損害保険

災害救助法適用はどこまで?火災保険が欠かせない理由

被災者には、災害発生の直後から応急的に様々な給付が行われます。その根拠となるのが「災害救助法」。最近は2017年7月5日の大雨の影響で、福岡県朝倉市と東峰村、そして大分県日田市と中津市に災害救助法が適用されています(7月6日現在)。今回は災害救助法のしくみと、特に住宅に関する給付がどこまでなのか、確認していきましょう。

清水 香

執筆者:清水 香

火災保険の選び方ガイド

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「災害救助法」の適用基準に基づき、炊き出しや仮設住宅が提供される

災害救助法を根拠に様々な給付が行われる

災害救助法を根拠に様々な給付が行われる

災害の後、避難所が開設されたり、炊き出しが行われているのをニュースなどで見たことがあるでしょうか。これらが行われる根拠となるのが「災害救助法」。災害の後、国や自治体が被災者に必要な救助を行うための法律です。市町村の人口に応じた一定数の住宅が災害で全壊となった場合などに適用され、そのときは以下の救助が提供されます。


1  避難所、応急仮設住宅の設置
2  食品、飲料水の供与
3  被服、寝具等の給与
4  医療、助産
5  被災者の救出
6  住宅の応急修理
7  学用品の給与
8  埋葬
9  死体の捜索及び処理
10 住居またはその周辺の土石等の障害物の除去



被災後に身ひとつで逃げてきても、当座をしのぐのに必要な衣・食・住、および医療などが、原則として現物で給付されます。大規模半壊等となった住宅の応急修理、土石流で埋まった住宅を掘り出すための障害物除去のほか、子どもの学用品なども給付されます。

被災者が必要としている救助は、原則として事情のいかんや経済的要件を問わず、個々の必要に応じて行われることになっており、被災者からの申請も必要ありません。

災害救助法の実施主体は都道府県。市町村はその補助として関わります。かかった費用は都道府県が最大5割を負担し、残りは国が負担するしくみ(下表)。災害は急に発生し、救助には相当な費用がかかります。そこで都道府県は、財源確保のために災害救助基金を積み立てています。
 
災害救助法undefined救助の仕組み

災害救助法 救助の仕組み



災害救助法が適用された市区町村に関しては、様々な省庁から関係機関に対し被災者支援に関する通知が出されます。例えば金融庁からは、キャッシュカード等を失った被災者の預金の引き出しに柔軟に応じるよう銀行に要請したり、生命保険料や損害保険料の支払いを、一定期間猶予するよう保険会社に要請するといったことが行われます。

 

毎年どこかで適用される「災害救助法」について

最近の災害救助法の適用状況を見てみますと、わが国の災害の多さを改めて思い知らされます。災害救助法が適用されているということは、住宅を失い、救助を必要とする人々がいるということ。過去18年間を見ても、災害救助法が適用されなかった年はありません。

地震や台風被害で適用されることが多く、特に大きな地震がある年には、適用された市区町村数が跳ね上がっています。東日本大震災では災害救助法が適用された市区町村が241と突出。地震や台風は、多くの人の生活基盤を奪う可能性がある怖い災害であることを改めて感じずにいられません。

 
最近の災害救助法の適用状況

最近の災害救助法の適用状況

 
災害救助法が適用された市区町村の数

災害救助法が適用された市区町村の数

 

住まい関連は「住宅の応急修理」「応急仮設住宅・みなし仮設住宅」など

住まい関連の救助は以下のとおり。いずれも「応急」、つまり当座をしのぐためのものです。具体的に見てみましょう。


【住宅の応急修理】
災害で住宅が半壊して経済的に修理が難しい人や、住宅が大規模半壊となり、大規模な修理が必要な人を対象に、1世帯あたり57万4000円以内で修理を受けられるものです。修理対象となるのは居室や炊事場、トイレなど日常生活にどうしても必要な最小限度の部分。金銭ではなく修理そのものが提供されます。

