かわいい!&こぢんまり!! イタリアが凝縮した中世の古都モデナ
ローマ時代のバシリカを思わせるモデナ大聖堂とトッレ・チヴィカ(市民の塔)。いずれもロマネスク様式の傑作で、重厚でシンプルながら味わい深いデザインで知られる
■モデナ旧市街(Googleマップ/航空写真)
■モデナの見所(同上/世界遺産&見所マップ)
欧州の古都や植民都市の中央には大聖堂(カテドラル。ドゥオーモ)と広場(セントラルパーク。ピアッツァ)があるものだが、モデナも同じ。ほぼ中央に大聖堂と広場があり、これに周辺のいくつかの建物を加えて世界遺産「モデナ大聖堂、トッレ・チヴィカ及びピアッツァ・グランデ」が構成されている。世界遺産の面積もたった1.2haで、野球のグラウンド程度しかない(上のGoogleマップ「モデナの見所」で確認可能)。
ピアッツァ・グランデのモデナ大聖堂(左)と市庁舎(右)。時計の下の石像は聖母マリア (C) Hierakares
フィレンツェやミラノ、パルマ、ボローニャ辺りからなら日帰りでも十分楽しめるのでので、ぜひ旅先に加えていただきたい古都なのだ!
モデナ旧市街の見所1. モデナ大聖堂(世界遺産)
モデナ大聖堂の西ファサード。全体はロマネスク様式だが、のちの時代にゴシック様式の巨大なバラ窓が取り付けられた
設計を担当したのはランフランコで、周囲から発掘された古代ローマ遺跡の大理石や彫刻が転用されている。全体のデザインもローマ時代の建築を模したロマネスク様式で、シンプルながら重厚で美しい聖堂に仕上がっている。内部は薄暗いが、それが暗い空間に差し込む光を神々しく演出しており、「神は光なり」という聖書の言葉を体現している。
この大聖堂は建築家による建物と彫刻家によるレリーフや彫刻が調和した総合芸術作品で、近世の教会建築の先駆けとなった。
大聖堂の身廊からアプス側を眺める (C) Ruge
こうしたレリーフや彫刻は文字が読めない庶民に神の力や教えを説く役割を果たしていた。中世や近世の人々が体感した神の世界を感じてみてほしい。
なお、開館時間などの最新情報は以下の公式サイトを参照のこと。
<関連サイト>
- Duomo di Modena(公式サイト。イタリア語)
モデナ旧市街の見所2. トッレ・チヴィカ(世界遺産)
手前がモデナ大聖堂、奥の塔がトッレ・チヴィカ。八角形の尖塔だけがゴシック様式だ
大聖堂と同じくランフランコの設計で、1179年にロマネスク様式の5階部分まで建築され、1319年にアッリゴ・ダ・カンピオーネの設計でゴシック様式の八角形の尖塔が追加された。この尖塔部分に花冠状の装飾(ギルランダ)が見られることから「ギルランディーナ」の愛称を持つ。
塔の高さは86.12mで、尖塔は37m。塔の上からモデナの絶景が見下ろせるほか、フレスコ画や彫刻・レリーフが見学できる。トッレ・チヴィカの北にはトッレ広場が広がっている。
<関連サイト>
- Torre Ghirlandina(VISIT MODENA。英語/イタリア語)
モデナ旧市街の見所3. ピアッツァ・グランデ(世界遺産)とその他の建物
市庁舎。現在、1階にはツーリスト・インフォメーションが入っており、2階ではフレスコ画などが見学できる
■市庁舎
11世紀に建てられた市庁舎を中心に複数の建物が折り重なった複合建築で、もっとも高い時計塔は15世紀の作品。正面には「リンガドーラの石」が置かれており、この前で集会や刑の執行が行われた。
■旧大司教館
もともと大司教が暮らしていた建物で、こちらもさまざまな建物からなっており、一部は古文書館や聖母教会になっている。
■大聖堂博物館
大聖堂の北に隣接する博物館。大聖堂の彫刻やレリーフのオリジナルや、大聖堂に関連する家具・織物・絵画・宝飾品などが展示されている。
世界遺産に登録されているのはモデナ大聖堂、トッレ・チヴィカ、ピアッツァ・グランデの周辺だが、旧市街には他にもいくつか見所がある。主だったものを紹介しておこう。
旧市街のかわいらしい街並み。モデナはただ町を歩いていてもおもしろい
ピアッツァ・グランデの南にある屋内市場。野菜や穀物、パスタなどが売られている。バルサミコ酢やランブルスコをお土産に買うのもよし、お総菜とワインを買って部屋で楽しむのも一興。
■ドゥカーレ宮殿
1288年にモデナはエステ家の侯爵領(のちに公爵領)となり、1598年にはモデナ公国の首都となった。この宮殿は1634年に建てられたエステ家の宮殿で、バロック様式の重厚なたたずまいが特徴。現在は軍事学校となっているが、ツアーで内部を見学できる。
■ムゼイ宮殿
1764年に建設されたエステ家の宮殿で、エステ家の宝物を展示したエステンセ・ギャラリーや古文書を収蔵したエステンセ図書館、モデナ市歴史資料館など、さまざまな博物館・美術館が入っている。
イタリア随一のグルメ・タウン、モデナを堪能しよう!
