損害保険/損害保険関連情報

こんなときはもらえない?地震保険金

地震被害に対する有力な経済的備えの手段である、地震保険。ただし、地震保険は、その災害の特殊性から、他の保険とは異なる点もあります。どの保険もそうですが、ただ入ってさえいればよい、というものではありません。イザという時にきちんと役立てるために大切なことは、どのような場合に支払われ、どのような場合に支払われないのか、契約時にきちんと知っておくことです。以下、事例で解説していきます。

清水 香

執筆者:清水 香

火災保険の選び方ガイド

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東日本大震災以降、地震保険金はどんな時に支払われ、どんな時に支払われないのか、といったご質問をしばしばいただきました。以下、なかでも多数お受けしたご質問を、事例による一問一答で見ていきましょう。
 

支払い対象は「住宅用建物」「生活用家財」の“一定の損害”に限られる

地震による被害

地震保険金の支払い対象となるのは、「居住用建物」と「生活用家財」で、クルマは対象外

Q.1 地震の揺れによりカーポートの屋根が落ち、クルマが破損した
A.地震保険金の支払い対象となるのは、「居住用建物」と「生活用家財」です。ただしクルマは、生活用家財には含まれていません。したがって、地震による被害でクルマが破損しても、地震保険による支払いの対象にはなりません。

なお、カーポートは住宅部分に該当しますが、地震保険金の対象となるのは、住宅の主要構造部(基礎・柱・壁・はり・屋根など)に3%以上の損害が発生した場合です。したがって、カーポートのみが破損した場合は、地震保険金は支払われません。

こうした住宅の主要構造部に着目した損害認定は、地震の揺れによる被害についてです。津波の場合は建物がどの高さまで水に浸かったか、また液状化の場合は、建物がどれだけ沈下したか、あるいは傾いたかにより損害認定が行われます。

Q.2 100万円で購入した絵画が地震による火災で焼失した
A.地震保険金の支払い対象となる「生活用家財」には、1個または1組30万円を超える書画・骨董品、貴金属等は含まれていません。また、現金や預貯金通帳、有価証券なども含まれていません。したがって、100万円で購入した絵画が地震で損害を受けても、保険金は支払われません。

なお、東日本大震災では、現金や有価証券が入った金庫が津波により流されたといった被害も多数発生していますが、金庫そのものは家財に含まれるものの、中にあった現金や有価証券は前述のように保険金の支払い対象外です。

Q.3 事務所兼自宅の建物が地震の揺れで倒壊した
A.地震保険では「居住用建物」のほか、居住部分と事業用部分がある「店舗併用住宅」についても、契約をすることができます。ですから事務所兼自宅の建物が地震で倒壊した場合にも、保険金が支払われます。一方、工場や事務所専用建物といった、住居としては使用されない建物については、地震保険の契約をすることはできません。
 

揺れによる建物被害は「主要構造部分」に着目して損害調査が行われる

Q.4 住宅建物に損害はなかったが、塀が倒れた
A. Q.1のカーポートの例にあるように、地震の揺れによる被害については、建物の主要構造部の損害がどの程度かにより、保険金の支払いの有無、そして保険金の額が決まります。塀は主要構造部ではないですから、こうした部分だけに損害が生じ、主要構造部に損害がない場合には、保険金は支払われません。


Q.5 分譲マンションの柱や壁(共用部分)に損害が生じたが、専有部分に損害はなかった
A.分譲マンションの場合、共用部分についてはマンションの管理組合が火災保険とともに地震保険の契約をし、一方の専有部分については各世帯で火災保険とともに地震保険の契約をします。そして専有部分の建物部分の損害認定は、原則、個別に行いますが、建物の共用部分の損害認定(全損・半損・一部損のいずれか)と比較して、いずれか高い方の評価に準じて支払うしくみになっています。

この例のように、共用部分である柱や壁に3%以上の損害が生じた場合には、管理組合が契約している地震保険から保険金が支払われることになるため、専有部分の建物についても同様の損害認定となり、保険金が支払われることになります。

Q.6 分譲マンションの共用部分に損害はなかったが、専有部分で火災が発生、建物部分に損害が生じた
A.専有部分の建物部分については共用部分の損害認定に応じて保険金が支払われることになりますが、専有部分で共用部分を上回る損害が発生している場合、その部分の損害認定が行われます。

よって、共用部分に特に損害はなかったが、特定の専有部分で地震による火災が発生し大きな被害を被ったような場合には、その専有部分について損害を認定し、その認定に応じた保険金が支払われることになります。

Q.7 分譲マンション柱や壁は無事だったが、貯水槽に損害が発生、外壁のタイルがはがれる等の損害が生じた
A. 分譲マンションでも一戸建て住宅であっても、建物の揺れによる損害については、主要構造部分に着目して損害認定をする点に変わりはありません。貯水槽も建物の一部ですが、地震保険金の対象となるのは、Q.1でもみたように、住宅の主要構造部(柱・壁・はり・屋根など)に3%以上の損害が発生したケース。

したがって、貯水槽のみまた外壁のタイルがはがれただけといった場合は、地震保険金は支払われません。こうした場合は、住民が積み立ててきた修繕積立金、不足があれば住民の追加負担により対応することになります。

何にせよ、地震保険で発生したすべての損害をカバーできるわけではありませんし、トラブルは地震被害に限りません。分譲マンションにおいては、修繕積立金を手厚く積んでおくことが、まずは土台のリスク対策ということになるでしょう。

次のページは、食器棚の倒れなどの家財損害について解説します。
 
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