海宝直人undefined88年千葉県生まれ。95年『美女と野獣』チップ役でデビュー、99年から『ライオンキング』初代ヤングシンバを3年間演じる。08年『ミス・サイゴン』以降、大人のミュージカル俳優として活躍、15年『レ・ミゼラブル』マリウス、『アラジン』アラジン役を獲得。ロックバンド「シアノタイプ」でライブ活動も展開している。(C)Marino Matsushima

海宝直人 88年千葉県生まれ。95年『美女と野獣』チップ役でデビュー、99年から『ライオンキング』初代ヤングシンバを3年間演じる。08年『ミス・サイゴン』以降、大人のミュージカル俳優として活躍、『レ・ミゼラブル』『アラジン』『ライオンキング』『ノートルダムの鐘』等で大役に挑戦。17年5月からは『レ・ミゼラブル』で再びマリウスを演じる。(C)Marino Matsushima

子役として活躍後、着実にキャリアを重ねてきた海宝直人さん。15年の『レ・ミゼラブル』で大役マリウスに抜擢されて以降、『アラジン』『ライオンキング』『ノートルダムの鐘』に主演、ヤング・スターの仲間入りを果たしました。今年再び演じる『レ・ミゼラブル』についてはこちらで語っていただいていますが、本記事ではそれ以外のトピックについての最新インタビューに、3月のコンサート・レポートをプラス。海宝さんの“今”をお届けします!

(前回16年4月のインタビューは2頁目以降、『ジャージー・ボーイズ』観劇レポートは最終頁に掲載)

苦しみの果てに“希望”があった
『ノートルダムの鐘』カジモドという役

『ノートルダムの鐘』撮影:上原タカシ(C)Disneyundefined公演は6月25日まで四季劇場「秋」にて上演中ですが、海宝さんの出演回は終了。

『ノートルダムの鐘』撮影:上原タカシ(C)Disney 公演は6月25日まで四季劇場「秋」にて上演中ですが、海宝さんの出演回は終了。

――昨年、『ライオンキング』シンバ役のお稽古中にインタビューをさせていただきましたが、その数日後にシンバ・デビューされ、その後も『ジャージー・ボーイズ』『ノートルダムの鐘』に出演。大充実の一年でしたね。

「そうですね。たくさん機会をいただけた一年でした」

――まずは『ノートルダムの鐘』のお話からうかがいますが、稽古場見学会で至近距離で拝見した際、カジモドは極めて肉体的に負担の大きなお役に感じました。例えばお顔の筋肉はずっと歪んでいらっしゃいましたね。

「そうですね。でも回を重ねる中で自分の中では負担が減ってきたというか、体がそこに順応してきた感じはありました」

――背中もずっと丸めていて、あのまま固まってしまわないか、心配になるほどでした。マッサージなどはされていたのですか?

「あの状態がスタンダードだったので、固まっているんだか固まってないんだか、自分でもわからない状態でした。マッサージは通し稽古の直前に一度やっていただいたのですが、ちょっと体のバランスが変わってしまって、高い音が出にくくなってしまったんですね。ちょっと怖いなと思って、この演目の間はがっちりしたマッサージはしないようにしていて、代わりにストレッチを入念にやるようにしていました。ほぐしすぎるのも怖いなと思いまして。何せ特殊なポーズをしながら、体のどこに空気が入って、どこに力を入れたらいいかと考えながら歌っているので、筋肉がほぐれるとまた違うところを使わなくちゃいけなくなってきます。急激に筋肉の状態が変わると体がびっくりするので、あまり大きなほぐしというのはやらないようにしていましたね」

――ほかの演目より自分の肉体に敏感になりましたか?

「なりましたね。あれほど自分の声に対してセンシティブになったのも初めてですし、これまであまり声を潰すことがなかったのに、『ノートルダムの鐘』では稽古中にちょっと声が潰れて出なくなってしまったことがありまして、果たしてどういう声がいいんだろうと模索しましたね。どこにひっかければこの声で歌えるかと、ものすごく研究しました」

――カジモド役はトリプルキャストでしたが、3人で意見交換されたりも?

