一つ目は以下の図で青く記されたオフィスを中心とする、比較的住宅の少ないエリア。二つ目の赤は人気があり、住宅価格、賃料も高いエリア。そして三つ目の緑はそれに比べると比較的住宅価格、賃料も手頃なエリア。色が薄い駅はそうした性格がやや薄いということを意味する。
山手線29駅を非常に大まかに3つのエリアに分類した図。赤は人気エリア、緑は比較的安価で庶民的な雰囲気のあるエリア、青はオフィスなど業務エリア。色の濃淡はその地域の特徴の強弱を表している(クリックで拡大)
そして今回はその3エリアのうちでも人気の高い、それに比例して住宅価格、賃料も高い山手線内の西側にある赤の13駅を取り上げる。
田町:オフィス、大学に運河もある街では再開発も
JRの山手線、京浜東北線に加え、JR駅からは少し離れるが、都営三田線・同浅草線の三田駅が利用できる。田町駅の山手線外側には慶應義塾大学があり、駅前から大学の間には飲食店街が続くが、神田、早稲田などに比べると学生街の印象は薄い。大学以外では日本電気の本社を始め、オフィスも多い。また、駅から少し離れるとイタリア大使館、オーストラリア大使館などに続く高台となっており、高額なマンション、住宅などが集まっている。山手線外側は運河のある街を標榜しており、少し離れるとタワーマンションが立ち並ぶ芝浦。最近はホテルも増えている。また、駅、線路のすぐ脇、これまでは小規模な飲食店などが並んでいた地域で2棟の高層ビル、ホテル、生活支援施設などを主体とした再開発が始まってもいる。
品川:山手線新駅、リニア始発駅と話題続々の注目エリア
JR路線では山手線のほか、在来線では東海道線、京浜東北線、横須賀線(成田エクスプレス含む)常磐線(上野東京ライン含む)、加えて東海道新幹線が走り、関西に行くのはもちろん、横浜から神奈川方面、埼玉から北関東方面そして成田と各方面に便利。2027年開業予定のJR東海リニア中央新幹線の首都圏側の始発駅にもなる。もうひとつ、品川駅を利用しているのは京浜急行線。同線は都営浅草線などを介して成田、羽田の両空港にアクセスできる路線で、海外、国内ともに飛行機利用の多い人なら非常に便利だ。
街は高台で古くから宮邸などがあり、現在はホテルなどが林立する高輪口、新たに再開発でタワーなどが生まれ、オフィスと混在する港南口と線路を挟んで全く異なる様相を見せている。今後、品川~田町間に山手線新駅、さらには地下にリニア新駅ができることを考えると、品川駅周辺には大きな変化が予想される。間違っても価格・賃料が下がることは無さそうだ。
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品川、昔も今も交通の要所として変化し続ける街
大崎:再開発で変化。湾岸エリアへも便利
JR路線では山手線のほか、埼京線、湘南新宿ラインが走っており、埼京線は臨海線と乗入れているため、湾岸エリアへの便が良い。古くは目黒川の水運を利用していた時代から隣駅の五反田との間は工業地帯となっており、1987年の大崎ニューシティ以降、再開発で街が大きく変わった。駅東側の開発に続き、現在は西側でもまだ建設が続いており、今後も変化しそうだ。
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大崎~五反田、生まれ変わる水と緑の街
五反田:駅前、お屋敷街と2つの顔のある街
JR路線は山手線だけだが、それ以外に東急池上線、都営地下鉄浅草線が走っている。都営浅草線は京急、京成との乗り入れで羽田、成田を繋いでおり、また、銀座線と平行して走っていることから主要オフィス街にもダイレクトにアクセス。その割には比較的混雑度が低いのは大きなメリットだろう。
駅前には山手線内外ともに風俗なども含む飲食店街があり、それがために今ひとつ、良い印象を持たない人もいるが、駅から離れたエリアには古くからのお屋敷街も。代表的なのは品川区東五反田5丁目に位置する小高い丘、池田山。ここは備前岡山藩主池田家が屋敷を構えた場所で、それが通称の由来。桜田通りを挟んで向かい側は島津山で、これも大名家の名称と言えば推察できよう。
目黒:駅前再開発で賑わい、注目度アップ
このところ、人気急上昇中の目黒。JR路線では山手線だけだが、東急目黒線、東京メトロ南北線、都営地下鉄三田線の4路線が利用でき、都心オフィス街へのアクセスが便利。2016年時点で駅前でオフィス棟、住宅2棟の大規模な開発が進んでおり、街の風景は大きく変わりそうだ。また、駅ビルアトレの一部が現在閉店状態。今後どうなるかは発表されていないが、一等地だけにどのような施設になるのかで駅前の賑わいも変わってきそうだ。