パルミジャーノ・レッジャーノとバルサミコ酢。たまらない組み合わせ。バルサミコ酢はオリーブオイルと混ぜてもすばらしいソースになる (C) Cristiano Carli
モデナにはたくさんの名物があるが、たとえば以下はモデナやモデナを含むエミリア=ロマーニャ州の指定地域で作られたもののみ、その名を名乗ることができる。
■バルサミコ酢
ブドウを原料とする「世界でもっとも高貴な酢」。伝統製法で12年以上かけて熟成させたモデナのトラディショナーレは特に高く評価されている。
■パルミジャーノ・レッジャーノ
1年以上の熟成を経たハードタイプのチーズで、「チーズの王様」の異名を持つ。濃厚な味わいが特徴で、そのまま食べてもパスタにかけても最高だ。
■ランブルスコ
同地でランブルスコ種のブドウから作られたスプマンテ(スパークリング・ワイン)。濃厚かつさわやかな赤とロゼが有名。
日本にもファンが多いランブルスコの赤 (C) CCFoodTravel.com
プロシュットは豚のもも肉の塩漬けを乾燥・熟成させたイタリアの生ハム。特にパルマ産は世界三大ハムのひとつに数えられる。
■コテキーノ・モデナ、ザンポーネ・モデナ
コテキーノは豚の腸に豚の挽肉を詰めた腸詰め、ザンポーネは挽肉を豚足の皮に詰めたもの。モデナの名物で、特に年越し料理として供される。
モデナではバルサミコ酢やチーズの工場やワイナリーへの見学ツアーも催行されている。試食や試飲もできるのでオススメだ。
イタリア高級自動車の故郷、モデナ
フェラーリ博物館に展示されているフェラーリのF1マシン
特にモデナ市はエンツォ・フェラーリの生まれ故郷として知られ、10kmほど離れたモデナ県のマラネッロにはフェラーリの本社がある。また、旧市街の北東にはマセラティの本社と工場も並んでいる。自動車好きなら以下はぜひ見学しておきたい(位置は冒頭のGoogleマップ「モデナの見所」で確認可能)。
■エンツォ・フェラーリ博物館
エンツォの生家で、父が営んでいた板金工場の跡地に作られた。彼が使っていた事務所やグッズ、レーサー時代のアルファロメオ、歴代のフェラーリなどが展示されている。
・Museo Enzo Ferrari
■フェラーリ博物館
フェラーリ本社近くに設立された博物館で、代々のF1やロードカーを展示している。マラネッロにあり、近隣にはフェラーリ・ストアなどもある。モデナ駅からバスが出ている。
・Museo Ferrari
ウンベルト・パニーニ・コレクション自動車博物館のマセラティ (C) Arnaud 25
マセラティを中心にパニーニ氏のコレクションを展示した個人博物館。チーズ会社・オンブレの敷地にあり、パルミジャーノ・レッジャーノの工場見学もできる。要予約だが、ツアーも催行されている。
・Collezione Umberto Panini Motor Museum
■マセラティ工場&ショールーム
マセラティは1914年にボローニャで創建され、1937年にモデナに移転した。エンツォ・フェラーリ博物館にほど近いモデナ工場では工場ツアーとショールームツアーが催行されている。要予約。
・Factory tour, Modena showroom tour
モデナへの道
大聖堂の広場側の門、ポルタ・レジア(王の門)。上部と下部の像はライオン
モデナ近郊の主要空港はボローニャ。日本から直行便はないのでローマやフランクフルト、ドバイなどを経由する。格安航空券で8万円前後から。モデナはボローニャの北西40kmほど。
あるいはフィレンツェやミラノなどの主要都市からアクセスすることもできる。両都市から電車で1時間半程度。
■周辺の世界遺産
60km圏内に「フェッラーラ:ルネサンス期の市街とポー川デルタ地帯」と「マントヴァとサッビオネータ」がある。イタリアには50件以上の世界遺産があるので、工夫次第で1度の旅で多数の世界遺産を訪ねることができる。
モデナのベストシーズン
大聖堂のアプスのモザイク (C) Ruge
年間降水量は少なく、雨は夏より冬に多い。そのため夏は乾燥していて気温の割に過ごしやすい。降水量は特に春の4月前後、晩秋の11月前後に多いが、それでも東京の冬より少し多い程度。
観光は1年中楽しめるが、ベストシーズンは寒い冬を避けた春~秋で、特に7~8月にハイシーズンを迎える。
世界遺産基本データ&リンク
モデナ大聖堂の南部分。連なるアーチが美しい
登録名称:モデナ大聖堂、トッレ・チヴィカ及びピアッツァ・グランデ
Cathedral, Torre Civica and Piazza Grande, Modena
国名:イタリア
登録年と登録基準:1997年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)
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