3ペダル+シフトレバー=悦楽のスティックシフター

ロータスエキシージSロードスター

ロータスエキシージSロードスター スパルタンなリアルスポーツ、ロータス エキシージS。外観はもちろん、室内も走りに特化したスパルタンな仕様に。ロードスターにも6MT(993.6万円)を用意する


クルマの進化を振り返ってみれば、動力性能のあくなき追求のみならず、快適性や安全性、環境性といった周辺性能や機能の強化にも常に大きな力が注がれてきた。そして、その過程において、テレビや電話の“ダイヤル”のように、今ではもっと便利で簡単で安楽な装置に取って代われ、“テンキー”しか知らない世代には、いったいどうやって扱っていいものなのか分からない仕組みもあったりするものだ。

3ペダルのシフトレバー付き変速機=マニュアルトランスミッション(MT車)などは、その際たるものだろう。ツウはあえてアメリカ英語でスティックシフト(ギアレバーの意味、転じてMT車のこと)などと呼んだりする。

おそらく、もう何年もしないうちに、ペダルが3つもあって真ん中に、にょっきりと棒(=スティック)まで出ているクルマに乗せられたら、“なんだこれは? いったいどうやって動かすんだ?”的パニックに陥ってしまう人が、続出する時代だってやってくるだろう。

すでに、ハイパワーのスーパーカークラス、例えばフェラーリやランボルギーニなどにおいては、3ペダルMTを選べる最新モデルがラインナップから消えて久しい。多くは2ペダルのセミMT(シングルクラッチシステムやデュアルクラッチシステム)に取って換わられた。理由はシンプルだ。安楽なうえに速いし、安全だから。

つまり、3ペダルを敢えて残す“合理的”な理由がもはやないのである。高額なスポーツカー領域で常識となりつつある事態が、そのほかのクラスに波及しないという合理的な理由もまたないだろう。あるとすれば、それは、「クルマってもんは、マニュアルで乗らなきゃツマラナイんだ」という、もうほとんど感傷ともいうべき気分、気持ちだけである。

裏を返せば、だからこそMTは官能的な乗り物であると言えそうだ。運転そのものが楽しめるクルマ。単なる移動手段ではなく、機械を操り習熟していくという自己鍛錬的もしくは自己成長的な楽しみが期待できるクルマ。MT車は、趣味のひとつとして、なるほど面白い存在である。

シボレーコルベット

アメリカンスポーツを代表するシボレーコルベット。ハイパフォーマンスモデルのZ51、世界最高峰のFRスポーツZ06をラインナップ。7MTはクーペにのみ用意されている


99%が2ペダル=AT限定で運転できるクルマ、などという自動車先進国は日本だけ(それだけ“先を行っている”とも言える)。だから、国産車で楽しい3ペダルMTを探すとなるとひと苦労だけれども、輸入車なら、まだ比較的、いろんなタイプのMT車を選ぶことができる。

ヨーロッパの多くの人々はMT車に好んで乗るし、アメリカにも根強い(=メーカーが決して無視できない数の)MT車ファンがいる。そのためのラインナップが、エントリーカー(スモール&コンパクト)やラグジュアリー・クラスで、今ならまだ充実しているからだ。

とはいえ、絶滅危惧種であることは間違いない。ヨーロッパで生きながらえたとしても、いつまでも日本のインポーターが3ペダルを導入してくれるとは限らない。選べる今のうちに、ぜひいちど、味わい深い輸入車の3ペダルMT車を試してみて欲しい。

BMW M4

BMWのハイパフォーマンスモデルを送り出すM社が仕立てた、セダンの3シリーズとクーペの4シリーズをベースとしたM3/M4。6MTモデルはM4のみに用意されている
 

欧州ではMTが常識、ベーシックスモール・クラス

ルノーカングー

導入以来、国内のルノー車販売の半数を占める人気のカングー。エントリーグレードのアクティフに5MT(215.8万円)モデルをラインナップ


ベーシックモデルは3ペダルに限る。今でもそれはヨーロッパの常識、なんだけれども、2ペダル化も急速に進んでいて、ほとんどのモデルで魅力的な2ペダルを選ぶことができるようになってきた。今後は恐らく急速に2ペダル化も進むことだろう。

