労務管理/就業規則の基礎知識

残業(時間外労働・休日労働)トラブル防止対策(2ページ目)

昨今サービス残業問題などが、話題になっています。こうした残業時間に関わるトラブルは、労務管理を適正に行っていくことで防ぐことができます。今回は、そもそも残業命令を行う際、整備しておかなければならない手続きのポイントをお伝えします。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

36協定作成の方法

残業時間は無制限ではない。1ヶ月では45時間以内

残業時間は無制限ではない。1ヶ月では45時間以内

36協定を作成するときに、実務上、次の事項を確実に押さえて手続きを踏んでください。

1. 時間外労働・休日労働の限度を、必要最小限にとどめること
厚生労働省から時間外労働の限度に関する基準(平成10年厚生労働省告示第154号)という通達が出されています。36協定の内容をまずこの基準に適合させる必要があります。時間外労働・休日労働は無制限に認められるものではなく、必要最小限にとどめてください。実際に時間外労働の枠を設定する際には、原則として次の表による限度時間の範囲に収まるように設定する必要があります。

時間外労働の限度に関する基準 (平成10年労働省告示第154号)
  • 期間 限度時間
  • 1週間 15時間
  • 2週間 27時間
  • 4週間 43時間
  • 1ヶ月 45時間
  • 2ヶ月 81時間
  • 3ヶ月 120時間
  • 1年 360時間

実際の協定では、1日、1日を超え3ヶ月以内の期間(通常は給与の支給と連動するため1ヶ月とすることが多いようです)、1年の3つの限度時間を決める必要があります。上記基準では、実務上徹夜で就業せざるを得ないような状況なため、1日当たりの基準時間は定まっていません。自社で起こりうる時間を設定してください。その他一般的な1ヶ月とする場合は45時間、1年間360時間とする必要があります。

2. 臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行う場合には「特別条項付きの協定」が必要
一般的には、上記のように残業時間を1ヶ月45時間、1年間360時間以内で定めることが多いことでしょう。ところがやっかいなことに、業務上この限度時間を超えてさらに労働させることがなきにしもあらず、というのが企業の実態でしょう。その場合、「特別条項付きの36協定」を締結することによって、限度時間を超える時間外労働をさらに命じることができます。

この特別条項は、限度時間を超えて残業を行わなければならない特別な事情(通常予想される納期ひっ迫などをさらに超えるような大量受注など)に限定され、まさに臨時的に残業を行わせる必要のあるもので、全体として1年の半分を超えないものを指しています。具体例でいいますと、1ヶ月45時間が限度時間ですから、これを超えるような時間外労働は、6回まで(1年の半分)となっています。

手続き上はこうした扱いが求められますが、労務管理の観点からは、この特別の事情のある期間がどのくらいあるのかの実態確認が非常に重要です。臨時的といっていながら、恒常的に近いようであれば、適正配置などを含めた人事異動などの処置(パート従業員の臨時採用など)が必要になるからです。従業員のモチベーションダウン、さらには最近問題になっています過重労働問題などの別問題が生じる恐れも出てきます。労働時間管理が一層重要になってきています。残業を行う際には事前の残業申請書の提出、従業員ごとの残業時間の把握は欠かせません。

3. 割増賃金の支払い義務

特別条項付きの協定を締結する際、限度時間を超えて働かせる一定期間(1日を超え3ヶ月以内の期間および1年間)ごとに割増賃金率を定めておく必要があります。時間外労働・休日労働をさせた場合は、割増賃金の支払いが必要になります。法定時間外労働の割増賃金率は25%以上、法定休日労働の割増賃金率は35%以上とされています。

ここで注意点があります。平成22年4月の労働基準法改正により、割増賃金率が一部改正されています。大企業については1ヶ月60時間超の法定時間外労働に対する割増賃金率が50%以上に引上げられています。ただし、中小企業については一定の猶予措置があります。

中小企業では猶予がありますが、将来的に適用になると企業にとっては大きな負担。労働時間の管理(時間外労働を含めた自社の適正労働時間管理)は、コスト面からも重要になっています。

厚生労働省のホームページに、今回の記事の詳細が紹介されています。これを参考に自社の体制を整備してみてください。記入見本も紹介されています。
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