ランドローバー/ランドローバー

美しいレンジローバー。ヴェラールはちょうどいいSUV

プレミアムSUVブランド、レンジローバーの4番目のモデルとして、レンジローバースポーツとイヴォークの中間に位置するヴェラール。なめらかな面と曲線を用い、無駄を省いた美しいスタイルに。ノルウェーで試乗した、その“究極のロードカー”の走りと“新たなラグジュアリーのあり方”とは……。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

走り出す前の“静寂”に新たなラグジュアリーを感じる

ランドローバー レンジローバー ヴェラール

レンジローバースポーツとイヴォークの中間に位置するプレミアムSUV。ボディサイズは全長4803mm×全幅2032mm×全高1665mm、ホイールベース2874mm

レンジローバーにとって4番目のモデルとなったヴェラール。今年(2017年)3月に、ロンドンのデザイン・ミュージアムにおいてワールドプレミア、ジュネーブショーでもお披露目された。ちょうどイヴォークとスポーツの間を埋めるサイズで、兄妹ブランド・ジャガーのSUV、Fペースとの共通項も多いモデルである。

ジュネーブへは主にスーパーカー見たさに訪れる。けれども、今年はド派手なスーパーカーたち以外で唯一、歩を停めて見入った新型車があった。それが、ヴェラールだった。

内外装のシンプルなデザイン表現にいたく感心した。筆者にしては珍しく、しばし佇んで見惚れた。最新でありつつも、レンジローバーの伝統的なスタイル、たとえば切れ上がったリアエンド、もしっかりと継承する。きらびやかで騒々しいショー会場にあって、それは一服の清涼剤ともいえる存在であった。
ランドローバー レンジローバー ヴェラール

インテリアはシンプルで美しい仕立てに、2つのタッチスクリーンを用いた最新インフォテインメントシステムを採用。リストバンド型アクティビティキーも用意する

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ラゲージフロアは通常673L、分割可倒式リアシートを倒せば最大1731Lとなる

そんなヴェラールの国際試乗会がノルウェーで開催されると聞き、喜び勇んで向かったのは言うまでもない。

試乗車は、デビュー後一年間のみ販売されるという、豪華仕様のファースト・エディションだった。ジャガー&ランドローバー車では既にお馴染みの、3L V6スーパーチャージャー(380馬力だからP380と呼ぶ)を積む。

エンジン始動前のインテリアデザインが筆者の“このクルマ欲しいぞスイッチ”を刺激した。最近のクルマのダッシュボードまわりというと、でっかいモニターが真ん中に居座って、そのまわりにはスイッチ類と多くの記号や文字が煩雑に埋め尽くしているというイメージが強い。もちろん、必要なものが多く、機能も増えたのだから仕方ないわけだけれども、それにしても煩わしい。

ところが。走り出す前のヴェラールのなかは、静寂そのもの。静まり返っている。その雰囲気に、新たなラグジュアリーのあり方を感じる。
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ファースト・エディション(1526万円)を含め33グレードをラインナップ。2Lディーゼルターボ(699万~1053万円)、250psの2Lターボ(715万~1069万円)と300psの2Lターボ(778万~1132万円)、3Lスーパーチャージド(908万~1262万円)が用意された


滑らかな走りは“背の高いGTカー”

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車高を自動調節するエアサスペンションも用意、テレインレスポンス2など最新デバイスも多数装着

助手席インプレッションから期待の試乗が始まった。ファースト・エディションには22インチという特大のタイヤ&ホイールがおごられている。見映えは、ホットウィールばりに格好いい。シンプルな面で構成される外観に、よく似合っている。とはいえさすがに、低速域や荒れた舗装路では途端に乗り心地が硬くなる。ホイールの金属的な存在感がはっきりと伝わってくる。ドライバー交代して分かったのだけれど、助手席にいるときのほうが硬く感じられた。

速度域が上がるにつれて、よくできたGTクーペのように、路面をなでるように走りはじめた。助手席からでも、そのすべすべとした乗り心地を感じることができる。
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ファースト・エディションには380ps/450Nmの3L V6スーパーチャージドを搭載。250ps/365Nmと300ps/400Nmという2種類の2L直4ターボ、180ps/430Nmの2L直4ディーゼルターボも用意される

3L V6スーパーチャージャーは、街中でもカントリーロードでも十分なパワー&トルクフィールで応えてくれたが、ここイッパツの加速フィールという点でモノ足りなかった。できれば、6気筒ディーゼルターボが欲しいところだが、日本仕様には残念ながら現時点でラインナップされていない。

70km/hを超えたあたりから、素晴らしいライドフィールを得た。助手席で感じた以上に、なめらかな走りだ。これはもう、背が高いだけのGTカーである。
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ボディの80%以上にアルミを用いた軽量モノコック構造を採用した。ランドローバーブランド初の格納式ドアハンドル(デプロイアブル・ドアハンドル)を採用

ワインディングロードでちょっと頑張って攻め込んでみると、トルクベクタリングなどの電子制御がよく効いていて、背の高い大きなクルマもよくぞここまで自在に動かせるものだと感心する。運転がとても上手くなったような気分だ。

最新電子制御でどんな悪路も思いのまま

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滑りやすい路面や下り坂でステアリング操作のみで一定速度を保ってくれるATPCなども備え、オフロードも万全。ヒル・ディセンド・コントロールも装備する

途中には、オフロードの設定もあった。細い瓦礫道を難なく上がっていく。ヴェラールには、ランドローバー&レンジローバーのお家芸というべき“テレインレスポンス2”が積まれている。路面環境に応じて車両制御を自動的に行なうもので、ダイヤルの切り替えひとつで、砂漠からぬかるんだ路面、滑り易い路面、舗装路まで、全てに対応するという優れもの。オートモードが備わっているのも“2”の特徴だ。

砂利を撒いたような滑り易いグラベル路面に遭遇した。ダイヤルをグラベル設定に。そうするだけで、ドライバーは特に路面状態に気を捕われることなく、ただフツウに走らせるだけでいい。小さな砂利が撒かれていて滑り易いと思われるにも関わらず、気にせずガンガン攻め込んでいけた。出力の制御に嫌みがなく、気持ちよく走り続ける。一瞬たりともヒヤヒヤしない。無敵のロードカーだ。

ランドローバーが主催するドライビングエクスペリエンスにも使われそうな、斜面走破やシーソー渡り、段違い平行棒走り、なども難なくこなした。尋常なくアシが動き、重量バランスにも優れているため、どんな悪路でも行けてしまえる。もちろん、最新の電子制御の助けを得て。
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最大渡河水深650mm(エアサス仕様)、アプローチアングル28.89度、デパーチャーアングル29.5度

究極のロードカーがまた一台、登場した。ボディサイズを気にしないというなら、そして荷物を沢山積みたいというなら兄貴分の二台から選ぶべきだが、日常性に優れ、卓越のGT性能をもつ、“ちょうどいい”SUVが欲しいというなら、この美しいヴェラールこそ本命とすべきだろう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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