事業活動をしていく上で、残業は避けることができない問題。企業で定められた始業・終業時刻通りに定時出社・退社ができれば問題はないのですが、現実問題として、臨時の大量受注、納期急迫、月末・年度末決算業務など、に対応するため残業をしなければならない場合は多いものです。こうした場合、経営者や管理者は何気なく残業をさせていることはないでしょうか。

実は残業をさせる際には、一定のルールやプロセスがあるのです。まずは要件を確認し整備を進めていきましょう。これが無用なトラブル回避の最初の一歩です。

無理な残業は刑罰になる?

残業命令にはルールがあります

残業命令にはルールがあります

労働時間・休日はそもそも法令上どういう決まりになっているのでしょう。労働基準法では、労働時間は、1日8時間・1週40時間を超えて労働させることはできない、とされています(一部例外事業あり)。また、休日については、毎週少なくとも1日の休日か4週間を通じて4日以上の休日を与えることとされています(これを法定労働時間・法定休日と言います)。

これが労働時間・休日の原則です。従って、原則として残業、休日労働は法律上できないことになっているのです。でも実際の企業活動ではこの通りにならず、同法で例外(クリアすべき要件あり)が認められています。この例外を認めてもらうための手続きを踏まないで残業をさせてしまうと、なんと刑事罰(6ヶ月以下の懲役、30万円以下の罰金)が課せられる可能性があります。

残業(時間外労働・休日労働)をさせるための必要な手続き

従業員に残業させるために、企業が実施しなければならないポイントが2点あります。これをしっかり押さえましょう。

1.就業規則等(労働組合との労働協約、個別従業員との労働契約を含む)に残業をさせる根拠規定(労働契約上の義務)を記載する

例えば、次のように、就業規則に明確に記載されていることが条件です。
「業務の都合により、第○○条の所定労働時間を超え、又は第16条の所定休日に労働させることがある。法定労働時間を超える労働又は法定休日における労働については、あらかじめ会社は従業員の過半数を代表する者と書面による協定を締結し、これを所轄の労働基準監督署長に届け出るものとする。」
(東京労働局ホームページ就業規則見本から引用)
法定と所定の意味の違いは、
  • 法定労働時間=1日・1週間の労働時間の最高限度(1日8時間・1週40時間)
  • 所定労働時間=就業規則等で定めた労働時間(1日7時間とされていれば、法定労働時間内に収まっています)
  • 法定休日=毎週少なくとも1日の休日か4週間を通じて4日以上の休日
  • 所定休日=就業規則等で定めた休日(週休2日制であれば、そのうちの1日が法定休日、他の1日は所定休日となります)
法定と所定が同じ場合もあれば、違う(法定より短い)企業もあります。労働基準監督署長に届出が必要なのは、あくまでも法定を超える場合ですので、注意してください。

最高裁判所の判例でも、次の2.の36協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば、就業規則に「労働時間を延長して労働させることができる」旨定まっている場合(規定内容が合理的なものである場合)には、従業員に時間外労働の義務ありと判示されました。最高裁判例(平成3年11月28日)これにより、従業員は残業命令に従う義務が生じるわけです。

2.「時間外労働・休日労働に関する協定」の締結・届出をする
時間外労働・休日労働に関する協定は、労働基準法の36条に規定されていることから、通称「36協定」と言われます。

次に36協定の締結、届出が必要です。今回のテーマにおける一番のポイントです。「時間外労働、休日労働に関する労使協定」を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出れば、従業員に残業をさせても法違反になりません。これを免罰効果といいます。実際の企業での対応を見てみると、上記1.により規定はされているものの、この2.の協定締結・届出がなされていないケースが時々あるようです。自社で対応されているかをチェックしてみてください。

*労使協定とは、労働者の過半数で組織されている労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者との書面協定のこと。

余談になりますが、企業に労働基準監督署による定期、臨時調査が入った場合、この36協定締結・届出の有無は、必ずといっていいほどチェックが入ります。手続きがなされていない場合は、是正勧告がなされることになります。