駅を挟んで山手線内は品川区、港区が接しており、東京都庭園美術館、国立科学博物館附属自然教育園といった緑が楽しめる場所が。対して外側、目黒区側は坂を下ったところに桜の名所目黒川があり、都心ながらも自然に近い街でもある。一方で駅周辺には飲食店が集中しており、特に話題のラーメン店が多いのが特徴だ。
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目黒、ターミナルと住宅街が隣り合う活気ある街
恵比寿:新店続々で人気上昇も庶民的な雰囲気も健在
2016年に5年連続トップだった吉祥寺に代わり、「みんなが選んだ住みたい街ランキング」(リクル―ト住まいカンパニー)で1位になった恵比寿。1994年にサッポロビールの工場跡地を再開発、恵比寿ガーデンプレイスが登場するまでは山手線沿線の穴場と言われていたことを考えると隔世の感である。利用できる路線はJRでは山手線に加え、埼京線と湘南新宿ライン、そして東京メトロ日比谷線である。都心はもちろん、池袋から北関東方面、横浜方面と広い地域へのアクセスに優れた場所というわけだ。
駅ビルアトレのほか、駅周辺には飲食店その他の店舗が多数集積しており、話題になる店の出店も頻繁で女性誌などに取り上げられるケースも多々。そうした情報発信が人気を支えている。一方で駅前で盆踊り大会が開かれたり、10月には恵比寿神社を中心にべったら市が開かれるなど庶民的な雰囲気も残されている。徒歩圏に東急東横線代官山駅があり、両駅間に店舗などが集積。人気度アップにはそうした相乗効果も寄与している。
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恵比寿、最先端だけれど庶民的な国際タウン
渋谷:大型再開発進行中で日々変わる一大ターミナル
言わずとしれた一大ターミナル。利用できる路線はJRでは山手線以外で、埼京線、湘南新宿ラインが利用でき、成田エクスプレス、ホームライナー小田原、おはようライナー新宿(降車のみ)も停車する。それ以外では東京メトロの銀座線、半蔵門線、副都心線、東急の東横線、田園都市線、京王井の頭線が利用可。東横線は副都心線と、田園都市線は半蔵門線と乗入れてもいる。現時点での渋谷の話題には2010年に施行認可された長期に渡る開発計画「渋谷駅街区土地区画整理事業」。施行期間は同年度から2026年度までの16年間となっており、銀座線、埼京線の移動なども含め、渋谷駅の交通は大きく変わる。交通だけでなく、駅周辺では複数の高層ビルが計画されており、渋谷駅に直結するものだけでも東棟、中央棟、西棟の3棟。最も早く完成する東棟は2019年度、中央・西棟は2027年の開業とか。それ以外にも道玄坂、桜丘、駅南の街区で計画があり、渋谷全体で考えると渋谷区役所、渋谷パルコ、NHKなど目白押しの状態。現在でも繁華な渋谷がさらに賑やかになるはずだ。
ただし、現状では工事に従い、各改札への通路が移動したり、閉鎖されたりと地下は複雑な状態になっており、慣れない人は移動に時間がかかる。渋谷を経由しての移動には十分な時間をみたほうが良い。
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渋谷、高低差が生んだ、2つの顔を持つ繁華街
原宿:観光客、買い物客多数のファッションの街
若者、外国人に人気の原宿で利用できる路線はJRでは山手線だけだが、東京メトロでは千代田線、同副都心線の2路線。都心へはもちろん、千代田線から小田急線を介して箱根までの便もある。ちなみに地下鉄の駅名は明治神宮前。各駅の間は多少歩くことになるので乗換時はご注意を。駅の山手線外側には明治神宮、代々木公園が広がっており、都心なのに緑が多いことでも知られるエリア。各種フェスなどもよく開かれている。逆に反対側はファッション関係のショップ、世界各地のブランド店、話題になることが多い飲食店などが軒を連ねる。駅を挟んで全く雰囲気の違う世界が広がっていると言っても良い。
原宿駅で最新の話題はクラシカルでかわいい現駅舎の建替え計画。表参道口に建つ洋風の駅舎は1924年6月に竣工した二代目で、都内のJR路線では最古の木造駅舎。JR東日本は東京オリンピック開催の2020年までに原宿駅を改良し、新駅舎を建設するというが、地元その他からは残して欲しいという声も根強い。
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原宿、観光、ファッションと代々木公園の街
代々木:新宿至近、学生など若い人も多数
