住民税を払わないとどうなる? 給料の差し押さえも?
住民税を払わないとどうなるのでしょうか。対応の仕方などについて説明します。本題に入る前に、住民税を滞納している人はどれくらいいるものなのでしょうか。『令和2年度 地方税滞納等額等及び徴収率』というデータが総務省から発表されています。 このデータでは、通常、私たちが住民税と呼んでいる「道府県民税の所得割」と「市町村民税の所得割」についても触れられており、前者の徴収率は98.9%、後者の徴収率は99.0%と、ともに高い徴収率を誇っています。ところが滞納繰越分、つまり滞納と認定され全額回収できていない割合も「道府県民税の所得割」が35.8%の徴収率、「市町村民税の所得割」の徴収率が33.9%という数値となっています。このデータからは住民税の繰越滞納額がまだまだ残っていることがわかります。
つまり、滞納になる確率は少ないが、いったん滞納するとそこからなかなか抜け出せないのが住民税の厄介なところともいえます。
住民税はなぜ支払えなくなるのか
では、なぜ、住民税は支払えなくなるのでしょうか。それは、住民税が、前年の所得の状況に応じて本年の税額が決まり、支払うルールだからだといわれています(これを「前年課税」といいます)。たとえば、
- 前年は正社員として働いていたけど、今は非正規雇用になった
- 年収アップを図って会社を辞めて転職活動していたけど、転職先が決まらない
- フルタイムで働いていたが、結婚を機に専業主婦になった
- プロスポーツ選手として活躍していたが引退を余儀なくされた
「督促状」がきたらすぐに「分納」の相談をしよう
もちろん、だからといって、ただちに「そういう事情だったのですか。では仕方ないですね」と住民税を減額してくれるわけではありません。税務行政の根本は「課税の公平」といって、税を滞納している人と、正しくきちんと納めている人がいる場合に、税を滞納している人のほうが優遇されるというようなことは原則的にはありません。住民税を期限通りに納めていないと、その年の1月1日在住の市区町村から「督促状」という封筒が届くと思うのですが、これが届いていたら、いわゆる「イエローカード」が提示されている状況といっていいでしょう。
その「督促状」を持って、市区町村の税務課に出向き、分納、つまり「督促状どおり一括で納めることはできないので、なんとか分割で1回の金額を少ない方法」で折り合いをつけるという方法をまずは、おすすめしています。
住民税を滞納すると延滞金がかかる
ただし、分納するとデメリットがあります。それは「督促状」が届いている段階で本来の納付期限を過ぎていることが考えられるので、本来の納付期限から実際に納付したまでの日数、税金の納付が遅延したということになるのです。延滞金の計算をするのに、ポイントとなるのは各年の特例基準割合です。 その遅延分のペナルティが延滞金といわれているものです。なお、図に続く特例基準割合ですが、
- 令和3年1月1日から令和3年12月31日まで……1.5%
- 令和4年1月1日から令和4年12月31日まで……1.4%
- 納期限の翌日から1カ月を経過する日までの期間の延滞金の割合は特例基準割合+1%
- 納期限の翌日から1カ月を経過した日以降の期間の延滞金の割合は特例基準割合+7.3%
納期限の翌日から1カ月を経過する日までの期間の延滞金の割合は、
- 納期限の翌日から1カ月を経過する日までの期間の割合1.4%+1%=2.4%
- 納期限の翌日から1カ月を経過した日以降の期間の割合1.4%+7.3%=8.7%
住民税が減免されるケースもある
もちろん、「課税の公平」という観点から「このような状況であるならば致し方ない」と判断されることもないわけではありません。一般的にいう住民税は、所得割・均等割とに分けられるのですが、所得割・均等割ともに非課税であるケースとは以下の3ケースです。
- 生活保護法による生活扶助を受けている方
- 障害者・未成年者・寡婦またはひとり親(令和2年より創設)で、前年中の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合であれば年収204万4000円未満の場合がこれに該当します)
- 前年中の合計所得金額が市区町村の条例で定める額以下の方
前年中の合計所得金額が市区町村の条例で定める額についてですが、たとえば、東京都の条例では、
■控除対象配偶者または扶養親族がいる場合では合計所得金額が……
35万円×(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下
を指し
■控除対象配偶者または扶養親族がいない場合では合計所得金額が……
45万円以下
とされています。
よく給与所得者で他に収入がない場合、「年収103万円まで所得税がかからない、100万円以下なら所得税も住民税もかからない」などといわれることがあります。年収が100万円ちょうどの場合、給与所得控除額として55万円差し引くことができるので、結果、合計所得金額が45万円となるので、この条例に合致するということです。
保険や給与の差し押さえがかかることも
上記のような状況でないにもかかわらず「督促状」が来たのに放置していると、ある日突然、「保険が差し押さえられた」「住民税の未払いが勤務先にばれた」などということもあるのです。前者はその時点の解約金相当額が住民税の滞納部分に充当され、不足する部分について分納の手続きを進めるということになりますし、後者の場合、「○○という従業員さんがいますよね。この方、平成○○年から令和○○年まで住民税が未納になっているので、給与の一部を差し押さえさせていただきます」という通知が勤務先に来るのです。 このような通知が届くと、勤務先は入社前の事項とはいえ、ここ半年間くらいの給与台帳を持参して、その市区町村の税務課に出向くことになります。
通常、そのような状況になると何といってもその従業員の社会的信用が落ちることは避けられず、退社を余儀なくされ、さらに住民税の滞納額が増えるということにもつながりかねません。
住民税が前年の所得の状況によって課されることを理解し、「督促状」が届いた段階で分納の相談、これが住民税滞納対策の最初の一歩であると考えます。
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