年末調整を受ける会社は1カ所のみ
2か所以上の会社で働いている方については、年末調整は1か所でしか受けられません。年末調整とは、その会社でのみ働いていることを前提に、会社が社員に代わって確定申告と同じように所得税の計算を行ってくれる制度です。
会社は、自社で支払った給料については簡単に集計できても、他社で支払った給料まで合算して計算するとなると、非常に手間がかかります。さすがに会社もそこまでは面倒を見きれないので、2か所以上で給料をもらっている方については、自分で合算して確定申告してくださいということになっています。
それでは、どの会社で年末調整を受けることになるのでしょうか?
それは、入社時に「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書」という書類を提出した会社になります。扶養控除申告書などと呼ばれることもあるこの書類、本来は1か所の会社にのみ提出しなければならない書類です。
扶養控除申告書は、配偶者控除などの控除を受けるために書く書類です。2か所に提出してしまうと、控除が二重に適用されてしまうので、1か所でのみ提出して、あとは各自で他社分を合算して確定申告してください、ということになっています。
会社としても、扶養控除申告書の提出を受けることで、「この人は年末調整の対象なのだ」という判断をしています。
しかし、中にはアルバイト先などで、入社時の必須書類として、言われるがままに副業先にも扶養控除申告書を提出していることがあるかもしれません。(会社の担当者が年末調整の制度を理解して、副業かどうかを確認してくれればよいのですが)。この場合、年末調整の際には、副業であることを伝えて年末調整の対象から外してもらいましょう。
年末調整は副業していても必ず受けなければならない
副業をしている方の中には、「自分は確定申告する予定があるから、年末調整から外してください」と会社に申し出る方もいらっしゃいます。
しかし、会社としては、扶養控除申告書の提出をされている以上は、年末調整の対象にしなければなりません。確定申告をするつもりであれば、年末調整の際には何も提出しなければよいのです。そうすれば、各種控除を受けない状態で、年末調整をしてもらえるはずです。(厳密には、給与から天引きされている社会保険料控除と、誰でも受けられる基礎控除の2種類だけは、年末調整を受ける全員に適用されます)。
生命保険料控除などは、年末調整で扶養控除申告書に色々記入するよりも、確定申告書に記入したほうが楽かもしれません。
ただし、税務署は計算間違いで金額が過少になっていても、基本的に指摘してくれることはありません。間違いを防ぐという意味では、確定申告をする場合であっても、年末調整で適用を受けておいた方がよいでしょう。
副業の額面合計が20万円を超えていれば確定申告しよう
確定申告では、「年末調整を受けた会社での源泉徴収票」と「副業の源泉徴収票」の2つが必要となります。
源泉徴収票には、給与の額面や、年末調整で受けた各種控除の金額が記載されています。すべての源泉徴収票を合算すれば、各社の額面を合算した総額が分かります。また、年末調整を受けた会社で適用された控除の金額も、源泉徴収票から分かります。
あとは、年末調整で受けていない控除や、そもそも年末調整では対象にならない控除(医療費控除やふるさと納税の控除など)に関する書類を準備すれば、あとは確定申告書を作るだけです。確定申告といっても、給料以外に所得がなければ、それほど難しいものではありません。
ちなみに、制度上、年末調整を受けていない会社からの給料の年間額面の合計(交通費除く)が20万円以下であれば確定申告しなくてもよいですよ、ということになっています。ただし、この場合でも、副業で天引きされた所得税の金額次第では、多少の税金が戻ってくることがあるかもしれません。確定申告の手間を惜しまなければ、副業の給料が20万円以下であっても、確定申告してみるのもよいかもしれません。
逆にいえば、副業をしている場合は、副業の額面合計が20万円を超えていれば確定申告の義務が発生します。ただし、この場合でも計算した結果、税金の還付がある場合は、確定申告の義務はなくなります。
納税が出れば義務、還付であれば権利といったところでしょうか?いずれにしても、副業の額面合計が20万円を超えていれば確定申告書を提出することになりそうですね。