JR路線では山手線のほか、中央・総武線の各駅停車が利用できる。加えて都営地下鉄大江戸線が使え、徒歩圏に小田急線南新宿駅がある。そもそも山手線の新宿駅までも数百mと近く、タカシマヤタイムズスクエアも入っている店舗は新宿店を名乗るものの、実際には代々木駅のほうが近いケースもある。予備校や専門学校が多く、若い人が多いが、それに交じって商業施設、オフィスなども点在。新宿御苑と明治神宮に挟まれた立地でもあり、少し歩けば緑が楽しめる。
新宿:交通、商業、娯楽、医療に官公庁も揃う便利さ
世界一乗降客数が多い駅、新宿。当然、利用できる路線も多く、JRでは山手線に加え、埼京線、新宿湘南ライン、成田エクスプレス、東武日光線直通特急、中央線の快速、緩行線、さらに甲府、松本駅方面に向かう特急列車も利用できる。さらに郊外に向かう私鉄として京王線、京王新線、小田急線があり、駅は少し離れているが西武新宿駅からは西武新宿線も。東京メトロでは丸ノ内線、都営新宿線、同大江戸線が利用できる。地下道を介すれば大江戸線の新宿西口駅、丸ノ内線、副都心線、都営新宿線の新宿三丁目駅も。どこに行くにも便利な場所というわけだ。
また、新南改札直結の新宿高速バスターミナルからは日本全国への高速バスが発着しており、鉄道以外の交通の便も良い。都内での足として利用するなら西口のバスターミナルから都バス、関東バス、京王バスなどが30路線ほどを運行しており、西武新宿線、西武池袋線、京王井の頭線、中央線沿線その他への便がある。京王線、中央線へは深夜バスもあり、遅い時間まで利用できる。
利便性については言うまでもなく、多くの百貨店、商業施設、娯楽施設に公共施設も集積、大学病院なども。加えて新宿御苑、新宿中央公園も近く、自然に触れる機会も身近。西新宿での住宅開発で住む街としての認識も急上昇している。
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新宿西口で進行中の再開発をチェック
新大久保:外国人多数、独特の雰囲気が特徴
山手線電車のみが停車する新大久保駅。とはいえ、中央線大久保駅とは300mしか離れておらず、その意味では特に不便というわけではないが、乗降客数は鶯谷駅、目白駅に次いで少ない。駅周辺には韓国、中国、タイ、トルコなどアジア各国の料理店、食材店などが集まっており、街行く人の中にはそうした国の人たちも多数。また、それを目当てに訪れる日本人も多く、ある種、観光地となっている印象もある。好きな人には楽しい場所だろうが、あまり一般的ではないためか、住む場所としての人気はいまひとつといったところ。
高田馬場:昔ながらの学生街にじわり、変化も
JRでは山手線のみが利用できる高田馬場駅だが、西武新宿線、東京メトロ東西線が乗入れており、都心へのアクセスは良好。都心へのバス便も多い。古くから大学、専門学校などが集中する学生街で、そのせいか、安くてボリューム自慢の飲食店やラーメン店などが目につく。住宅も通り沿いなどでは新しく建てられた物件が多いものの、少し入ると古い木造住宅、アパートなどが残されている。最近ではミャンマー料理の店が増え、リトルヤンゴン(ちょっとオーバー)などという声も。
この区間では明治通りが山手線と平行しているが、ここを走る2008年開業の副都心線の効果がじわじわ出始めており、、今後、土地の制約から大型の開発は難しいものの、少しずつ変化がありそうだ。
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高田馬場、安い、旨い、便利で元気な学生街
早稲田、建替え、高層化進む伝統ある学生街
目白:大学にお屋敷街もある、山手線有数の静かな街
山手線のみが利用できる目白駅。10分ほど歩けば東京メトロ副都心線雑司ヶ谷駅があるものの、他駅に比べると利便性はそれほど高くはない。その分、街全体が静かで落ち着いた感じがある。駅前に学習院大学、少し離れて日本女子大学があり、それ以外にも学習院中・高等科、河村中・高等学校その他の専門学校などもあり、学生の利用が多い駅だ。
周辺には尾張徳川家や近衛家などの邸宅跡を利用したグレードの高い住宅地も点在しており、豊島区の中では有数のお屋敷街。有名建築家の私邸などもあり、静かに暮らしたい人向きの街といえそう。
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目白、歴史を感じる、坂と緑豊富な住宅街
山手線全駅ガイドでは1回目に山手線の主にオフィスゾーンをご紹介。2回目では手頃さが狙える駅をご紹介してきました。
■山手線全駅ガイド・オフィスエリアを大解剖!
■山手線全駅ガイド・住まいの手頃さが狙えるのはこの駅