End of the RAINBOW

7月9~24日=俳優座劇場、7月27日=サンケイホールブリーゼ、7月30日=水戸芸術館ACM劇場

『End of the RAINBOW』2015年公演より

『End of the RAINBOW』2015年公演より

【見どころ】

不世出のミュージカル映画スター、ジュディ・ガーランドの晩年の愛と葛藤を描き、昨年日本初演され好評を博した本作が、アンコールの熱い声に応えて帰ってきました。

時は1968年、コンサートの為にロンドンにやってきたジュディは薬物依存のため、心身ともにぼろぼろになっていた。フィアンセでマネジャーでもあるミッキーとピアニストで友人のアンソニーはどうにかしてジュディに薬物をやめさせようとするのだが……。

華やかなショー・シーンを差し挟みながら、じっくりと描かれる人間ドラマ。初演で好評を博したジュディ役の彩吹真央さん(前回公演についてのインタビューはこちら)、ミッキー役・小西遼生さん、アンソニー役・鈴木壮麻さんの入魂の演技に引き込まれた後、アンコールでは気分を変えて、素敵な“おまけ(?)”を堪能できそう!

【鈴木壮麻さん・ミニインタビュー】

劇団四季で『オペラ座の怪人』『美女と野獣』等に出演、退団後『レ・ミゼラブル』『エリザベート』などで活躍してきた鈴木壮麻さん。『李香蘭』等での硬派な印象が強かっただけに、近年の『フル・モンティ』などでの弾けっぷりには驚かされますが、素顔は全く変わらず、劇団時代からいかに周囲を笑わせるかがテーマだったそう!undefined(C)Marino Matsushima

劇団四季で『オペラ座の怪人』『美女と野獣』などに出演、退団後『レ・ミゼラブル』『エリザベート』などで活躍してきた鈴木壮麻さん。『李香蘭』などでの硬派な印象が強かっただけに、近年の『フル・モンティ』などでの弾けっぷりには驚かされますが、素顔は全く変わらず、劇団時代からいかに周囲を笑わせるかがテーマだったそう! (C)Marino Matsushima

――昨年の日本初演が大きな反響を呼んだ『End of the RAINBOW』、ご自身にとってはどんな作品でしょうか?

「わが子のような、愛しい作品です。演出家の方々にはいろんなタイプがいらっしゃり、きっちり(プランを)固めて稽古に臨む方もいらっしゃいますが、本作の上田一豪さんは皆でディスカッションをさせてくださる方。昨年は“この言葉はどういう意味合いで言うのか”に始まって、皆でかなり細かいところまで話し合い、作ってゆけたのがかけがえのない時間でした」

――鈴木さんが演じるのは、薬物とアルコールに溺れるジュディに憎まれ口をたたきつつも、無償の愛で支えようとするゲイのピアニスト、アンソニー。婚約者ミッキーも手を焼くほど破滅寸前のジュディに、アンソニーは最後まで手を差し伸べていて、特に終盤の説得シーンには、見入らずにはいられません。彼の愛情、献身の根底にあるものは何だと思われますか?

「物語の年代を考えると、アンソニーは20世紀前半に思春期を過ごした人物。彼は英国人ですが、当時の英国はまだまだ保守的だったと思います(注・鈴木さんは子供時代に英国在住経験有)。ゲイというマイノリティとしてきっと様々な偏見、差別を経験してきて、エンターテインメントの世界でジュディに出会い、“同じ波長”を感じたのでは。そして“寄り添いたい・守ってあげたい”と。それが彼にとっても自分の存在意義だった。彼自身、とても孤独だったと思います」
『End of the RAINBOW』2015年公演より

『End of the RAINBOW』2015年公演より

――なるほど、それで彼女にメークを施してあげるシーンで、御礼を言われ「それを言うのはこっちだよ、僕も救われたから」と言うのですね。今回の再演、ご自身の中ではどんなテーマをお持ちですか?

「2月に英国・コヴェントリーで本作が上演されていたので観に行ったのですが、英語だと言葉が少ない……例えば“私はあなたを愛しています”が“I love you”で済んでしまったりするので、台詞がポンポン応酬されていたんです。でもそのテンポ感を日本語で真似てもお客様には内容が伝わらないし、ジュディとミッキーがアメリカ人でアンソニーが英国人ということでアメリカ英語とイギリス英語を対比させようとすることも、日本語上演ではあまり達成感が得られない。僕らが昨年とったアプローチは間違っていなかったんだな、と再確認できました。

アンソニーのような役を再演させていただけることはそうそうないので、前回よりさらに掘り下げたものをお見せしたいですね。特に今回は初日の1週間前から劇場入りさせていただいていて、通常他の公演では劇場に入るとテクニカルな打ち合わせの後すぐゲネプロ、そして本番ですので、この期に及んで(笑)“この台詞、もっと何か発想が出てくるのではないかな。泳がせておこうよ”と言いあえる、非常に贅沢な状況です。ぜひ開幕を楽しみにしていてください!」

【観劇ミニ・レポート】
『End of the RAINBOW』2016年公演より

『End of the RAINBOW』2016年公演より

ピアニストのアンソニー、続いてジュディと婚約者のミッキーがロンドン公演の滞在ホテルの一室へと入ってくる。借金返済のため舞台に立たざるをえず、薬物とアルコールに頼っては止めようとするミッキーと喧嘩を繰り返すジュディ。アンソニーはそれをはらはらしながら見守り、時に仲裁を試みるのだが……。
『End of the RAINBOW』2016年公演より

『End of the RAINBOW』2016年公演より

芝居めいた“溜め”や大袈裟な動きを排した舞台は昨年からさらに滑らかさを増し、客席と舞台の近い俳優座劇場ということもあって、まるで実際にそこで起こっているような臨場感が格別です。彩吹真央さんは持ち味の清潔感と華やかさで破滅寸前のジュディに抗えない魅力を加え、鈴木壮麻さんはより芝居っ気を排し、淡々とした演技の中に深い孤独を抱えたアンソニーという人物の真実味を感じさせます。
『End of the RAINBOW』2016年公演より

『End of the RAINBOW』2016年公演より

そんな中で今回、際立つのが小西遼生さん演じる、生々しいミッキー像。年上のジュディにも頼もしく相対し、クラブ経営者としての辣腕ぶりがうかがえる序盤の小西ミッキーには、彼女を薬物・アルコール依存から救うことについても自信と希望をのぞかせますが、次第に彼女が手に負えなくなり、ある時、大きく舵をとる。その変わり身には、大きな喪失を予感しながらもそうせずにはいられない人間の弱さが滲み、彩吹ジュディ、鈴木アンソニーとともに本作のリアリティをいっそう際立たせています。
『End of the RAINBOW』2016年公演より

『End of the RAINBOW』2016年公演より

アンコールでは気分を変え、インタビュアー役の寺元健一郎さんを含めた4人による、素敵な歌の“おまけ”が。季節感を活かした選曲とお洒落なアレンジが楽しく、彼らの美しいハーモニーの余韻の中、観客は満ち足りた心持で劇場を後にすることができるでしょう。

*次頁で『ガンバの大冒険』以降の作品をご紹介します!