「発声に関してはそれぞれにやっていました。稽古の一番最初に、姿勢のことも含めて、演出家から、アメリカの初演の俳優はこういうふうにやっていたけど、それぞれの骨格に合った形があるから、自分が3時間やりきれる場所を探してほしいと言われたのです」

――内容の部分ですが、筆者が観ていてとても突き刺さるのが、エスメラルダ救出を諦めて塔にこもったカジモドに、ガーゴイルが“いいよカジモド、好きにしなさい”“どうせ私たち石だものね”と突き放すくだりです。確認ですが、舞台版のガーゴイルというのは“カジモドの心の声”なのですよね。

「そうですね、まさに心の声ですね。だからあそこは、(突き放す言葉によって)すべてを諦め、自分を攻撃し、見放している、という残酷な場面なんです。ガーゴイルたちにそう言われる前に、“うるさい、僕が手を出すとどういうことになるかわかっただろう、ひどいことになるんだ”と言い放っているのも、全部自分自身に向かって言っているんです。自虐的というか。だからものすごくしんどいですよ、あのガーゴイルの歌の部分は」

――その後再び立ち上がるカジモドですが、結果だけを見ればその命がけの努力は報われません。彼は絶望の中であの結末へと向かうのでしょうか、それとも“出来ることはやりおおせた”という思いを持っていたでしょうか?

「うーん、カジモドとしてはやはり、苦しみが大きかったのではないでしょうか。愛した人たちを一人は失い、一人は自分で手にかけるのですから、もうああいう形で抱きしめながら、地下で眠るしかなかったのだと思いますね。でもその後に皆が出てきて、ある仕草をしながら、未来に対する祈りを託していく。とても希望に溢れたシーンだと思います。そこには僕もいますが、カジモドであり、(本作を劇中劇として演じている中世の)会衆の一人であり……という微妙な立場で存在していて、自分の中ではすごく不思議な感覚なんですよね。いつか愛に満ちた時代が来ることを祈ろう、といって立ち上がるまでの中間点で、それはあの作品でしか味わえない感覚でした」

――そうして立ち上がり、肉布団をとって、締めの台詞を語ります。舞台版は原作と異なる部分がたくさんありますが、最後の台詞だけ、原作そのままなのですね。

「そうですね、そのままで、すごく大切な言葉なんだと思います。立ち上がって振り返った瞬間はもう会衆に戻っていて、カジモドを演じた一人の人間として、この後の出来事を語るわけですが、僕はあそこは思いを込めすぎず、努めて淡々と喋るように努めていました。御覧になっている方に、小説を読んでいるような感覚で聞いていただきたい。ページをめくるような存在でありたいなと思いながら、最後の台詞を語っていました」

――『レ・ミゼラブル』と本作でユゴーの作品を2作演じたことになりますが、共通するものを感じましたか?

「そうですね、原作小説はどちらも読みましたが、『ノートルダムの鐘』はもっと若いころに書いた小説なので、翻訳版を読んでいても文体にポップなものを感じます。小説ではグランゴワールという詩人が出てきて、コミカルなシーンが出て来るんですよ。『レ・ミゼラブル』はもっとシリアスですが、でも根本的に世界を鋭く観ていて、祈りがあるという部分はすごく共通していると思います。未来への祈りを強くメッセージとして伝えようとしていると感じますね」

――日本版初演ということで、アメリカ人演出家(スコット・シュワルツ)と緻密に作り上げて行かれたと思いますが、日本の演出家との違いはありましたか?

「日本の演出家も個性はそれぞれですので、根本的な部分ではあまり違いは感じなかったけれど、文化的な違いで“こういう部分が気になるんだ”ということはありました。例えばアメリカでは聖職者の性的虐待が社会問題になっているそうで、フロローにカジモドが対峙するとき、二人の位置によってはそういうものを想起させてしまう。アメリカではこういう部分について物凄く敏感だから、気にしてくださいと言われて、文化の違いがあるんだなと思いましたね。ただ、大聖堂が舞台ということで、(欧米ほどキリスト教が主流であるわけではない)日本だから理解しにくかったり、手直しが必要になった部分はありませんでした。キリスト教についての深い理解が無くても、感じることができる作品だと思います」

