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早稲田、建替え、高層化進む伝統ある学生街

早稲田大学を中心に若い人が集まる街早稲田。とはいえ、建替え、高層化も延々続いており、街並みは年々変わっています。複数の地下鉄に加え、東京唯一の路面電車も使える街の今を見てきました。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

早稲田大学その他学校多数、
周辺には商店街も

大隈重信の像

大隈重信の像は変わってはいないものの、キャンパス内は高層化が進められており、雰囲気は大きく変わっている(クリックで拡大)

早稲田と言えば、言わずと知れた学生街。地名は生育の早い稲(早稲)を植えた田という意味で、元々は牛込村の一部だったそうですが、いつしか村として独立したのが江戸時代のこと。当時は茗荷の産地として知られていたそうです。その後、大隈重信が創立した東京専門学校(明治35年に早稲田大学の改称)が明治15年にでき、以降は早稲田大学とともに発展してきました。

 
西早稲田キャンパス

本部キャンパスから少し離れたところにある西早稲田キャンパス。すぐ近くに副都心線西早稲田駅ができ、便利になった(クリックで拡大)

現在のこのエリアには同大学の本部である早稲田キャンパスのほかに、理工系の学部のある西早稲田キャンパス、文学部のある戸山キャンパス、系列校の早稲田中・高等学校があり、加えて学習院女子大、東京都立戸山高校、その他の専門学校も集まっており、神田、本郷などと並ぶ日本でも有数の学生街と言えます。

 
古書店

古書店はまだ残されているが、その昔からすると雀荘や個人営業の飲食店は大きく減った(クリックで拡大9

全国から集まってくる学生を対象に早稲田キャンパスを取り巻き、さらに高田馬場駅、江戸川橋駅方面にも伸びる形で商店街も集まっており、その数7つ。神田神保町に次ぐ古書店の集積があることから、その中には早稲田古書店街連合会もあり、これも学生街らしいと言えるでしょう。また、平成12年以降は学生と協働した街づくりを行ってきており、途中、学生側の組織の盛衰を経つつも、結びつきは切れていないようです。

 
下宿

大学周辺に残されている昔ながらの下宿。かつては下宿組合が4つもあったそうだ(クリックで拡大)

とはいえ、大学周辺の商店、特に昔ながらの飲食店の数は年々減っています。同様に周辺にあった学生向けの下宿(共同玄関、共同トイレ、風呂なし)も1980年代くらいから減少の一途を辿っており、建替え可能な場所ではワンルームマンションや住宅などに変わってきています。特に通り沿いでは新しめのマンションが目につくようになっており、かつての、木造アパートの多い街並みは少し入ったところにしか残されていません。1920~1940年代には半径2キロ圏に6000室以上があったといわれる下宿ですが、現在の居住者の多くは高齢者。学生街でありながら、かつての学生の住まいには高齢者が住むという状況になりつつあるのです。

 

東京メトロ東西線に副都心線、
都電荒川線も利用可

駐車場

あちこちでコインパーキング、駐車場に暫定的に利用されている土地を見た。今後が気になる(クリックで拡大)

こうした変化の要因のひとつは利便性の向上です。明治時代からの都電荒川線(実際にはに加え、昭和39年には東京メトロ東西線早稲田駅が開業していますが、これを機に大学の近くに下宿する人が減ったというのが地元の声。その後、平成20年には東京メトロ副都心線西早稲田駅が開業、利便性が高まったことで建替えられるなら、より大きな建物に、新しい建物でより高い賃料をという動きが高まったであろうことは想像に難くありません。通り沿いを中心に駐車場になっている土地が増えたのも、建替えその他を睨んでのことと思われます。


 
いずれにしても東西線で大手町、日本橋などの都心部、副都心線で渋谷や横浜方面、池袋経由で埼玉方面などへもダイレクトにアクセスでき、利便性は非常に高いエリア。学生以外の人にとっても使い勝手の良い場所と言えます。

 
バス便

バス停は大学生門近くに集まっており、利用しやすい(クリックで拡大)

ちなみに足回りではバス便も豊富で、高田馬場駅への学バスはもちろん、池袋、上野、渋谷、九段下への便もあります。また、都電荒川線は東京メトロ副都心線、同有楽町線、同日比谷線やJR山手線などと交差しており、使い方によっては便利です。

 

