この夏は“ロマン”溢れる舞台が目白押し。古代エジプトから童話まで、ひととき現実を忘れさせてくれる作品世界に、どっぷり浸ってみてはいかがでしょうか。

【2016年7~8月開幕の注目!ミュージカル】
『End of the RAINBOW』7月9日開幕←鈴木壮麻さんインタビュー&観劇レポートをUP!
『マイ・フェア・レディ』7月10日開幕←観劇レポートUP!
『キンキーブーツ』7月21日開幕←ソニンさんインタビュー&観劇レポートをUP!
『ガンバの大冒険』7月23日開幕←観劇レポートをUP!
『ピーターパン』7月24日開幕←観劇レポートUP!
『マンマ・ミーア!』8月2日開幕←観劇レポートUP!
『王家の紋章』8月5日開幕←観劇レポートUP!
『三銃士』8月6日開幕←観劇レポートUP!

【閉幕前に駆けつけたい!ミュージカル】
『美女と野獣』(キャナルシティ劇場)8月28日千秋楽←観劇レポートUP!

【AllAboutミュージカルで特集したミュージカル】
『エリザベート』出演・古川雄大さんを「気になる新星」にてインタビュー&観劇レポートUP!
『ジャージー・ボーイズ』出演・海宝直人さんを「気になる新星」にてインタビュー&観劇レポートUP!
『アニー』出演・木村花代さんを「Star Talk」にてインタビュー&観劇レポートUP!

キンキーブーツ

7月21日~8月6日=新国立劇場中劇場、8月13~22日=オリックス劇場、8月28日~9月4日=東急シアターオーブ
『キンキーブーツ』写真提供:フジテレビジョン

『キンキーブーツ』写真提供:フジテレビジョン

【見どころ】

靴工場の跡取り息子とドラァグクイーンの友情を描き、2013年のトニー賞でミュージカル作品賞ほか6部門を受賞した話題作が、日本人キャストで初登場。『ヘアスプレー』のジェリー・ミッチェル(演出・振付)、ポップ・アイコンのシンディ・ローパー(作詞・作曲)、『ラ・カージュ・オ・フォール』のハーヴェイ・ファイアスタイン(脚本)が喜怒哀楽を絶妙のバランスで織り込んだ快作を、小池徹平さん、三浦春馬さんら人気・実力を兼ね備えたキャストがどう料理するか。潰れかけた工場に携わる人々の、一発逆転を懸けたストーリーとしてもスリル満点です。シンディの人懐っこいメロディに身を委ね、おおいに笑って泣けるミュージカル・コメディに期待しましょう!

【ローレン役・ソニンさんミニ・インタビュー】
――発売されるやたちまち完売してしまった東京初演ですが、私が拝見した日は一曲ごとに客席が大盛り上がりでした。連日の光景でしょうか?
ローレン役のソニンさん。高知県出身、『ミス・サイゴン』『モーツァルト!』『RENT』などで活躍。今回のシンディ・ローパーによる楽曲は「この前(三浦)春馬くんも“ミュージカルの歌って練習していると難しさばかり感じがちだけど、今回は全くそうならないね”と言っていたほど、とても前向きになれる曲ばかり。歌っていて楽しいです」という。

ローレン役のソニンさん。高知県出身、『ミス・サイゴン』『モーツァルト!』『RENT』などで活躍。今回のシンディ・ローパーによる楽曲は「この前(三浦)春馬くんも“ミュージカルの歌って練習していると難しさばかり感じがちだけど、今回は全くそうならないね”と言っていたほど、とても前向きになれる曲ばかり。歌っていて楽しいです」という。

「はい、私たちもびっくりしています(笑)。ブロードウェイのオリジナル・スタッフが初日前、日本ではどれぐらい盛り上がるだろうととても気にされていて、“日本人は(リアクションが)静かでも皆さん楽しんでいらっしゃるんですよ”、とお話していたのですが、幕が開いたら物凄いテンションで、彼らも喜んでいました。作品がもともと持っているパワーによるものと思いますし、観てくれた友人たちからは、今回は“日本で翻訳物を観ているというより、まるで海外旅行中に観劇した時のような現地の空気感がすごくある”と言われます」

――ソニンさんが演じるローレンは靴工場の従業員で、主人公チャーリーの幼馴染。ある日突然彼が異性として気になるという役ですが、作品においてはどんな立ち位置ととらえていますか?