――(日本版の)オリジナルキャストとしてこの難役を勤めた経験は、大きな自信に繋がったのではないでしょうか。

「自分の中ではものすごく得難い、大きな経験になりましたね」

“緻密な音作り”を究めた
『ジャージー・ボーイズ』

『ジャージー・ボーイズ』写真提供:東宝演劇部

『ジャージー・ボーイズ』写真提供:東宝演劇部

――順序は逆になりますが、『ノートルダムの鐘』の前にフォーシーズンズのメンバーの一人を演じた『ジャージー・ボーイズ』も大きな話題となりました。が、同じホワイト・チームの福井晶一さんにうかがったところでは、実はお稽古が大変だったのだそうですね。

「ダブル・キャストで、稽古の時間があまりないという状況の中で、4人のハーモニーはこの作品において絶対的なものなので絶対に外せない、と同時にお芝居も大事で、リアリティのない芝居をしてしまったら成立しないという、一点も妥協できない作品でした。歌唱指導の先生がすごく繊細に音を聴いてくださる方で、それは低すぎる、それは高すぎると、細かく言ってくださって、そのご指摘はものすごく生きたと思います。とにかく限られた時間で高いクオリティに行かなくちゃいけないのが大変でしたね。(レッド・チームの稽古を)見ていることが多くて、(僕らも)やりたいよねと言っていたり。でもそういう状況だったからこそ、ものすごく団結しました」

――音の“高すぎる、低すぎる”というのはもしかして、例えば“ド”の音におさまってはいるけれど、その音幅の中で微妙に高い、低い、というようなことでしょうか?

「はい、4人でハーモニーを醸し出すにあたって、同じ音でも微妙にはまる箇所、心地よく聞こえる場所は変わってきますので。声の“色”もそうです。固い声と柔らかい声ではうまく混ざらない。ちょっとでも違うと方向性が変わってきますので、ホワイト・チームの福井さん、中河内雅貴さん、そしてフランキー・ヴァリ役の中川晃教さんとは、コーラス・グループとして本当に緻密な音(声)作りをしました」

――そうしたご苦労を経て、福井さんが3月に発表したCDでは『ジャージー・ボーイズ』の「君の瞳に恋してる」をデュエットされています。この時は作品の枠を離れた歌唱を?
福井晶一ファースト・ソロ・アルバム『Blessings-いつもそばに-』(2017年3月リリース)では「君の瞳に恋してる」をデュエット。

福井晶一さんのファースト・ソロ・アルバム『Blessings-いつもそばに-』(2017年3月リリース)では「君の瞳に恋してる」をデュエット。

「そうですね、決まりのないところで、自分のカラーで楽しく歌わせていただきました。楽しかったです」

歌い手、俳優として
憧れる“あの人”のように

――そろそろお時間ですので、最後に一つ。以前、今後のヴィジョンをうかがいましたが、今回は海宝さんが“目標”とされている存在がいらっしゃれば、お話いただけますか?

「海外の方ですが、ノーバート・レオ・バッツ(05年『Dirty Rotten Scoundrels』と11年『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』でトニー賞主演男優賞を受賞した米国人俳優)が好きです。シリアスもコメディも得意な俳優で、なんでも歌える。僕が出た『キャッチ・ミー~』にも出ていましたが、常に“次はどんな作品、どんな役をやってみせてくれるんだろう”と思わせてくれて、目標でもあり、すごく好きな役者さんです」

――ちょっと意外なお名前です。

「最近日生劇場で上演していた『ビッグ・フィッシュ』のブロードウェイ版にも主演していて、CDを愛聴していました。面白くて、哀愁も漂わせる。聴いててすごく好きだなあと思います。彼のように、人生のペーソスを表現できる俳優になれるよう、頑張っていきたいです」

*公演情報*レ・ミゼラブル』5月25日~7月17日=帝国劇場、8月1~26日=博多座、9月2~15日=フェスティバルホール、9月25日~10月16日=中日劇場
海宝直人 Birthday LIVE Home My Home in ICHIKAWA 2017」7月21日=市川市文化会館小ホール 「海宝直人 Birthday LIVE 2017 Home My Home in TOKYO」7月25日~7月26日=よみうり大手町ホール

「海宝直人LIVE NAOTO at home」公演レポート
(2017年3月9日)

