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ふるさと納税の限度額とは?どうやって計算する?

今では社会に浸透したふるさと納税。この制度を利用する方にとって、返礼品と並んで気になるのが、「年間いくらまでふるさと納税を使えるのか」ということです。今回は簡単な例を使いながら、ふるさと納税の限度額を計算してみましょう。

渋田 貴正

執筆者:渋田 貴正

企業経営のサポートガイド

ふるさと納税の限度額とは?

まずはふるさと納税の仕組みを簡単におさらいしましょう。

本来、住民税はお住まいの自治体に納税します。しかし、ふるさと納税を行うことで、その分お住まいの自治体への住民税や所得税を減らすことができます。結果的に、お住まいの自治体から、ふるさと納税を行った自治体に税金が移転したことになります。

しかし、このふるさと納税を無制限に認めれば、お住まいの自治体が住民税を徴収できなくなるおそれがあります。ごみ収集など行政サービスの対価として、住民税はお住まいの自治体に支払うのが原則です。そのため、ふるさと納税の金額に限度額を設定しているのです。

とはいえ、厳密にいえば、ふるさと納税自体はいくら行っても問題ありません。限度額が5万円の人が10万円のふるさと納税を行っても、相手の自治体はありがたく受け取ってくれますし、返礼品ももらえます。ただし、限度額をオーバーした分については、所得税や住民税からの控除を受けられません。返礼品といってもふるさと納税額の3割程度が目安となっていますから、返礼品のためにふるさと納税をしても、限度額を超えた分については高い買い物をしたのと同じようなことになってしまいます。そのため、ふるさと納税をする場合、ほとんどの方は限度額を意識して、その範囲内に収めています。

限度額を簡単に計算してみた

多くのふるさと納税関連のサイトには、限度額の早見表が掲載されています。とはいっても、自分の税金に関わること。仕組みくらいは簡単に把握しておきたいものです。数式が少々入ってきますが、お付き合いください。

ふるさと納税は次の3つの控除で成り立っています(一応数式も書いてありますが、気にしなくても大丈夫です)。

1.所得税からの控除
= (ふるさと納税額-2,000円)×所得税の税率

2.住民税からの控除(基本分)

= (ふるさと納税額-2,000円)×10%

3.住民税からの控除(特例分)
=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%-所得税の税率)と(住民税所得割額)×20%の少ない方

このうち、限度額を決めているのは、3の特例分です。特例分の計算に必要なのは、自分に適用される「所得税の税率」「住民税所得割額」です。つまり、この2点が分かれば限度額は計算できます。

実際の例で算出してみると……

それでは年収600万円で独身の会社員Aさんを例に限度額を計算してみましょう。

まずは所得税の税率を見てみます。

給与所得控除は600万円の場合174万円なので、給与所得は426万円です。社会保険料が大体年収の15%程度として90万円、基礎控除(誰でも必ず所得から控除できる金額のことです)が38万円とすると、所得税が課税される金額は、(426万円-90万円-38万円)=298万円です。この場合の税率は10%となります。
給与所得控除

参考:給与所得控除の金額



所得税の税率

参考:所得税の税率



次に住民税所得割額です。

税率は通常10%で一定です。住民税の場合、基礎控除が33万円なので、住民税所得割額は(426万円-90万円-33万円)×10%=30万3,000円です。

ここからは、ふるさと納税の限度額計算の数式に当てはめます。
詳細な計算式は省きますが、

ふるさと納税の限度額=住民税所得割額×20%÷(90%-所得税率)

です。

Aさんの場合は、ふるさと納税の限度額=30万3,000円×20%÷(90%-10%)=約7万6,000円がふるさと納税の限度額となります(実際には復興特別所得税という税率が加算されているので、これより1,000円程度は限度額が増えますが、多くのふるさと納税の1口あたりの金額の単位が1万円であることを考えると、あまり影響はないでしょう)。

その年の所得税の税率や住民税所得割額は、最終的な年収が分からないと計算できません。また、扶養している家族がいたり、生命保険に入っていたりする場合などは所得控除の金額が増えますので、その分住民税所得割額は少なくなります。その結果、ふるさと納税の限度額も小さくなってしまいます。

住民税所得割額については、「大体去年の年収と変わらない」という場合には、自治体や会社から毎年6月ごろに受け取る住民税の計算の明細に所得割額が記載されていますので、その金額を使ってもいいでしょう。また、所得税の税率も大体の見込み年収から計算することができます。

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