修理をすれば引き続き住める住宅が対象なので、全壊となった住宅は対象外。修理を受けつつ、一方で応急仮設住宅の入居を申し込むといったことは原則できません。

全壊・大規模半壊など損害の程度は、役所が被災後に住宅を確認して判断されます。被災したことを証明する「り災証明書」にこれが記載され、それによって受けられる被災者支援の内容が決まります。


【応急仮設住宅・みなし仮設住宅】
住宅が全壊や全焼・流出し、経済的に住宅確保が難しい人を対象に仮設の住宅を提供するものです。1戸あたりの費用の限度額は551万6000円以内に限られており、プレハブ住宅が一般的です。

一方、応急仮設住宅の設置に代えて、自治体が民間賃貸住宅を借り上げて無償供与する「みなし仮設住宅」も、仮設住宅の一種として認められています。東日本大震災では、多くの世帯が住宅を失ったため応急仮設住宅は足りず、みなし仮設住宅が応急仮設住宅よりも多く提供されました。

物件の借り主を都道府県、入居者を被災者とする契約を貸主と締結し、都道府県は賃料・共益費および管理費・火災保険料・仲介手数料などを負担します。都道府県による家賃負担には上限がありますが、その地域の家賃相場により異なります。

仮設住宅・みなし仮設住宅を利用できるのは2年までとなりますが、特定非常災害の指定がある場合には、1年を超えない期間ごとに延長することができます。

特定非常災害とは、「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」に基づき、著しく異常かつ激甚な災害を指定し、仮設住宅の入居期間など一定の手続きの期間延期や猶予などについて特別措置が講じられるもの。これまで、阪神・淡路大震災、新潟・中越地震、そして東日本大震災、熊本地震が特定非常災害と指定されています。

東日本大震災から6年が経過した現在も、仮設住宅で暮らす世帯は被災3県で3万を超えています。熊本でも4万を超える世帯が仮設住宅で暮らしていますが、復興状況が思わしくないことから、蒲島県知事は来年度以降の入居についての延長方針を示しています。

なお、救助の金額や方法、期間については、災害救助法施行令第三条に基づいて決定され、変わることがあります。

 

災害救助法はあくまでも被災直後の「応急の救助」

日本の災害法制は、災害対策基本法をベースに、被災後のステージに応じた法律が適用される仕組みです(下図)。災害救助法が目的としているのは、災害直後に応急の救助を行うことです。復旧・復興のフェーズに入ると、次は被災者生活再建支援法などを根拠とした、生活再建の場面で必要とされる支援に切り替わっていくことになります。

住宅全壊あるいは大規模半壊した世帯の生活再建にあたっては、住まいをどう確保するかに応じ最大200万円の被災者生活再建支援金が給付されます。持ち家世帯だけでなく賃貸世帯も受給できます。資金需要が増す生活再建時には助かるお金ですが、いうまでもなく持ち家世帯の住宅再建に十分な金額ではありません。

 
災害救助法の位置づけ

災害救助法の位置づけ



 

「住宅再建は自らの手で」。だから誰でも保険は必要

災害はもはや他人事ではない。備えは必須に!

災害はもはや他人事ではない。備えは必須に!

以上のように、被災直後の被災者には、災害救助法を根拠にする様々な支援が展開されることが確認できました。ですが、住宅再建も含めたその後の生活再建については自助が基本であり、公助はあくまでもその側面支援と位置づけられています。

被災後の、住宅の建て直しも含めた生活再建に、貯蓄で対応できる人はほとんどいないでしょう。住宅ローンの返済中だったり、貯蓄が少ない持ち家世帯は、被災後の資金リスクがとりわけ大きくなります。そのため、火災保険や地震保険から十分に保険金を受け取れるようにしておくことが大切です。台風や地震の被害については特に、補償内容や受け取れる保険金の上限がどれくらいになるか確認しておきましょう。

災害が他人事とはいえなくなっている今、自分の身に「めったに降りかからないから」ではなく、「降りかかったときに困らないように」しておくことがなにより大事なのです。

※記事内容は、2017年7月執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。


【災害救助法が適用された過去の災害に関する記事】
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