『海宝直人LIVE NAOTO at home』3月9日公演より。(C)Hideo Nakajima

『海宝直人LIVE NAOTO at home』3月9日公演より。(C)Hideo Nakajima

ピアノを中心にギター、ドラム、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとアコースティックな顔ぶれのバンドが現れ、続いて海宝さんが登場。エリック・クラプトンの「Change the world」で、コンサートはスタートしました。ゆったりとしたリズムに乗って、『ノートルダムの鐘』の出演日程を終えた海宝さんと開放感を共有する場内。サビの部分に入り、海宝さんは“change the world”を張りのある声で引き立たせ、終わりの“world”をクラプトンよりも潔く、短くたたむように歌います。ポップスが何曲か続く中で、やはりクラプトンの「Tears in heaven」では“If”を立て、“heaven”で滑らかに旋律を装飾。歌いこむなかで磨いてきたのであろう海宝さんのこだわりがそこかしこに感じられます。続いて、槇原敬之さんの「Love was sleeping」や鬼束ちひろさんの「Sign」と、彼が学生時代に好きになったという楽曲を経て、父の影響で好きになったというオールディーズ「Hello Mary Lou」を軽快に歌い、ちょっとブレイク。開演前に寄せられた観客からの質問に答えるコーナーで、「休日は何をしていますか?」に「何かしら記憶する作業をしています。あとはNetflixで、今更ですが『24』を観ています」等、真面目な中にも“ふだんの海宝さん”が垣間見えるひと時に、会場も和やかムードに包まれました。

後半は“僕はドラえもんとディズニーで出来あがっています”という海宝さんらしく、ディズニー・メドレーにてスタート。「星に願いを」~「Can you feel the love tonight(『ライオンキング』。サビの高音“Can”が伸びやか)」~「The Beauty and the beast(『美女と野獣』日本語)」~「A Whole New World(『アラジン』日本語、サビの“自由~”の音の上昇が実に滑らか)」と、ゆかりの作品の楽曲を歌い、続いて『ヘラクレス』の「Go the distance」と『トイ・ストーリー』の「You’ve got a friend in me」を披露。前者は“なぜかリクエストの多い”楽曲とのことで、確かに海宝さんの雰囲気にぴったりですが、“持ち役”の楽曲とはどこか違う、フレッシュな歌唱。後者はジャジーなアレンジですが余裕たっぷりに歌い、たちまち場内を大人の空間に染め上げます。続いては“日本のアニメも”と『銀河鉄道999』のテーマと映画『ドラえもん のびたと太陽の伝説』から「この星のどこかで」。前者もお父様のコレクションを“荒らして”いる中で発見した曲だそうで、“新しい風に心を洗おう”という歌詞をそのまま立体化したような、躍動感溢れる歌唱。最後の“stars”も力強く、本当に星に届く勢いで伸び、この日のベスト歌唱ではないでしょうか。後者のドラえもん映画のテーマ曲は海宝さんが“ぐっとくる曲”だそうで、思い入れたっぷり。
『海宝直人LIVE NAOTO at home』3月9日公演より。(C)Hideo Nakajima

『海宝直人LIVE NAOTO at home』3月9日公演より。(C)Hideo Nakajima

また“やってない(今まで演じたことのない)ディズニー作品”ということで『リトル・マーメイド』から「Her voice」を、歌詞は劇団四季版、メロディは転調のある劇団四季バージョン“ではなく”オリジナルバージョンで、と海宝さんのこだわりを感じさせつつ歌った後で、いよいよ“次に向けて、決意を込めて”と、5月からマリウス役を演じる『レ・ミゼラブル』メドレーを。同じ事務所のtekkanさんのアレンジだそうで、“間もなく稽古が始まりますが、(再演とはいえ)まっさらな気持ちで、そして前回の(残った)課題を今回は丁寧に分析してクリアしたいと思っています”と抱負を述べたうえで歌唱。アカペラの「民衆の歌」から「彼を帰して」(←ずいぶん若いバルジャンぶりが新鮮)「A Heart full of love」そして「夢破れて」と、情感を込めて歌います。

