食と健康

カロリーゼロ甘味料は危険?天然甘味料と人工甘味料の違いと安全性

【管理栄養士が解説】さまざまなカロリーゼロ製品。砂糖の代わりに甘味料が使われています。ステビアや甘草などの「天然甘味料」をはじめ、「人工甘味料」、「糖アルコール」などを使用した「カロリーゼロ」は危険なのでしょうか? それぞれの特徴、安全性、危険性について解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

「カロリーゼロ飲料」「ノンカロリー食品」はなぜ可能? 安全性は?

カロリーゼロ甘味料は危険?天然甘味料と人工甘味料の違いと安全性

砂糖代わりに使用される人工甘味料。市販の製品でも「ノンカロリー」「カロリーゼロ」を謳うものは珍しくありません。気になるこれらの安全性は?

スーパーやコンビニなどでもよく見かける「ノンカロリー」「カロリーゼロ」表示のある食品・飲料。人気商品にもなると、砂糖を使用したオリジナル製品とカロリーゼロバージョンの同商品とが並べて販売されていることも珍しくありません。この場合、「カロリーゼロの方が太らないだろう」と、カロリーゼロ製品に手が伸びる人も少なくないでしょう。

しかし、考えてみてください。甘い飲み物なのに、カロリーゼロ。砂糖を使っていたら、カロリーはゼロにはならないはずです。一体、何を使ってあれだけの甘味をつけているのか説明できますか? あまり知られていませんが、砂糖の代わりに使われる甘味料にはさまざまな種類があります。それぞれの特徴と安全性について、わかりやすく解説します。

<目次>  

天然甘味料・人口甘味料・糖アルコールなどの「ノンカロリーシュガー」とは

カロリーゼロ商品は、甘味を感じる「非糖質系甘味料」や「糖アルコール」を砂糖の代わりに使用しています。砂糖が入っていなくても、しっかりとした甘みがあるのはそのためです。「非糖質系甘味料」には「天然甘味料」と「人工甘味料」があります。

■天然甘味料……ステビア、甘草、羅漢果など
ステビア、甘草、羅漢果といった植物から採取される甘味料があります。ステビアは1gあたり4kcalのエネルギーを持っていますが、甘草、羅漢果から採取される甘味料にはエネルギーがありません。ステビアは砂糖の300倍の甘さを持っているといわれていることから、1gあたりのエネルギー量は同じでも使用量が減るために低エネルギーが実現するといわれています。甘草、羅漢果も砂糖の10~500倍の甘さを持つといわれており、少量でしっかりとした甘味を感じることができます。

■人工甘味料……アスパルテーム・スクラロースなど
人工甘味料には、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリンがあります。いずれも食品衛生法に基づく指定添加物で、カロリーゼロ。利用方法に制限があります。詳しくは独立行政法人 農畜産業振興機構による「砂糖以外の甘味料について」をご覧ください。甘さにもそれぞれ独特の風味があり、甘さを加える以外にも苦味を抑える効果を持つものもあります。

■糖アルコール……キシリトール、エリスリトールなど
糖アルコールには、キシリトール、エリスリトールなどがあります。糖アルコールは「還元基を有する糖類にニッケル触媒を使用し、高温高圧下で水素を反応、還元して製造(接触還元)されたもので、ソルビトル(ソルビット)、マルヂトル、還元水飴のような鎖状多価アルコールの総称」といわれていますが、一言でざっくり表すならば「糖分とアルコールが化合してできた人工甘味料」といえるでしょう。人工甘味料ですがキシリトールなどは歯に優しいことも知られていて、ガムなどにも利用されていますね。

これらのうちカロリーを持たないものが、砂糖の代用品になる「ノンカロリーシュガー」として販売されているようです。
 

ノンカロリーシュガーは健康的か、危険か

ノンカロリーシュガーについての専門家の意見は、賛否両論があります。

一例を挙げると、「糖尿病などで低エネルギー食にする必要があるが甘いものが止められない患者さんに、少量使ってもらうのにはもってこいだ」といった肯定的な意見もあれば、「甘いものはクセになってしまう。低カロリーだと思ってたくさん食べてしまったり、次第に低カロリーのものではガマンできなくなり結局カロリーの高いものを食べてしまうようになる」といった否定的な意見もある、という具合です。

以前は、人工甘味料が「血糖値を上げない甘いもの」として期待を集めた時期もありましたが、最近では人工甘味料が腸内フローラに影響を与え、耐糖能異常を引き起こす可能性があるため、注意が必要といわれています。また、妊婦が人工甘味料を摂りすぎると生まれた子どもが肥満になりやすいというデータもあるようです。

これらのさまざまな意見や報告を受けて、筆者は患者様に「ノンカロリーシュガーは甘いものがどうしても食べたいとき、1日1本だけコーヒーに入れるくらいはOKです。ただし、いくらでもどうぞとは言えません」と説明しています。実際に、筆者も1日1杯くらいはノンカロリーシュガーを使ってコーヒーを飲んでいます。

人体への影響をさらに詳しく知りたい人は、「「櫻井 勝:摂取栄養素と高血糖 5. 人工甘味料と糖代謝、糖尿病59(1):33~35,2016」」(PDF)などが参考になると思います。
 

食品の「カロリーゼロ」は、実はカロリーゼロではない

また、「飲みすぎると酔う!? ノンアルコールビールの注意点」でノンアルコールと書かれていても、実際にはアルコールが少し含まれていることを知って驚かれた方もいたようですが、実はこれと同じことがカロリーに関してもいえます。

実は、食品のカロリーゼロもアルコールと同じように、厚生労働省「栄養表示基準に基づく栄養成分表示」で栄養成分の表示方法が厳格に定められています。この中で、食品100g中5kcal以下(飲料100ml中5kcal以下も可)であれば、「カロリーゼロ」と表示することが可能だと明記されています。

ただ、アルコールの場合、本当に弱い人はほんの少量でも酔ってしまう人がいますが、エネルギー源は数kcal摂りすぎたくらいで、体重増加につながったり体調不良を訴えたりすることは通常ありません。食品100g中5kcalがどのくらいかと考えてみると、例えば、チンゲン菜1束(100g)で8kcal程度なので、100g中5kcal程度であれば、誤差範囲と考えても差し支えありません。

ノンカロリーシュガーが普及して約10年。かなり一般に浸透してきたようには思いますが、まだまだ「食歴」として考えると短いです。現時点では安全性が確保されているからこそ、日本国内でも販売許可が出されているわけですが、食歴の長さと1回あたりの摂取量を考えると、「ノンカロリーだからいくら食べても大丈夫」とまで安心して、大量に使ってしまうのは危険な気もします。甘いものを欲する脳との折り合いをつけて、上手にゼロカロリーシュガーを利用したいものです。

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