労務管理

“接待・会食”は残業代対象にならないの? 「君も来ていいよ」or「来なさい」上司の言葉がカギ

接待・会食は労働時間として勤怠をつけてもいいのでしょうか? 残業代対象になる?ならない? 接待・会食で残業代がつく場合・つかない場合について、社労士が解説します。

本田 和盛

執筆者:本田 和盛

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接待・会食でビールをつぐ

接待・会食は労働時間? 残業代は出る?

コロナ禍の厳戒態勢が緩和され、徐々に接待・会食が増えてきている昨今。これって業務時間にはならないの?残業代はつかないの?とやんわり疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。接待・会食で残業代がつく場合・つかない場合について、社労士が解説します。
 

Q. 接待・会食は労働時間として残業代対象にならないのですか?

コロナ禍の厳戒態勢が緩和され、接待・会食が増えてきているかと思います。コロナ禍後に社会人になった人などは、今までなかった接待・会食で帰宅時間が遅くなり、しかしこの時間に勤怠をつけていいものなのか分からない……などと、もやもやしているかもしれません。

接待・会食は、単なる楽しい飲み会ではなく、気が抜けない仕事の一環と捉える人も多いでしょう。業務時間として勤怠をつけていいのでしょうか。残業代は出ないのが普通なのでしょうか。
 

A. 接待・会食に業務性が認められれば残業代がつきます

■残業代がつくケース
接待・会食であっても会社や上司から出席を指示され、業務として参加するのであれば、「使用者の指揮命令下のある労働」として労働時間に該当します。労働時間ですので法定労働時間(1日8時間)を超えた時間は、割増賃金の支払対象となります。

たとえば、人事部が主催する内定者懇談会を取り仕切る人事スタッフ、重要な顧客を接待する営業スタッフは業務として参加(労務提供)しているので労働時間となります。また接待・会食中の事故が労災(業務災害)として認められるだけでなく、接待・会食後の自宅への帰路で発生した事故についても労災(通勤災害)が認められます。
 
業務性がある接待・会食とは、出席が任意ではなく上から強制(業務命令)されるものです。そのため業務性がある接待・会食は、通常は残業代がつかない管理職が担当し、一般職の部下には「君も来ていいよ」という誘い方をします。「君も来なさい」だと業務命令になります。

■残業代がつかないケース
出席が強制されていない任意参加の接待・会食であれば、業務とはならず残業代はつきません。さらに業務終了後の飲み会参加と同様に、退社後に飲食店に向かった時点で労災の保護対象からも外れます。飲食店からの帰路、事故に遭遇しても労災(通勤災害)として保護されないということです。注意が必要ですね。
 
ちなみに1次会が業務性のある接待・会食であっても、接待・会食後に上司から「お客も帰ったし、飲み直しだ」と誘われた2次会は業務性のない単なる飲み会となります。当然ですが、労働時間に該当しないので残業代はつきませんし、労災の保護からも外れます。
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