労務管理/就業規則の基礎知識

ご存じですか?労働時間把握のガイドライン(2ページ目)

長時間労働対策を含め労働時間管理は労務管理の重要課題。こうした状況下、労働時間管理で押さえておくべきガイドラインが先般公開されました。労働時間の適正な管理が不十分では、時間外・休日労働等の把握等でトラブルの種を撒いているようなもの。経営者、企業の人事総務担当者にとってきわめて重要なガイドラインです。自社の対応に問題がないか、是正すべき項目はないかをご確認ください。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド


労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置(1)・(2)

労働時間の適正把握のため、ガイドラインで自社の運用をチェックしよう

労働時間の適正把握のため、ガイドラインで自社の運用をチェックしよう

【概要】
(1)始業・終業時刻の確認及び記録
使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認・記録すること。

(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
使用者が始業・終業時刻を確認し記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。

  • 使用者が、自ら現認することにより確認し適正に記録すること。
  • タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し適正に記録すること。
【留意すべきこと】
始業・終業時刻の全てを自ら現認することは困難でしょう。客観的な記録として上記の方法を取る場合、どれを選択するのがよいのか検証しましょう。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置(3)

【概要】
(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずることと明記されています。

ア 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

イ 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。

ウ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し所要の労働時間の補正をすること。 特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し所要の労働時間の補正をすること。

エ 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。 その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。

オ 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。 また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。 

さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。

【留意すべきこと】
ガイドラインは経営者・人事総務担当者のみが把握するのでは足りません。労働者・管理監督者に内容を十分理解させる必要があります。とかく労務管理は人事総務任せの体質ではトラブル必至です。

自己申告制度の労働時間管理をしている企業は相当数に上ります。実際の労働時間と相違していないか実態調査は欠かせません。著しく相違している場合には補正が欠かせません。また労働時間に上限を設けたり、定額払い時間外手当などでは手当に上限額を設けている場合、補正措置が必要です。

記載内容を見ると、当然のことが書かれています。当社においても補正措置が必要だ、とお感じの読者は相当数でしょう。実態調査や補正については、人事総務部門のみで実施するのではなく、経営者を含めプロジェクトチームで行うことが肝要。職務分析や適性人員配置など、経営に関わる内容が洗い出されることでしょう。今まさにその時期が来ているのです。「企業は人なり」、労使一体で取り組む課題です。

労働時間の適正な把握のため使用者が講ずべき措置(4)~(7)

以下(4)~(7)については、ボリュームの関係で下記参考資料で確認ください。そもそも労働基準法によってルール化されている内容等が明記されています。

(4)賃金台帳の適正な調製
(5)労働時間の記録に関する書類の保存
(6)労働時間を管理する者の職務
(7)労働時間等設定改善委員会等の活用

<参考記事>
残業(時間外労働・休日労働)トラブル防止対策
<参考資料>
労働時間の適正把握のためのガイドライン(厚生労働省)
長時間労働削減に向けた取組 (厚生労働省)




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