神田川や甘泉園公園、胸突き坂と
自然、地形が楽しめる立地

大隈庭園

戦災で大きな被害を受けたそうだが、その後、再生され、今も豊かな緑を残している(クリックで拡大9

街としての楽しさで言えば、歴史と高低差のある街並みがポイントでしょう。早稲田キャンパスの大隈講堂の脇には大隈庭園とリーガロイヤルホテル東京がありますが、ここは江戸時代、彦根藩井伊家や高松藩松平家の下屋敷だったところで、大隈重信はここを明治17年に購入しています。戦災で全壊に近い被害を受けたものの、現在は復旧され、都心の中にあってたっぷりの緑を感じられる場所になっており、芝生でごろごろするのは楽しいものです。

 

胸突き坂

かつて胸突き坂のあたりは人が通るような場所ではなかったが、最近は人通りが多くなった。登り切ったところにある永青文庫では2015年、日本初の春画展が開かれた(クリックで拡大)

都電荒川線の早稲田駅を超え、神田川沿いまで行くと春には桜が楽しめます。そのまま、江戸川橋方面に向かうと途中には胸突き坂と呼ばれる急で細い坂道があり、上がったところには熊本藩細川家の永青文庫があり、その向かいにはかつて松尾場所が住んだ関口芭蕉庵。これ以外にも神田川から目白通り沿いには名所旧跡があり、散策にはうってつけです。

 

箱根山

区の施設に行けば登頂証明書が貰えるとか。箱根山だけでなく、池の跡らしい窪地なども残されており、古地図と併せてみると面白い(クリックで拡大)

戸山キャンパスの向かいには冬至の「一陽来復」のお守りでも知られる穴八幡宮があり、蟲封じのほか、商売繁盛や出世、開運に利益があるとか。戸山キャンパスの脇の箱根山通りを登っていくと、都内で一番高い山である箱根山(44.6m。ただし、自然の山ではない)があります。ここは江戸時代、尾張藩徳川家の下屋敷だった場所で、その時の庭にあった築山がこの箱根山だとか。戸山公園自体も高低差があり、地形好きなら興味を持っていただけるのではないでしょうか。


 

新築マンションは6000万円から、
昔ながらの下宿なら3万円台から

西門入口からグランド坂

かつての低層中心から高層、タワーも目につく早稲田界隈(クリックで拡大)

最後に住宅事情を見ていきましょう。山手線内側の、利便性の高い場所ですから、古くから開発は進んでおり、周辺も含めてまとまった土地の供給はさほどありません。最寄りの高田馬場駅周辺ではそれでも再開発などもあり、200戸、300戸といった規模のマンションが建つこともありますが、早稲田まで来ると数十戸でも珍しくなってきます。新築マンションで言えば、65平米で6000万円以上といったところで、数もそれほど多くはありません。

 

都電荒川線

都電荒川線の両側、あるいは反対の早大通り沿いにはマンションが多い(クリックで拡大)

中古も物件自体はないわけではないものの、現時点での供給は少なめ。そして人気のある場所だけに古くなっても、それほど安くなっているわけではありません。築40年~、早稲田駅から10分圏で見ると70平米で4000万円~、50平米でも2500万円~などとなっており、単身者向けの広めのワンルームでも築30年で1500万円ほどはします。

 

神田川

神田川周辺から以遠になると一戸建て、低層住宅が多くなってくる(クリックで拡大)

新築建売一戸建ては土地40平米台の3LDKが6000万円~。非常にコンパクトな住宅になるので、階段部分が多く、あまり使い勝手は良いとは言えません。高齢者にも親切とは言い難いので、若い時期に住むと割り切ったほうが良いかもしれません。

 

妙な建物

建築好きな人ならご存じだろう、早稲田にはこんな面白い賃貸物件もある(クリックで拡大)

賃貸はお隣の高田馬場、神楽坂に比べるとお手頃。ワンルームマンションで7~8000円程度は違うようですが、これは物件次第です。目安としてはワンルームマンションで8万円弱、2DKで13万円~、3DKになると20万円~といったところ。数は少なくなってはいますが、木造、築40年~で共同玄関、共同トイレのいわゆる下宿であれば3万円台から。最近はシャワールーム、洗濯機共同などという物件も出ているので、そうした物件であれば安く、かつ以前よりは快適に暮らせるかもしれません。

 

商店街

以前の猥雑さは影を潜め、きれいになりつつある早稲田界隈。魅力を残し、新しくなる、そんな変化を期待したい(クリックで拡大)

以上、学生街早稲田を見てきました。他の大学の多くは高台にキャンパスを構えることが多いのに対し、なぜ、早稲田だけが低地なのか、長らく疑問に思っていましたが、今回歩いてみても疑問は解けず。ただ、土地の高低差が大きく、街としては面白い場所であることはよく分かりました。利便性と歴史、高低が一度に味わえる場所のひとつとして考えてみても良いかもしれません。





※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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