「ローレンはコミカルに描かれていますが、リアリティも重要だと思っています。今回、私の中で裏設定として根っこに置いているのが、ローレンは田舎町でいろいろなものをみる機会なく育ち、工場にやってきた(ドラァグクイーンの)ローラに出会うまで、大きな夢を持つことがなかったということ。すごく可能性を秘めていて、もしかしたらバリバリ働けるのかもしれない女の子が地方で地味に暮らしている、というリアリティを持たせたいなと思っています」

――女性にとっては共感しやすいキャラクターかもしれませんね。
『キンキーブーツ』写真提供:フジテレビジョン

『キンキーブーツ』写真提供:フジテレビジョン

「もちろん! ローレンには『The History of Wrong Guys~間違いだらけの恋の歴史~』というソロナンバーがあるのですが、女の子なら誰もが“そうだよ~”と思えるような歌詞なんですよ。それに、ローラに出会ってノリたくなるんだけど、ノリ方が超下手だったりと、ちょっとダサめ(笑)。でも、見せ方一つとっても極めるのではなく、極まらないようにポーズするというのがこれまでにない体験で、演じていてすごく楽しいです」

――そのローラを演じる三浦春馬さん、“本当に三浦さん?”というほどの変身っぷりですが、お稽古で徐々にキャラクターを作っていかれたのでしょうか?

「最初からあのテンションでした(笑)。稽古初日に(小池)徹平くんと“彼、出来上がってるよね。私たちどうする?”って話してたくらい(笑)。ローラって、かけ離れたというか、本当に気合がないとできない役なので、彼の若いエネルギーとやる気が乗ってて、見ていて気持ちがいいし、だからこそ私たちもローラを引き立たせるため、はじめは彼を受け入れられない、地味~な田舎の工場員たちを演じて、その両極端が理解し合っていくという『キンキーブーツ』の魅力を浮き彫りにしたいと思っています」

――秋にはアメリカ・ツアー版の来日上演もあり、観比べるのが楽しみです。

「日本版では、演出協力・上演台本の岸谷五朗さんが英語のジョークを日本語のジョークに変えたり、“日本人にはこちらのほうが伝わりやすい”と変えている部分が細かい部分でたくさんあるんです。来日版では“もともとはこういう台詞だったのか”と発見する楽しみがいろいろあると思いますよ。もう一つ、日本版では日本人のお客様が入っていきやすいよう、間を詰めたり感情を繋げていく作業をみんなすごく細やかにやっていて、幕が開いてからもどんどん深めていると自負しています。日本版ではそこを感じ取っていただけるのではないかと思います」

【観劇レポート】
『キンキーブーツ』写真提供:フジテレビジョン

『キンキーブーツ』写真提供:フジテレビジョン

舞台は英国の田舎町ノーサンプトン。急逝した父から傾きかけた靴工場を受け継いだチャーリーは、大量に余った在庫を処理しようと訪れたロンドンでドラァグクイーンのローラと出会う。型破りな彼女に“隙間産業”のヒントを得た彼は、ブーツのデザイナーとして会社へ招待。パフォーマー仲間のエンジェルたちを引き連れて現れたローラは保守的な従業員たちの反発に遭うも、次第に彼らを変えてゆく……。

個性を異にする者を許容すること、そしてその出会いによって自分を変えてゆくこと。ハーヴェイ・ファイアスタインの脚本、ジェリー・ミッチェルの演出は、容易く見えてなかなか踏み出しにくい“その一歩”を、笑いとシリアス要素をバランスよく配しながら描きます。今回が初ミュージカルと思えないほど“こなれた”シンディ・ローパーの楽曲には、随所に或る一音を立てる“シンディ節”が忍ばされ、長年のシンディ・ファンにも嬉しい限り。

今回の日本版ではチャーリー役を小池徹平さん、ローラ役を三浦春馬さんが演じていますが、小池さんはチャーリーを人間くさい青年として演じ、特に婚約者、ローラ、従業員女性との言い合いシーン3連続の後にソロナンバーが続くくだりでは、“まっすぐすぎて周囲が見えない”チャーリーの不器用さを熱量たっぷりに演じています。いっぽう、三浦さんは序盤のショー・シーン以降、終始ドラァグクイーンとしての堂々たる存在感と個性的なパンチのある声で魅了しつつ、時折ローラの傷ついた心中もちらり。今のところ、今年のミュージカル界一番の“サプライズ”パフォーマンスではないでしょうか。
『キンキーブーツ』写真提供:フジテレビジョン

『キンキーブーツ』写真提供:フジテレビジョン

また女性なら小さく噴き出しつつ頷かずにはいられないソロをコミカルに歌う工場の従業員役・ソニンさん、“男らしさ”にこだわり、ローラを目の敵にするドンを愛嬌も滲ませながら演じる勝矢さん、ローラに出会い、生真面目さの殻を喜々として破る工場長ジョージ役のひのあらたさんら、共演陣もそれぞれに生身の人間を体現。そんな彼らが総出となって歌うフィナーレは肯定感に満ち、熱いものがこみ上げずにはいられません。

世界の各地で“不寛容”による悲劇が後を絶たない昨今、創作時よりさらにそのシンプルなテーマが重みを増す本作。ステージ上にキャストのあたたかな連帯感がたちこめる『キンキーブーツ』日本版は、改めて“人間の可能性”を信じさせる舞台となっています。

*次頁で『王家の紋章』『マイ・フェア・レディ』をご紹介します!