一定量を簡単に出せる新機構!
M.モゥブレィ ポンプ式ステインリムーバー500です。大容量もさることながら、キャップの開閉で中身を出していた従来品の使用感を飛躍的に向上させた、なかなかのアイデア品です。税込価格3780円(R&D)
シューケアで汚れを落とす際に欠かせないのがクリーナー。使うのを躊躇っている人も中にはいるようですが、「擦らない」「水分で汚れを浮かせて取る」的なちょっとしたコツさえ覚えてしまえば、決して怖い存在ではありません。
今日では、成分がマイルドなものや強力なものなど、各社から様々なものが出ています。そのオリジネーターと言えるのが、R&Dの「M.モゥブレィ ステインリムーバー」でしょう。その進化バージョンが、今回ご紹介する「ポンプ式」です。
一番上の部分を布と一緒にプッシュすると、ステインリムーバーが出て来る仕掛けです。布無しで素手のまま押すと、液体がパッと飛び出て来るのでその点はどうかご注意を。取り外しも可能で、キャップ式の500ml入りのものがリフィルとして使えます。
天井にあるボタンをコットンパフなどの汚れ取り用の布で下にプッシュすると、一定量(約1cc)のステインリムーバーが出てくる仕掛けです。油性ワックスを用いる際、布に水を染み込ませるのに重宝するハンドラップ(本来は手に適量の消毒液を付けるための理化学機器)と似た設計です。
ポンプ式の登場で何より助かるのは、片手で液体を出せるようになったことです。従来のシンプルなキャップ式は、布にステインリムーバーを浸す際、片手にそのボトル、もう片方の手に布と半ば必然的に両手を用いていた訳ですが、特に500mlのものは一般的な飲料のペットボトル並みの結構な大きさ。
使い始めの時は重さもそれなりにあり、片手で持つにはちょっと工夫が必要だったので、これは何気に大きな改善と言えるでしょう。
そして当然ながら、常に一定量かつ適量を手早く出せることも、ポンプ式の利点だと思います。料理での「醤油小さじ1杯」などと同様に、「ここの部分は1プッシュで」などと使用量を定量化できることは、お手入れを失敗しない絶好の近道。微調整や余計に考える必要のない分、時間の短縮にも繋がること確実です。
ちなみにこのステインリムーバー、私・飯野もブランド名が現行のものになる遥か以前、約30年前から愛用していますが、今やポンプ式はもちろん、500mlの超・大容量タイプが出ていることに、時の流れを感じずにはいられません。60ml入りの小瓶のモノしか売っていなかったあの頃に、この大きさのこのタイプがあったなら……
「最後の一拭き」の最終兵器!
エゾシカグローブクロスはその名の通り北海道にいる野生のエゾシカの革を用いたお手入れ用品。人間と自然との共生を、靴のお手入れを通じて考えさせてくれる商品でもあります。写真は黒ですが他に茶色のモノもあります。税込価格2700円(R&D)
あなたは、靴のお手入れの「最後のひと拭き」に何を用いていますか? 油性ワックスで光らせる際のコットンフランネルの布をそのまま用いたり、ナイロンストッキングを丸めたものだったり、あるいは山羊毛のブラシを軽く掛けたり……
そんな仕上げ用のアイテムに、また一つ面白いものが加わりました。エゾシカグローブクロス、つまり鹿革を用いたミトン状の拭き取り布です。牛革に比べ繊維の隙間が細かく存在するため、鹿革は丈夫な割に柔らかく伸縮性に富むのが特徴。
冬場の手袋に用いるだけでなく、自動車やメガネのガラス拭きである通称「セーム革」にするなど、以前から別分野でのお手入れ用品としても存在しましたが、それを靴用に特化させた訳です。
ご覧のとおりエゾシカの革は起毛させています。牛革のスエードやヌバックに比べ毛羽立ちが明らかに細かいだけでなく、若干のしっとりさも感じられるのが特徴。油性ワックスを用いた鏡面磨きの仕上げなどには打ってつけです。
ポイントは当然、北海道に生息する「野生の」エゾシカの革を用いていること。ご存知の方も多いと思いますが、彼の地のエゾジカは今、様々な理由で数が多くなり過ぎてしまい、狩猟以上に止む無く駆除までせざるを得ない状況です。また、それを通じて発生する肉や骨、それに革をいかに有効に活用するかも大きな課題になっています。
とは言え、革に限って申し上げると、野生であるが故の厚みや傷などの品質の個体差、更には狩猟・駆除の際の銃痕なども影響し、大判で用いたいモノ、具体的には靴や鞄にはなかなか上手く展開できていないのが実情です。逆に言うと、あくまで汚れるのが前提のお手入れ用品として起毛させて用いる、しかも手袋を一回り大きくしたこのサイズであるなら活用度合いは高い! 良いところに目を付けたなぁと思います。
もう一方の面はポリエステルボアです。こちらは油性ワックスの1つ前の段階、つまり乳化性クリームを用いた際の仕上げに有効ではないかと。摩擦により発生する僅かな静電気で、余分なクリームが布に吸い付いて行くからです。
これで靴をひと拭きすると、何というのか、艶のピントがハッキリする感覚が得られます。拭き跡もほとんど残らないのが不思議で、これこそ繊維の隙間の細かさの証明なのかも?裏面はポリエステルボアなので、こちらは例えば乳化性クリームを用いた後の仕上げを、まず行うのに向いているかも?
そして、油性ワックスでつま先やかかとを磨いた後で、エゾシカの面で全体的に軽く拭いてお手入れ終了、的な進行が向いているかもしれません。
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