そしてラストナンバーは、数日前まで演じていた『ノートルダムの鐘』から、意表をついて……エスメラルダのナンバー「いつか(Someday)」。“いつか夢はかなう 祈ろう世界は変わると”という歌詞のこのナンバーを、海宝さんは本作のテーマではないかと思っているそう。“(亡くなった)エスメラルダをおろして、そこにフロリカ(の亡霊)のソプラノ(が歌うSomedayの旋律)が響いてくるのを、カジモド役として、何とも言えない気持ちで聴いていました”という彼の歌唱は透明感に満ち、本編の感動がよみがえったのか、周囲の座席には涙を拭う方もちらほら。出演を終えた今、海宝さんの中にはこの役を自分が演じたことが信じられないような不思議な感覚があるのだそう。“、いったん(上演)劇場に役を置いてきたけれど、人間として役者として転機になった作品なので、(また機会があれば)体が許す限りチャレンジし続けていきたい。そして原作者ユゴーの社会風刺と観察眼を丁寧にくみ上げて(次は『レ・ミゼラブル』で)表現していきたい”と熱く語ってくれました。

そして“聴いてくれる方がいなければ、独り言でしかないので、皆さんが集まってくださることは奇蹟のようです”と感謝の言葉を述べ、アンコールを2曲。『Smash』の「Big finish」とディズニーランド・カントリーベア・ジャンボリーの「Come again」(←本当にディズニーお好きですね)で明るく、ゆるりと締めくくります。その高度なテクニックと誠実な人柄はもちろんですが、何より海宝さんの“歌うことの喜び”に溢れた時間は、爽やかのひとこと。彼の“歌遍歴”とも言えるレパートリーを聴きながら、こちらも彼の半生を楽しく振り返らせていただいたような気分で、会場を後にしました。

*次頁で16年4月の海宝さんへのロング・インタビューを掲載。『ライオンキング』『アラジン』やこれまでの歩みについて、丁寧に語っていただいています!


*2016年4月掲載 海宝直人インタビュー*
海宝直人undefined88年千葉県生まれ。95年『美女と野獣』チップ役でデビュー、99年から『ライオンキング』初代ヤングシンバを3年間演じる。08年『ミス・サイゴン』以降、大人のミュージカル俳優として活躍、15年『レ・ミゼラブル』マリウス、『アラジン』アラジン役を獲得。ロックバンド「シアノタイプ」でライブ活動も展開している。(C)Marino Matsushima

海宝直人 88年千葉県生まれ。95年『美女と野獣』チップ役でデビュー、99年から『ライオンキング』初代ヤングシンバを3年間演じる。08年『ミス・サイゴン』以降、大人のミュージカル俳優として活躍、15年『レ・ミゼラブル』マリウス、『アラジン』アラジン役を獲得。ロックバンド「シアノタイプ」でライブ活動も展開している。(C)Marino Matsushima

ここ数年、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『RENT』『メリリー・ウィー・ロール・アロング』等の話題作で、アンサンブルやセカンド・プリンシパルながらきらりと光る演技を見せていた海宝直人さん。芯のぶれない、確かな歌唱力と存在感に「あの人は誰?」と注目していた方も多いことでしょう。そんなミュージカル・ファンの思いに応えるかのように昨年、遂に『レ・ミゼラブル』で大役マリウスに抜擢。『アラジン』でもタイトルロールを演じ、今後も『ライオンキング』『ジャージー・ボーイズ』が続きます。一気にヤング・スターの仲間入りを果たした海宝さん、どんな方なのでしょう? その現在・過去・未来をとくとうかがいます!

ヤングシンバから青年シンバへ、『ライオンキング』への感慨

――海宝さんは今、『ライオンキング』のシンバ役を稽古されているのですよね。ディズニー・アニメを前衛芸術と伝統芸能の手法を使って舞台化した名作ですが、その日本版の開幕当初、海宝さんはシンバの子供時代の“ヤングシンバ”を演じていました。

「はい、『ライオンキング』は小さい頃、ヤングシンバとして出演した思い入れのある作品です。今回のシンバオーディションでは、絶対生半可にやりたくない、と思いましたし、子役の時から存じ上げている方々が(審査員として)ずらりと並んでいましたので、ものすごく緊張しました。『終わりなき夜』を歌い、台詞を聞いていただいて、シンバ役の候補に合格しました」

――ヤングシンバの心境を経験されている海宝さんとしては、大人シンバも演じることで両者の心境が“つながった”という感覚があるでしょうか?

