炭水化物は悪者ではありません
健康に過ごすために、炭水化物は欠かせません
ダイエットでは悪者のように扱われる炭水化物も、私たちが生活するうえで欠かせない栄養素のひとつです。炭水化物は、体内でブドウ糖に分解されます。ブドウ糖は脳が活動するための唯一のエネルギー源であり、体が活動するために必要なエネルギーの約6割は炭水化物から得ているのです。この大切な栄養素の摂取を制限してしまうと、健康な体は保ちにくくなります。炭水化物の多い食べ物には、乳製品、雑穀類、豆類、果物、芋類などがあり、ビタミン・ミネラル・食物繊維を十分に摂取しにくくなります。
適切な食事バランスの考え方
「食事は栄養バランスのよいものを」と思っていても、実際には好きな食材や料理を選ぶことが多くなっていませんか? 食品から摂取できる栄養には、体の活動に欠かせないエネルギー源になるもののほか、成長や生命維持に必要なもの、不足すると体調に影響するものなどがあります。体に活力を与え、エネルギーを消費するにはビタミンやミネラルも必要です。バランスのよい食事をとるには、いろいろな食材を食べることが大切です。とはいえ、食事のたびに個々の食材の栄養素をチェックして、1食の栄養バランスを考えるのは、かなり面倒なことです。神経質になりすぎて、せっかくの食事が楽しめなくなってしまっては、かえって体によくありません。
そこで活用したいのが、栄養素ではなく、「何を」「どのくらい」食べたらよいかが直感的にわかる「食事バランスガイド」です。これは生活習慣病の予防を目的に、厚生労働省と農林水産省が共同で作成したものです。料理を5つのグループに分けて、必要な分量と組み合わせがイラストで示されています。
このガイドでは、食べるべき分量を「つ(SV)」という単位で数えます。SVは料理の単位を意味するサービングの略です。1日分の食事の量は、必要となるカロリー数を元に計算されているため、年齢や生活スタイルによって異なります。
たとえば、デスクワークが中心の成人男性の場合。主食(ごはん、パン、麺)が5~7つ、副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理)が5~6、主菜(肉、魚、卵、大豆料理)が3~5、牛乳・乳製品は2、果物は2が1日の量になります。
主菜・副菜は、1単位を1皿と考えればわかりやすいでしょう。また、それぞれのグループの単位を入れ替えることはできません。ちなみに、お菓子やアルコールなどの嗜好品は1日200kcalを目安とすることが推奨されています。これは、どら焼きなら1個分、ポテトチップスなら1/2袋にあたります。
最初は、食事を食べたあとでバランスガイドに当てはめ、自分の食生活を振り返ることから始めます。何日か続けていると、だんだんと自分のパターンが見えてきます。同じメニューに偏っていると感じたら、不足しがちなものを補うように意識すれば、おのずとバランスを整えられるようになります。
食事は食べる順序を考えて時間をかけること
しっかり食べても太らないためには、食べ方にもコツがあります。数年前、料理を食べる順序を変えるダイエットが話題になりました。これは時間栄養学の考えを活用したもので、食事をとる順序や速度によって、消化・吸収を内臓のベストな時間に行わせるというもの。内臓にはそれぞれ、はたらきが活発になる時間と休息する時間があるため、活発な時間に合わせて食事をとるようにするのです。たとえば、血糖値の急激な上昇を防ぐためには、炭水化物よりも先に野菜を食べることがポイントです。血糖値の上昇がゆるやかであればインスリンの分泌が抑えられ、体重が増えにくくなると言われています。
また、よく噛んで、ゆっくりと時間をかけてとることで、食べ過ぎが防止できます。よく噛むことで脳の満腹中枢が刺激され、食べ過ぎる前に満腹感を得ることができるのです。噛む回数は、ひと口で30回以上が理想ですが、慣れないうちは、いつもより長く噛むことから始めてもいいでしょう。
過食にならないために、早食いは厳禁。料理の味や素材のうまさをゆっくり味わいながら、時間をかけて食べることを心がけましょう。(監修:管理栄養士・一政 晶子)