日本の食をもっとシンプルに、おいしく
一汁一菜とは、ごはんを中心とした、汁(みそ汁)と菜(おかず)というシンプルな食スタイル。料理研究家の土井善晴さんは、『一汁一菜でよいという提案』の中で「みそ汁を具だくさんにすれば、それで充分「一汁一菜」」と主張されて、多くの人の共感を呼びました。「何か、私の周りにいる人たちが皆、「毎日の食事作りが大変だ」と訴えるんです」「お料理を作るのがたいへんと感じている人に読んで欲しいのです」(『一汁一菜でよいという提案』より)という土井さんの言葉に、私も! と思った方も多いのではないでしょうか。
一汁一菜が食の基本。そこからスタートすればよいと思えるすがすがしさ。
ガイドももせの周囲のお母さんたちも、やはり「食事作りが一番大変」と訴える人が多く、これは長い間の私の課題でもありました。
ヨーロッパやアメリカでの食事作りが格段に楽という経験をしてから、物理的に時間がない、料理が苦手という理由のほかに、何か日本の食事づくりのハードルを上げてしまっているものがないだろうか。海外のようにもっとシンプルでいいのではないか、と思ってきました。
でも、こうした意見を言うと「日本の食文化をないがしろにしてはいけない」と反応されることも多く、解決策がなかなか見えずにいたのです。
否定ではなく肯定から物事を考える大切さ
料理のプロ、男性である土井さんの視点からと言ってもらうことで、ほっと安堵した人も多いのではないでしょうか。「昔の庶民の暮らしではおかずがないことも多く、「みそ汁、ごはん、漬物」だけで一汁一菜の型を担ってきました。だから、いまだって、おかずをわざわざ考えなくても、ごはんとみそ汁を作り、みそ汁を具だくさんにすれば、それで充分「一汁一菜」なんです」(『一汁一菜でよいという提案』より)
日々の食事作りを大変にしているのは、私たちの頭の中の「ハードル」が、さまざまな情報で少しづつ高くなってしまっている、ということもあるのかもしれません。
シンプルだからこそ、おいしく作る。味わう。日々の食事の基本かもしれません。
ごはんと味噌汁で完結してよいと思えるだけで、食事作りの負担感はぐんと減りそうです。その分、おいしいごはんや、おいしい味噌汁を作ろうと思うことで、食に対する向き合い方も変わってくる気がします。
何事も、現状を否定するのではなく、価値のあるものを肯定していくことの大切さを、土井さんの著書から学んだように思います。
テーブルを整えれば気持ちの満足度も上がる
とはいえ、ごはんと味噌汁、漬物だけの食卓では、家族から不満が出ることもありそう。これまでたくさんの皿数を並べていた食卓に、茶碗とお椀だけでは、空きスペースが増えて「目」が満足しないのです。一汁一菜をいつもの食卓に並べると、寂しい風景になってしまうこともあります
そこでおすすめしたいのが、家族それぞれにランチョンマットや角盆を用意して、テーブルセッティングをすること。
写真のように、ごはん茶碗、お盆、お箸と箸置き、湯飲み、取り皿などを配置することで、テーブルの風景が整います。お子さんがいる家庭なら、ランチョンマットはビニールやパウチ製の拭くだけでよい素材を使うと手間がかかりませんし、角盆なども見栄え良く便利です。
ランチョンマットを敷くだけで、食卓が整って見えてきます
ごはんと味噌汁だけでも、このセッティングをするだけで一気に「寂しい」風景は一掃。さらに、ごはんをおひつに移し、味噌汁は鍋のまま食卓の真ん中に置いて各自がよそうシステムにすれば、食卓は一気に豪華に。
一汁一菜でも十分、ごちそうの風景になるから不思議です。
おひつ、味噌汁の鍋、急須などもきちんと並べれば、フルコースにも負けないごちそう風景に
ランチョンマット方式で片付けもセルフサービスに
日本の昔の食卓は、箱膳といって、各自が使う茶碗や箸を箱に収納し、食べ終わったら自分の食器をきれいに拭いてしまっていました。ランチョンマットをテーブルに敷くことで、このエリアは自分の場所と家族に認識してもらう効果もあります。特に子供たちには、ランチョンマットと食器の準備から参加してもらい、食後はランチョンマットの上にある自分の食器は、自分で片付けようねと促す効果も。
それぞれ好きな柄のランチョンマットを用意してもOK。食卓のテリトリーを決める役目も果たします
これ、ガイドがアドバイスしたお母さんたちから、「魔法のように子供達が後片付けを進んでするようになった!」という声も複数届いているので、効果はありそうです!
シンプルな形に立ち返り、調理の時間は減らすけれどもそれぞれのおいしさには気を配る。そして、それを食べる食卓のしつらえをきちんとしてみる。
結果、準備や後片付けに家族が参加しやすくなり、食事作りがラクで楽しくなっていく。日本の食卓に、そんなプラスのループが生まれるといいなあ、と思います。
食をシンプルにした分、季節に合わせたしつらえや食器に気を配るゆとりも生まれてくる気がします
一汁一菜の食卓をさらに豊かにするアイデア、以下のガイド記事も参考にしてくださいね。
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