輸入車の魅力がいっそう高まった一年
2017-2018 日本カー・オブ・ザ・イヤーはボルボXC60に。ちなみにイノベーション部門賞はトヨタプリウスPHV、エモーショナル部門賞はレクサスLC、スモールモビリティ部門賞はホンダN-BOX/N-BOXカスタムだった
ということは、つまり、2017-2018COTY本賞は輸入車だったということ。国産勢を押しのけて、輸入車がイチバンを獲得したのは、2013-2014のVWゴルフに次いで、二度目の快挙だった。
快挙を達成したのは、ボルボXC60。BMW5シリーズを抑えての、COTY受賞。XC90以降、意欲的なブランド改革を断行してきたボルボにとっては、嬉しいニュースであったにちがいない。
国産勢が弱かった、というわけでもない。一連の不祥事で、日産リーフやスバルXVといった有力モデルが賞レースを辞退したのは事実。けれども、トヨタカムリやレクサスLC、ホンダN-BOX 、スズキスイフトといった“粒選り”もあった。そして、確かに混戦ではあったのだ。
最終選考の得点で2位だったのがBMW5シリーズ。輸入車の得点と順位は1位 ボルボXC60(294点)2位 BMW5シリーズ(242点)7位 アルファロメオジュリア(89点)9位 シトロエンC3(35点)10位 VWティグアン
今年は違った。1位のボルボでも300点には届かなかったのだ。その代わり、6位のレクサスLCまでが100点以上を獲得した。つまりは、本命不在で混沌とした賞レースだったというわけだ。
そんななか、決して価格の安いモデルではなかったにも関わらず、ボルボとBMWが上位を独占した背景には、デザインから見映えクオリティ、性能、機能、環境性、安全性、先進性に至るまで、全てにおいて、XC60と5シリーズのクルマとしての純粋な完成度の高さを、多くの選考委員が評価した結果だったのだと思う。
リーフがいたら、結果は違ったものになったかも知れない。けれども、だからといって、ボルボやBMWの価値が変わるわけじゃない。要するに、輸入車の魅力がいっそう高まった一年だった、というわけである。
もうひとつ、SUVが賞を取ったという点にも注目して欲しい。SUVというと、アメリカや中国で人気というイメージが強かったが、ここ数年は日本やヨーロッパでも、フツウに好んで選ばれるカテゴリーにまで成長した。特にコンパクトSUVは世界中のマーケットで急速に市場拡大を続けている。SUVを選ぶことがフツウになってきた証拠に、SUVのクーペやSUVの超高級モデル、SUVのスーパーカー、といったキワモノも増えている。
かつてのセダンとクーペの関係がそうであったように、人とは違うクルマ=SUVという人が、世界中で増えつつあると言っていい。アルファロメオ ステルヴィオやマセラティ レヴァンテ、ランボルギーニ ウルスといったイタリア勢がSUVに注力しはじめたのも、当然なのだった。
クロスオーバー風のユニークなスタイルをもつコンパクトハッチバック、シトロエンC3。ちなみにプジョー・シトロエンとしては2008-2009(第29回)にシトロエンC5がインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している
VWのコンパクトSUV、ティグアン。2代目は生産モジュール“MQB”をSUVで初めて採用した。VWは2013-2014(第34回)でゴルフが輸入車で初めて日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞モデルとなっている
2017年の“スーパー”なベスト10
2017年、個人的には例年以上に多くの“スーパー”を経験した一年だった。海外の取材は27回にも及び、5週連続でヨーロッパ往復なんて無茶もあった。けれども、その甲斐もあって、多くの素晴らしい現場に立ち会うことができた。なかでも、2017年に海外で試乗したモデルのベスト10は以下の通り。ブガッティ シロン
世界最高のヘリテージを受け継ぐブガッティ、ヴェイロンの後継となるのがシロン。1500psの8LW16クワッドターボを搭載、0-100km/h加速2.4秒、最高速420km/h(リミッター作動)の2シーターハイパースポーツ。価格は240万ユーロ
ランボルギーニ ウラカンペルフォルマンテ
ダラーラ ストラダーレ
世界一のレーシングカーコンストラクター、ダラーラ初のロードモデルがこのストラダーレ。2.3Lエンジンを搭載、乾燥重量855kg、カーボン製センターモノコックに前後アルミニウム製のサブフレームというレイアウトを採用するスパルタンモデル
BMW M5
アルファロメオ ステルヴィオ クワドリフォリオ
マセラティ グラントゥーリズモ&グランカブリオ
BMW M760Li
アウディ A8
2017年の輸入車ベスト10
とはいえ、このベスト10じゃ、あまりに浮世離れし過ぎ、だとはもちろん承知している。スーパーカーとラグジュアリーカーが主戦場の筆者にとっては生命線であっても、ほとんどが夢物語。乗ったはいいけど、自分で買えるとはとうてい思っていない。では、現実的な路線で、今年のベスト10を選ぶとどうなるか。COTYのノミネートリストを基本に選んでみると……、BMW 5シリーズ
「アッパーミドルクラスサルーンのベンチマーク」となるBMW5シリーズ。部分自動運転を可能とした運転支援システムも備わり、価格は617万~1072万円。ステーションワゴン(ツーリング)やハイパフォーマンスモデルのM5(1703万円)も用意される
アルファロメオ ジュリア
メルセデス・ベンツ Eクラスオールテレイン
Eクラスの4番目のバリエーションとなる、クロスオーバーモデルのメルセデス・ベンツ E220d 4マチック オールテレイン。SUVテイストに仕立てられたスタイルに2L直4ディーゼルを搭載、最低地上高はワゴンより25mm高い140mmに。価格は861万円
ボルボのフラッグシップとなる90シリーズのクロスオーバーモデルがV90クロスカントリー。V90をベースに最低地上高を55mmアップ、SUVテイストのエクステリアデザインを採用した。価格は699万~829万円
人気のプレミアム・ミドルクラスSUV、ボルボXC60。歩行者・サイクリスト検知機能付きフルオートブレーキなど、16種類以上の安全・運転支援機能「インテリセーフ」を標準装備。レベル2相当の運転支援装備も備える。価格は599万~719万円
個性的なスタイルが魅力のクロスオーバーSUV、プジョー3008&5008。アドバンスドグリップコントロールなどを備え、FFながら悪路走破性が高められている。3008(354万~444万円)は5人乗り、5008(404万~469万円)は3列7人乗りとなる
2代目へと正常進化を果たしたプレミアムSUV、アウディQ5。ブランド中核モデルのA4と同コンセプトで成立、スポーティさとラグジュアリー性とを併せ持つ。ベーシックモデル(657万円)に加え、ハイパフォーマンスモデルのSQ5(887万円)も用意される
シトロエンの中核モデルとなるコンパクトハッチがC3。軽い接触からボディを守るエアバンプやクロスオーバー風スタイルなど個性的な仕立てに。室内はフランス車らしい居心地の良さをもつ。価格は216万~239万円
ゴルフなどにも採用される生産モジュール(MQB)をSUVに初めて用いた、VWティグアン。旧型より長く、幅広く、低くなり、よりスポーティなスタイルに。モバイルオンラインサービスをはじめ、インターネットへの接続性を高める機能も備わる。価格は637万~688万円
みなさんのベスト10は、どんなリストになるのでしょう? 年末年始、時間のあるときに、ちょっと頭を巡らせてみるのも面白いと思います。
良い年をお迎えください。今年一年、ありがとうございました。来年も引き続き、よろしくお願いします。