「そうですね、ヤングシンバとしての経験は大きいですね。自分の中で(大人シンバを演じる上で)すごくヒントになります」

――本作はシンバの成長物語であるわけですが、その成長は“一足飛び”ではないですよね。「終わりなき夜」を歌う過程でシンバは人生の迷いから醒め、“問題が解決した”ように聞こえるものの、その後ナラと再会し、帰還を促されるうち再び殻に閉じこもります。「終わりなき夜」での問題解決はどうしてしまったのかな、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、海宝さんはどう解釈されていますか?

「『終わりなき夜』は、過去は変えられない、でも自分の中で一つ(何かを)変えていくんだ、という“最初のきっかけ”なのかな、と思っています。その時点では前向きになっているのだけど、幼馴染のナラに会って“帰ってきて”と言われると、(父・ムファサの死の責任が自分にあるという)本当のことはとても言えない、帰りたくても帰れないんだという、問題の大きさに直面するんです。そのジレンマを抱えながら、次にラフィキと出会って“(変わるのは)たやすいことではない”と揺れ動く。そういうものが一連の流れの中にあって、最終的に「王となる」を歌う。そこでやっと“帰って王になるんだ”という確固たる思いが生まれるのだと思います」

――なるほど、トラウマが大きかっただけに、シンバは少しずつ、段階的に考えを変え、成長してゆくということなのですね。今は稽古の最終段階かと思いますが、どういった点を詰めていらっしゃるのでしょう?

「ジュリー(・テイモア)さんの演出はアジアの伝統芸能に影響を受け、様式性を求めるものですので、まずはそれをきちんと身に着けるというのが一つ。『アラジン』だったらナチュラルに(等身大の人間として)いられるのですが、『ライオンキング』では様式的な部分がすごく大事にされるので、そこに入ってくのが大変ですね。体の重心一つにしても、『ライオンキング』にふさわしいものが求められます。そのいっぽうで、そうやって様式を体に入れつつも、(台詞の)意識がどこで折れて(変化して)ゆくかといったことも丁寧に勉強しています。

僕のシンバをどう演じるか、については今はまだ模索中ですが、思春期の揺れ動くところは大事に描きたいなと思っています。『終わりなき夜』もただ歌い上げるのではなく、丁寧に。動きについても一つ一つ、意味をつきつめて稽古させていただいているので、それらを大事にすることで、シンバという役が見えてくれるのかなと思ってます」

(海宝さんがシンバを演じた『ライオンキング』観劇レポートはこちらに掲載)

伝説のポップス・グループの物語を巧みな構成で描く
『ジャージー・ボーイズ』にボブ役で出演

『ジャージー・ボーイズ』

『ジャージー・ボーイズ』

――その後に控えているのが『ジャージー・ボーイズ』。実在のポップス・グループ、フォー・シーズンズの栄光と悲哀を、バンド名にちなんで4つの場面に分け、メンバーがそれぞれの場面をナレーションしながら展開させてゆくという心憎い構成で、トニー賞作品賞(06年)を受賞した傑作です。フォー・シーズンズを全く知らない方が観ても楽しめる作りですが、基本はあくまでポップス・グループのサクセスストーリー。何はともあれ、4人のハーモニーが“肝”になりそうですね。

「先日、PVの撮影がありましたので、歌練習は既に何度かやっています。“合わせる”ことももちろん大事ですが、ブロードウェイ版でも4人それぞれの個性が立ったうえでのハーモニーになっていたので、そこをどう出して行くかがポイントかな、と思っています。

今回は中川晃教さん演じるフランキー以外の役はwキャストで、僕は中川さんのほか福井晶一さん、中河内雅貴さんとご一緒のホワイト・チーム。すごく個性的なメンバーなので、この4人が一つになった時に(舞台上で)どんな感覚になるんだろう、ととても楽しみですね。年長格のニックを演じる福井さんがすごく穏やかで素敵な方で、僕らを引っ張ってくれるので、(両チームに出演する)アッキーさん(中川さん)は“ホワイト・チームは爽やかだね”とおっしゃっています。協調性もばっちりのチームになるのではないかな」
『ジャージー・ボーイズ』2組集合!undefined写真提供:東宝演劇宣伝部

『ジャージー・ボーイズ』2組集合! 写真提供:東宝演劇宣伝部

――海宝さんが演じるのは、作曲の腕を見込まれ、最後にフォー・シーズンズに参入するボブ役。海宝さん自身、バンドで曲作りもされていることでキャスティングされたのでしょうか。

「どうでしょうか(笑)。バンド活動をやっているというのは、もしかしたら(キャスティングに)影響しているのかもしれないですね。舞台上ではピアノもちょっとは弾くのかな?

