ストレスに気づきにくいのはホルモンのせい?
多忙な時はホルモンの作用により、自分の疲れに気づきにくい
忙しさにかまけていると、自分のストレス状態に気づきにくいという方が多いものです。人から「ストレスが溜まってない?」「疲れているように見えるけど、大丈夫?」と言われても、自分の状態がよくわからない……。そう感じる方も、多いのではないでしょうか。
ストレス過多の状態になると、ストレスに抵抗するために副腎皮質ホルモンが分泌されます。すると、心身の状態が過剰にエネルギッシュになります。この状態になると「ストレスなんてなんのその!」という心境になり、さらに無理を重ねてしまうことも。
とはいえ、体を酷使するといずれは疲弊してしまいます。そして、とうとうエネルギーが枯渇し、ある日突然会社や学校に行けなくなってしまう……。このような経緯で心身がダウンしてしまう方は、残念ながら少なくありません。
ストレスに無自覚なために、うつ病発症や休職に至るケースも
ストレスの蓄積によってうつ病になった、ある男性会社員の方の例をご紹介します。仕事が大好きなその人は、毎日の帰宅は深夜まで働き、休日にも出勤。四六時中仕事をしているような状態でした。バリバリと仕事をこなす姿が評価されると、彼の心はやりがいでいっぱいに。依頼が増えるとさらにやる気がみなぎり、寝る間も惜しんで、仕事にまい進していきました。
ところがある日、小さなミスをきっかけに調子を崩し、なぜだか急に元気が出なくなってしまいました。朝になっても布団から出られず、出勤することができないのです。食欲もなく、頭も働かない状態です。数日休んで心療内科を受診したところ、「うつ病」と診断され、そのまま休職して療養に専念することになりました。
カウンセリングの場では、このような事情を抱える方によくお会いします。元気なときには自分のストレス状態に気づかずに無理を重ねてしまうため、自覚のないままにエネルギーが枯渇していき、気づかぬうちに病気になっていることがあるのです。
好きな仕事でも負荷をかけすぎれば、心身はいずれ疲弊してしまいます。だからこそ、日頃から自分の状態をチェックし、ストレスのコントロールをしていくことが大切なのです。
ストレス反応は「身体・心理・行動」でチェック!
では、自分のストレス状態に気づくためには、どのような点に注目すればよいのでしょう? ストレス反応は、「身体・心理・行動」という3つの領域に現れます。それぞれの領域で生じやすいストレス反応を紹介しますので、該当するものがないかをチェックしてみましょう。■身体に表れるストレス
- 食欲の変化がある(食欲が減っている、食べすぎてしまう)
- 睡眠の変化がある(眠れない、眠りすぎてしまう)
- 動悸がする
- 体の痛みがある(頭痛、腹痛など)
- めまいがする
- のぼせる
- 胃の痛みがある、便秘・下痢をする
- 不安が強くなる
- イライラしやすくなる
- 憂鬱で落ち込みやすくなる
- 緊張が続いている
- 自分の感情がわかりにくい
- 集中できない
- 以前はできていた簡単なことができなくなる
- 決断に時間がかかる
- 言い争いなどの攻撃的な行動が増える
- 食べすぎ、飲みすぎ、遊びすぎ、働きすぎなど、行動が過激になる
- 人や物に依存しやすくなる
- 涙もろくなる
- 人と会うことを避けるようになる
- 声がとても小さくなる
「3つのR」を意識したストレス解消法
「相当なストレスがかかっている」という事実に、本人は気づきにくい
また、企業や組織で働いている人は、毎年行われる「ストレスチェック」の制度を活用し、心身の状態を経年的に確認していくとよいでしょう。常時50人以上が働く職場では、年に1回以上「ストレスチェック」を受けることになっています。この検査で「高ストレス」と判定された場合は、医師と面談をして相談することができます。毎年のストレスチェックの結果を見ていくと、自分のストレス状態の変化がわかります。
ストレスがかかりすぎると、気づかぬうちに自分をさらに追い込んでしまうものです。したがって、忙しい時にこそ意識して休息をとり、ストレスを軽くすることが何より大切です。まずは、無駄に仕事を増やさないように、仕事の量を調整をしましょう。そして、日常生活ではストレスを解消するポイント「3つのR」を取り入れていきましょう。
- 休むこと(レスト:Rest)
- 気晴らしなどの楽しみを持つこと(レクリエーション:Recreation)
- 精神を安定させること(リラクゼーション:Relaxation)
日頃から「身体・心理・行動」に表れるストレス反応をチェックすることで、ストレスの状態を把握していき、早め早めに心身の健康管理を行っていきましょう。