夏に怪談・怖い話をするのはなぜ?
キャ~!? 夏といえば怖い話・怪談が欠かせないのはなぜでしょう?
夏の怪談のルーツはお盆の芝居
今はさまざまな娯楽がありますが、娯楽の少ない昔は、芝居といえば貴重な娯楽で大変な人気でした。“夏といえば怪談”のルーツも、この芝居文化が深く関わっているといわれています。日本ではお盆になると死んだ人の霊が帰ってくるとされているので、先祖の霊を家に迎えて供養するようになりましたが、霊の中にはこの世に恨みを抱いた怨霊や無縁仏もおり、成仏できず幽霊になって現れることもあるようです(詳しくは「おばけ、幽霊、妖怪の違いとは?」)。
そしてお盆の時期に行われる芝居は「盆芝居」「盆狂言」などと呼ばれ、鎮魂の意を込め、浮かばれぬ霊の無念や苦しみを語るようになり、夏の歌舞伎の演目としても定着していきました。
またお盆の頃(旧暦7月15日頃)は土用の時期に重なることが多かったため、一流の役者は土用休みで二流の役者しか揃わず、目先の変わった怪談や仇討ちものが多くなったといわれています。こうして怪談が夏の風物詩になっていったのです。
日本三大怪談「四谷怪談」「皿屋敷」「牡丹燈籠」
幽霊のセリフといえば「うらめしや」ですが、これは非業の死を遂げたため、それを恨んでいることを表しています。日本三大怪談とされる「四谷怪談」「皿屋敷」「牡丹燈籠」でも、恨みをもった幽霊の復讐劇であることがわかります。■四谷怪談 主人公=お岩
夫に裏切られ顔の崩れる薬を飲まされて死んでしまったお岩が、幽霊となって復讐をとげる話。元禄時代の事件をもとに四代目・鶴屋南北が「東海道四谷怪談」を執筆し、歌舞伎に仕立てて有名になりました。その後、初代・三遊亭圓朝が落語に仕立てるなど、さまざまなバリエーションがあります。実際のお岩は夫婦仲も良く、近所でも評判の女性だったようで、お岩にあやかるため、四谷には「お岩稲荷」が建立されています。
■皿屋敷 主人公=お菊
奉公人のお菊が、家宝の皿を割ってしまったことを責められ井戸で死んだ。すると、お菊の幽霊が夜な夜な「一枚、二枚……」と恨めし気な声で皿を数えるようになったという話で、もとになった実話があるといわれています。大阪で歌舞伎に仕立てた「播州皿屋敷」が、江戸では番町を舞台にした「番町皿屋敷」になるなど、各地にいろいろな皿屋敷の話があります。
■牡丹燈籠 主人公=お露
ある男に恋い焦がれて死んだお露は、牡丹燈籠を灯してその男のもとへ通い逢瀬を重ねた。しかし、幽霊であることがばれてしまい、幽霊封じをした男を恨んで殺すという話。中国の小説をヒントに、初代・三遊亭圓朝が落語に仕立て、歌舞伎でも人気の演目になりました。
行事と季節の風物詩との関わり
行事と季節の風物詩には深い関係があるように、「夏」と「怪談」を結び付けていたのも、上記の通りお盆でした。また、夏の風物詩である「盆踊り」も、お盆に迎えた霊の鎮魂のために始まりました。▷「なぜ盆踊りをするの?~由来と楽しみ方」
ちなみに、アメリカではハロウィンに怪談をすることが多いそうです。
▷「ハロウィンの由来と、日本のハロウィン事情」
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