「糖質ゼロ」で高血糖になる?

砂糖やデンプンから作った異性化糖を大量に消費する時代だから、極微量の人工甘味料を巧妙に組合わせて造るカロリーゼロのダイエット・ソフトドリンクの出番があるのでしょう。あとは安全性だけです……

砂糖やデンプンから作った異性化糖を大量に消費する時代だから、極微量の人工甘味料を巧妙に組合わせて造るカロリーゼロのダイエット・ソフトドリンクの出番があるのでしょう。あとは安全性だけです……

「糖質ゼロ」のソフトドリンクやダイエット食品で使われている人工甘味料が、逆に血糖値を上げて肥満や糖尿病のリスクを高めるというニュースが2014年9月19日の新聞各紙に載りました。英国の科学誌Natureのオンライン版のプレスリリースです。

米国や日本では国を挙げて「糖質ゼロ」を売り物にしている時代ですから、事実なら一大事です。この時はネット上でも話題になりましたが、改めてNature10月9日号に掲載された論文に関するコメントはほとんど見られません。

この論文はイスラエルのレホポトにあるワイツマン科学研究所の17人の研究チームによるものです。結論から言うと、私はこの論文を読んでも、いささか、納得したという気持にはなれませんでした。まず、この論文を簡略に紹介して、後に疑問点を挙げてみましょう。

人工甘味料は腸内細菌叢(そう)を変化させ、耐糖能異常を引き起こす

ノンカロリー人工甘味料は世界中で広く使われている食品添加物です。太らないように、あるいは減量のために日常的に使われています。安全で低カロリーのため有用だと見なされてきましたが、科学的データは少なく議論が続いています。

実験ではマウスをサッカリン、スクラロース、アスパルテームなどの人工甘味料を入れた水を飲ませた群と、ブドウ糖や砂糖、何も入れない水を飲ませた群に分けて比較しました。11週間後、耐糖能検査のブドウ糖負荷テストと腸内細菌叢(そう)分析を行った結果、人工甘味料群には明らかな耐糖能異常が認められました。つまり、ブドウ糖負荷後の血糖値が高かったのです。抗生物質を投与して腸内細菌に変化を与えると、4週間後には各群の耐糖能の差はなくなっていました。

また、人工甘味料で腸内細菌叢(そう)が変化して食物エネルギーの吸収が増えて肥満になりやすくなることも分かりました。このことをヒトで確認するため、あらかじめ身体計測、食事データが揃っていた非糖尿病者の男女381人(男性44%、女性56%、平均年齢43歳)で調べたところ、人工甘味料の摂取が多い人ほど、腹囲が大きく血糖値が高いなどのメタボリックシンドロームの傾向があることが分かっています。

そして、短期的な人工甘味料の摂取が耐糖能異常をもたらすか否かを調べるため、普段人工甘味料を摂取しない(あるいはこの1週間人工甘味料を含む食品を摂取してない)7人の健康ボランティア(男性5人、女性2人、年齢28~36歳)に人工甘味料を摂取してもらっています。

1週間の2日目から7日目まで、FDA(米国食品医薬品局)の1日許容量上限(5mg/体重kg)の市販サッカリン(後述)を1日3回に分けて毎日摂取してもらい、毎日ブドウ糖負荷テストを行いました。その結果7人中4人に有意な血糖上昇がみられ、残りの3人には血糖上昇がありませんでした。血糖上昇のグループには人工甘味料摂取前とは異なった腸内細菌の群が見られたのです。

マウスの実験でも、人工甘味料を与えたマウスの便を無菌マウスに移植したところ、6日後には耐糖能異常を示していました。

これらの結果は人工甘味料の摂取は腸内細菌を変化させて耐糖能異常を起こす可能性があることを示しており、肥満者や2型糖尿病の人が人工甘味料を大量に摂取することには再考が必要になるだろうと結論づけています。

参考:(artificial sweeteners inoluse glucose intolerance by altering the gut microbiota) Nature 514, 09 October 2014

この論文が意味する人工甘味料とは?

この実験ではサッカリン、スクラロース、アスパルテームを使いましたが、有害の可能性をいろいろと実験したのはサッカリンだけです。この論文のタイトルは「サッカリン入りの甘味料」と理解すべきです。著者達はいずれも同様だとしていますが、耐糖能異常のグラフを見る限りでは顕著なのはサッカリンだけで、アスパルテームはブドウ糖のみとほとんど同じで、スクラロースがその中間というところです。

また、最初の2群テスト(サッカリン、スクラロース、アスパルテームの3組とブドウ糖、砂糖、水のみの3組)に分けて比較した実験で与えたのは純度100%のサッカリン、スクラロース、アスパルテームではありませんでした。いずれも消費者用にブドウ糖に人工甘味料を少量加えた小袋入りや錠剤のものです。例えばサッカリンはイスラエルでSucrazitという商品名で、5%のサッカリンと95%のブドウ糖が成分です。スクラロースも5%、アスパルテームも4%のみで95%はブドウ糖の商品です。いずれもこれらを10%溶液として水に混ぜたものを摂取させました。対照群は水、10%ブドウ糖、10%砂糖の水溶液です。

問題は、これらの水溶液を等量与えたのではなく、マウスの自由にさせたようなのです。なんと、データが揃っていないのです。そのため、「水」の飲料は1日2ml位とコンスタントに少なかったのですが、なぜかマウスはサッカリン5%、ブドウ糖95%の甘い水溶液が一番のお気に入りで、3日目には「水」の10倍位飲んでいます。ブドウ糖は高カロリーですから、必然的にサッカリン水溶液のマウスの食餌量は3日目に1/2になってしまっています。この先のデータがありません。

これを11週間続ければ人工甘味料の投与量は許容量をけた違いにオーバーするでしょう。その上、餌が減れば食物繊維やタンパク質、難消化性の炭水化物、その他多くの腸内細菌に影響を及ぼす微量栄養素が不足するので腸内細菌叢(そう)に悪影響を与えるのは明らかです。それに加えて、10%水溶液のブドウ糖を多量に吸収するのですから耐糖能異常になるのは当然のように思えます。

また、アスパルテームは小腸で複数のアミノ酸とメタノールに分解して吸収され、大腸に届かないことは以前の論文で明らかになっていますし、スクラロースは消化されずに大腸を素通りするとされています。スクラロースは微生物には分解されないという論文があったはずです。

なお、糖アルコール(キシリトール、マルチトール、トレハロース等)のように天然に存在し、製品として人工的に合成されるような物は人工甘味料とは見なしません。
食品にない甘味成分を人工的に合成したものを人工甘味料または合成甘味料とすると、上記のサッカリンやアスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテーム等があげられます。危険性を指摘されてズルチンやチクロが食品添加物の指定を取り消された記憶のある人もいるでしょう。

ただ、サッカリンが腸内細菌叢を変化させることは1980年代には知られていましたから、糖尿病と腸内細菌の関わりが明らかになってきた今日、まずサッカリン離れから始めたらいかがでしょうか?また、米国では糖尿病者の甘味料として天然甘味料のステビアおよび砂糖にステビアを添加してカロリーを半減したものなどがトレンドになっています。砂糖が特に血糖値を上げる訳ではありませんが、こちらの方がなんとなく安心です。

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