映画版の印象で言えば、ボブは自分の(作曲の)才能をしっかり自覚していて、フランキーをソロ活動へと誘う役。音楽家としての在り方を掴んでいかなくちゃいけない、と思います。ただ、演出の藤田俊太郎さんは“映画版もブロードウェイ版も観なくていいですよ、今回は全然違うものにするから”とおっしゃっているんです。日本版ならではの決定版にするから、と。ですので、僕としては稽古を楽しみにしつつ、全てを(藤田さんに)委ねようと思っていますね」

*次頁からは海宝さんの「これまで」をうかがいます。可愛すぎる(!)幼児期のお写真も登場しますよ!

学校よりも自然に、舞台が
生活の一部になっていた(?)子役時代

3歳の海宝直人さん、姉のあかねさんと。初めて観た『アニー』をきっかけに、歌やごっこ遊びに夢中になっていた頃(?)写真提供:海宝直人

3歳の海宝直人さん、姉のあかねさんと。初めて観た『アニー』をきっかけに、歌やごっこ遊びに夢中になっていた頃(?)写真提供:海宝直人

――海宝さんというと、筆者の中には『ライオンキング』ヤングシンバの印象が今も強く残っていますが…、あっと言う間に大きくなられましたね(笑)。子役を始めたのは、お姉さん(劇団四季俳優・海宝あかねさん)の影響だったのでしょうか?

「はい、3歳ぐらいの時に姉が出演していた『アニー』を青山劇場に観に行きまして、舞台も観たし、楽屋に遊びに行ってちょっと年上のお姉さんたちに遊んでもらったりしたのが、僕のミュージカルの原体験です。それから、家でも自然に姉とアニーごっこをするようになって、“負けやしないわ~”と歌ったりしていましたね(笑)。

その延長線上で、幼稚園年長の時に劇団四季の『美女と野獣』のオーディションがあると聞いて、ミュージカルのレッスンを受けたことはなかったけれど、歌うことが好きだったので受けてみたら、チップという子役で受かったんです。はじめは開口などもできなかったけれど、子役担当の俳優さんがつきっきりで教えてくださって、できるようになりました。初めて母音法が出来るようになった感覚は今でも覚えていますね。それは僕の(俳優としての)基礎の大きな部分となっているかもしれません。

当時は子供ならではの怖いもの知らずで、物怖じしていた記憶はほとんどないですね。大人の方たちもかわいがってくださったけど、稽古中、子供同士で悪戯をしてよく怒られました(笑)。(後年『レ・ミゼラブル』『ジャージー・ボーイズ』で共演する)福井晶一さんはその時出演されていて、当時の僕をよく覚えて下さっているそうです。チップは開幕すぐから千秋楽まで、3年間出演していました。学校より楽しくて、劇場に通うのが“生活の一部”になっていましたね」

――その次が『ライオンキング』のヤングシンバ。オーディションの記憶はありますか?
ヤングシンバを演じた折の海宝さん。写真提供:海宝直人

ヤングシンバを演じた折の海宝さん。写真提供:海宝直人

「『ライオンキング』は初めて歌って踊って駆け回る役だったこともあって、明確な記憶があります。小学3年生で自我も芽生えていたので、実はすごく緊張していたんですよ(笑)。演出助手のジェフリーさんはじめ、海外スタッフの方々がいらっしゃるなかで、ザズからパペットを奪う動きなどがうまくできず、どうやったらいいんだろう、と焦ったりしていました」

――しかし見事に合格。主人公の子供時代ですから、『美女と野獣』のチップとは比べ物にならないほど、責任の重いお役でしたね。

「この台詞はどういったらいいかなとか、子供ながらにいろいろ考えた記憶があります。『朝のご報告』というナンバーの稽古の時に、海外スタッフの方が稽古ピアノを弾きながら“歌ってみて”と言ってくださってわくわくしたり、初めて舞台に立ってサバンナでライトを受けた時の眩しさといったものを、今も覚えていますね。大変なこともあったけれど、舞台の上ではすごく楽しかったです。ライトを浴びるときは緊張感より、高揚感のほうが勝っていたかもしれません」

――『ライオンキング』の感動ポイントの一つが父子愛。父・ムファサのしみじみとしたナンバー「お前の中に生きている」に繋がってゆくヤングシンバの“僕たち、ずっと一緒だよね”はとても重要な台詞ですが、意識していましたか?

