内外装から軽量化まで、兄貴分の7シリーズゆずり

BMW523dラグジュアリー

ボディサイズは全長4945mm×全幅1870mm×全高1480mm、ホイールベース2975mm(写真は523dラグジュアリー)

7年ぶりのフルモデルチェンジとなったBMW5シリーズ。本作は第七世代となり、BMWツウを気取って型式名で呼べば、G30である(ちなみに、今後登場するワゴンボディのツーリングがG31、GTに相当するモデルがG32だと言われている。上海ショーで発表されたロングボディの5シリーズはG38だ)。

ドイツプレミアム御三家の流儀によれば、ジェネレーション・チェンジはフラッグシップサルーンに始まることになっている。メルセデス・ベンツならSクラス、アウディならA8、そしてBMWは7シリーズだ。これら最上級サルーンのフルモデルチェンジを手始めに、下位セグメントが順次、刷新される手はずとなっている。要するに、ひとつのジェネレーションにおける各モデルの新型の方向性は、最新のフラッグシップを見れば判る、というわけだ。

G30のルックスは、それゆえ、最新の7シリーズをそのまま小さくしたようなデザインとなっている。並べずにどちらかを言い当てることは、けっこう難しい(並ぶとその違いは歴然、というあたりが上手い)。インテリアのラグジュアリーな雰囲気もまた、兄貴分の7シリーズゆずりだ。

こう書くとよく、それじゃ7シリーズなんて要らないんじゃないか、という人がいらっしゃる。実際、乗ってみれば、たいがいの用途において、5シリーズで十分コトは足りているとは思う。

けれども、クラス(階級)感覚の未だ残るヨーロッパでは、5と7の間にはステータスという点で、埋め難いギャップがあるのもまた事実。最低でも、部長(5シリーズ)と役員(7シリーズ)くらいの差がある。つまり、乗る人の層が、5と7とではそもそも全く違っている、と言っていい。だから、よく似ていても全く問題なし、というか、似ているほうがかえって互いに好都合というわけなのだった。
BMW523dラグジュアリー

BMWらしいドライバー重視の非対称デザインなインテリア。タッチパネル機能付きワイド・コントロール・ディスプレイを採用、3Dカメラが手の動きを認識するジェスチャー・コントロールも備えた

そして、ここからが大事な点だけれども、影響を受けているのは、なにも内外装のデザインに限ったことではなかった。もっと重要なポイントとして、7シリーズと同様に、妥協なき軽量化を図っていることを挙げておく。

新たなプラットフォーム・アーキテクチャーを採用し、マルチマテリアル化(7シリーズのようにCFRPこそ使用されていないが、アルミニウムを筆頭に、高張力鋼板やマグネシウム、チタニウムなどを積極的に使用した)を推し進めることで、従来モデルに比べ100kg程度の軽量化を達成している。 

その他、リモート3Dビューや、ステアリング&レーン・コントロール・アシスト、クロス・トラフィック・ウォーニングといった最新装備もたくさん用意された。
BMW523dラグジュアリー

国内では523i(599万~743万円)、523d(698万~766万円)、530i(764万~789万円)、530e(778万~803万円)、540i(972万~986万円)、540i xドライブ(1003万~1017万円)をラインナップ予定。各グレードに豪華装備のラグジュアリーとスポーティなMスポーツが用意される

2017年の2月から日本でも発売されているが、現時点で購入可能なグレードは523d系(2L直4ディーゼルターボ)、530i系(2L直4ガソリンハイプレッシャーターボ)、540i系(3L直6ガソリンターボ)の全9グレード(4WDのxドライブ含む)で、今年中に523i系(2L直4ガソリンロープレッシャーターボ)と530e系(2L直4ガソリン+プラグインハイブリッド)、さらにはツーリング(ステーションワゴンモデル)の導入が予定されている。

本国にはこれらの他に、素晴らしい6気筒ディーゼルターボを積んだ530dや、M5顔負けの性能を誇るM550i、さらにはクワッド(=四つ)ターボのM550dなども存在するが、いずれも魅力的なグレードながら、日本導入の予定は今のところない。また、M5に関しては秋のフランクフルトショーデビューが期待される。
BMW523dラグジュアリー