要するに、今はまだ過渡期。3ペダルMT車の開発にもまだまだ力が入っているということ。だから、決してスポーティではない“フツウ”のエントリーモデルであるにも関わらず、MTに乗ってみれば実に楽しいと思えるクルマが、けっこうあったりする。
ルノールーテシア

ルノーの新デザインアイデンティティを採用したスタイリッシュなルーテシア。エントリーグレードのゼン(208万円)は5MTを搭載する


その代表格といえば、ルノールーテシア。カングーだってMTで乗れば楽しいのだから、ハッチバックでアシのいいルーテシアをMTで駆って楽しくないはずがない! 900CCダウンサイジングターボの力を、マニュアル操作でめいっぱい引き出す楽しみは、ハイパワーモデルにはない快感だ。


フォアット500

往年の名車をモチーフとした人気のコンパクトハッチ、フィアット500。0.9L直2ターボのツインエアを積むスポーティモデルSに5MTモデル(225.72万円)をラインナップ

ミニ ワン

2014年にモデルチェンジしたミニのエントリーモデルがワン。1.2L直3ターボを搭載する。6MTモデルの価格は226万円(6ATは240万円)


その他、このクラスでは、フィアット500やミニワンのMTもオススメ。両車とも、シャシーのセットがフツウのクルマに比べてちょっとスポーティ寄りなうえ、パワーがない分、思い切り回せる。つまり、シャシーが“勝っている”。だから、MTで頑張って乗ると、面白いのだ。

ドライブが最も楽しい、スモールスポーツ・クラス

VW ポロGTI

5ナンバーサイズのコンパクトハッチバック、VWポロ。そのスポーツモデルがポロGTI。192psの1.8L直4ターボを搭載、6MTモデルの価格は327.5万円


ベーシックシリーズで人気のモデルには、上級グレードとして高性能エンジンを載せたスポーツモデルが用意されていることが多い。そして、このクラスの性能であれば、まだまだ十分、MTで自由に操れる範囲だ。ある意味、ドライブしていて最も楽しいセグメントかもしれない。

定番は、やっと追加されたばかりのポロGTIとミニクーパーのSもしくはJCWだけれど、より上質なスポーティドライブが楽しめるアウディS1と、その真逆により過激でホットな走りが自慢のアバルト595コンペティチオーネを、あえて奨めてみたい。

アウディS1

高いクオリティと運動性能をもつコンパクトハッチ、A1のハイパフォーマンスモデルがS1/S1スポーツバック。231psの2L直噴ターボに6MTのみを組み合わせる。価格はS1が410万円、S1スポーツバックが430万円


S1は、豪快なパワーフィールもさることながら、アシの動き、マニュアルの操作フィールがとにかく軽快で、かつタッチが素晴らしく、それでいて安っぽいところが微塵もない。さすがプレミアムブランドの高級なエントリーモデルである。

アバルト595コンペティツィオーネ

現代に復活した名チューナー、アバルト。フィアット500をベースとしたののがこのアバルト500。1.4L直4ターボを搭載する。5MTモデルはベースグレード(279.72万円)と595コンペティツィオーネ(335.88万円)に用意された


アバルト595は、ひたすらファンだ。とにかくエンジンを掛けたとたん、じっとしていられない気分になる。血が騒ぐとはこのことだろう。小さな心臓がハナから大きめのビートをうち、ハードな乗り心地とクイックなハンドリングはドライバーを急かしてやまない。できることなら、血の気の多い方には、乗って欲しくないほど。

この2台に比べると、ポロやミニは定番だけあって、コストパフォーマンスに優れ、誰もが安心して楽しめる内容になっている。そのぶん、面白みには欠けるけれども、間違った選択になるリスクもほとんどないだろう。