかず、自助努力が遅れてしまうかもしれません。住まいがなくなりローンが残る最悪の事態も起こりうることを、特に持家世帯の方には知っておいていただきたいですね。
 

今震災で、一定の液状化も地震保険の対象に

一定の液状化も地震保険の対象に

一定の液状化も地震保険の対象に

清水:今震災後、津波や液状化についての損害認定基準が追加されましたよね。

Fさん:そうですね。津波や液状化によるこれほどの被害は、業界としても今回初めて経験するものでした。そこで2011年の6月に新基準ができました。たとえば、千葉県浦安市の液状化による被害では、追加前の地震保険では一部損と認定された住宅が、新基準では半損以上となったものも多数となりました。

清水:震災後に設けられた基準が、今震災での被害にも適用されたんですね。

Fさん:そうです。また液状化被害が難しいのは、見た目だけではわからない場合があることですね。1度傾くと液状化では全損。見た目では分からないけれど、1度の傾きは深刻で、住めないほどの被害なんです。また、一戸建ての場合で、基礎の部分にひびが入っていて全損ということもあります。基礎を直すよりも建て直す方が安いこともありますから。

清水:やはり、細部にわたり、よく確認してもらうことが大切ですね。
 

罹災証明と地震保険の損害認定が違うのはなぜ?

 Fさん:こんな勘違いも多かったですね。国の損害認定(罹災証明書)と、国の制度である地震保険の損害認定が同じでない、という。そもそもリンクしていないのはおかしい、という声もあります。でも、罹災証明書と地震保険の損害認定では、みるポイントが違うんです。

清水:たしかに、地震保険の「全損」と罹災証明の「全壊」がイコールでないというのは、お客さまには理解しがたいかもしれません。

Fさん:ええ、そこはどうしてもわかりにくい。それをお客さまに伝えるのに大変苦労しているんです。

清水:罹災証明書と地震保険の損害認定に、何か一律の基準が設けられたら混乱を招かないようにも思いますね。
 

大震災における損害調査の簡素化が課題に

Fさん:お客さまに喜んでいただいたエピソードもたくさんありますよ。とにかく早く保険金を支払えるよう尽力してきた結果、かなりいいペースで保険金を支払えました。火災保険では一般的に高額の保険金支払いはどうしても時間がかかりがちなんですが、地震保険金の支払いは今回かなり速かったということで、この点はとても喜んでいただけましたね。

清水:被災後で様々な心の支えを失っているとき、明日の糧となるお金が入れば、お客様は大いに支えられるでしょうね。

Fさん:ただ今後、大きな地震が発生する可能性を考えますと、これからも保険金が迅速に支払われるためには、地震保険の補償内容や損害調査をこれまで以上にシンプルにすることは必要かもしれません。

清水:なるほど。そうかもしれません。大変貴重なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。


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