ベーシックグレードに加え、エクステリアをクロームパーツでエレガントし仕立てたラグジュアリー、エアロパーツやスポーツサスペンション等を備えたスポーティなMスポーツが用意された


このクラスの新たなスタンダード”サルーンに

BMW523dラグジュアリー

2つのステレオカメラと5つのミリ波レーダーを用いた運転支援システムを搭載。先行車追従機能などをもつ、クルーズコントロールや車線中央のキープをアシストする機能など、部分自動運転を可能とした。ディスプレイ・キーを用い車外からの操作で、駐車を行うことも可能に

現時点で、筆者が日本で試し終えた5シリーズは、523dラグジュアリーと、540iMスポーツの2グレードのみ。他に530dラグジュアリーをポルトガルで試乗している。そんなごく限られたテストの範疇で新型5シリーズを語ってもいいということであれば、それは「このクラスの新たなスタンダード足りうる」と極めてポジティヴなものになる。

どのグレードにも共通する美点から記そう。まず、旧型からその場で乗り換えずとも誰もが“あっ”と思ってしまうほどに、クルマが軽い。とはいっても、落ち着きを失うようなレベルではなく、前後タイヤからの情報は的確にドライバーへと伝わってくるし、さらに言うと、動きの反応が自然でダイレクトであるぶん、よけいに軽さを気持ちよく感じられる。

むやみな軽量化ではなく、適材適所に必要な軽さの部材を使って組み合わせることで得られる、総合力の成果というべきだろう。マルチマテリアル化の妙味は、こんなところに現れるものなのだ。それゆえ、素材のキャラクターをよく知り、活用場所と接合方法を吟味して使うという、豊富な経験と綿密な計算が必要になってくる。BMWに限らず、ドイツブランドが秀でるポイントのひとつだ。

運転支援の各種システムも、制御の良さが光った。自動運転への道筋、というわけで、各社ともドライバー支援システムの充実を計っているが、“できない”と“できる”だけではなく、“できる”と“気持ちよく使える”の間にもまた、大きな開きがあると思ったほうがいい。

“装備されています”だけでは、もはや不十分な時代になったというわけで、その作動がドライバーにより自然に感じられるほうがよく、5シリーズのそれは、クルーズコントロールによる追従やレーンキープといった標準的な支援システムの作動ひとつをとっても、気持ちよく使える、つまり実用に耐えるレベルに達していたと言っていい。

その他、共通の美点としては、静粛性の高さや、素直なハンドリング、高速域での安定感など、挙げだすとキリが無いほどで、いちいち、よくできているなぁ、と嘆息する。どこか欠点を見つけようとしても、たとえばそれは、523dの街中速度域における多少の乗り心地の悪化程度のもので、目くじら立てて言い募るほどの欠点とは言えない。
BMW523dラグジュアリー

523iに搭載される2L直4ターボは184ps/290Nmを、530iは252ps/350Nmを発生。523dは190ps/400Nmの2Lディーゼルターボを、540iは340ps/450Nmの3L直6ターボを積む。いずれも8ATが組み合わせられる

もっとも、BMWに限らず、最近のドイツ勢の新型車に乗ってみて「以前とちょっと変わってきたな」と、多少残念に思うこともあった。それは、540iのデキがすさまじく良かったのに対して、乗り比べると523dは上出来レベルに留まってしまったという事実だ。

要するに、高いクルマのほうが歴然として素晴らしい。そういえば、M・ベンツEクラスも、E400がすばらしく良かった。比べると、他のグレードは値段なりに思えてしまう。高いクルマのほうが良くて当然、とは言うものの、以前の欧州車はというと、たとえ最廉価グレードであってもそれが最も素晴らしいと思えるモデルなんてザラにあったものだ。

5シリーズやEクラスだって、昔はそうだった。安いグレードでも、十分にそのモデルの本質を体験することができたものだ。けれども、今では、価格どおりの差がちゃんとできてしまっている。ビジネスとして、それは当たり前といえば当たり前なのだけれども、ちょっと寂しい気にもなってしまった。
BMW523dラグジュアリー

後輪を約60km/h未満では前輪と逆位相に、それ以上では同位相に操舵するインテグレイテッド・アクティブ・ステアリングを装着。取り回しや俊敏性を高め、ドライビング・ダイナミクスを向上させてくれる


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