「すごく大事にしなきゃいけないよ、と言われたことを覚えています。あのシーンの、ムファサに抱きつくときの感覚とか、“ずっと一緒だよね”と言った時にムファサが何も言わずに僕を下ろして、“何なんだろうな”という気持ちになったことなど、リアルに覚えています。ムファサと遊んでいたのが、急に空気が変わって、ムファサが淋しげな表情になる。その時の感情は今思えば、“切なさ”というものだったんですね」

――1幕の最後に、落ち込んでいたヤングシンバはティモンとプンバァに“ハクナマタタ”という言葉を教えられて、元気に歌いながら袖にはけていきます。それがヤングシンバの出番の最後ですが、あの数秒間には思い入れが?

「最後の出演日のことは覚えてますね。この数秒間でもう終わりなんだなあ、と思っていました」

『ミス・サイゴン』で“大人の俳優”として再始動

『メリリー・ウィー・ロール・アロング~それでも僕らは前へ進む』(写真提供:ホリプロ)。宮本亜門のエネルギッシュな演出に懸命に応え、旬の若手俳優たちが火花を散らす中でフレッシュな存在感を示した。

『メリリー・ウィー・ロール・アロング~それでも僕らは前へ進む』(写真提供:ホリプロ)。宮本亜門のエネルギッシュな演出に懸命に応え、旬の若手俳優たちが火花を散らす中でフレッシュな存在感を示した。

――その後、“役者を一生の仕事にしたい”と思ったのはいつ頃だったのでしょう?

「高校3年の頃ですね。それまでは事務所に所属してスチールや映像のお仕事をちょこちょこやらせていただいていたのですが、2008年の『ミス・サイゴン』のオーディションの広告が読売新聞に“全キャストオーディション”と大きく出まして、これに受かったことでミュージカルを続けていこうと思ったんです。18歳で合格して、出演時には19歳。ちょうど『ミス・サイゴン』が全体的に刷新された時期で、僕は男性では最年少だったと思いますが、一つ年上の方や、20代前半の方もいらっしゃいました。

東宝の大作はそれが初体験でした。僕はGIの役で、女性とのペアダンスもあったし、初めてのことばかりで緊張しました。作品の稽古に入る前に“スクール”といって、ダンスや歌、物語の背景レクチャーなど半年間くらい学ばせていただいて、すごくいい経験になりましたね。

『ミス・サイゴン』ではスクールを含めると1年以上関わっていたので、長期間新鮮さを保つことの難しさを学ばせていただきました。アンサンブルはやることも大方決まっているので、一歩間違えると単なる“ルーティン”になってしまいます。日々新しいことにチャレンジしていかないと、作業のように流れてしまうこともあり得るので、いかにモチベーションを保ってゆくか。アンサンブルでは、振付やこのタイミングでライトの中に入るといったことは決まっていましたが、例えばバーに入って何を注文するのかといったことは自由だったので、そういうところで工夫するようにしていました」
『フル・モンティ』写真提供:フジテレビ

『フル・モンティ』写真提供:フジテレビ

――その後、多くの話題作にアンサンブルで出演されましたね。当時から“いつか主役を”という思いをお持ちだったのですか?

「歌を一人で歌える役をやりたいという思いはありました。そのために、歌を研究しましたね。アンサンブル時代に特に印象に残った作品ですか? どれもそれぞれ勉強になりましたが、『フル・モンティ』はとりわけ印象に残っています。ゲイのストリッパーという、やったことのない濃い役で(笑)、Tバックも穿きました。稽古現場も一般的なミュージカルの現場とは違って、毎日みんなで新しいアイディアを出しあって、日々全く違うことをやる。それを最終的に福田さんがまとめていく…という過程がものすごく刺激的でした。僕の場合、例えば福田さんにある日“東宝ミュージカル風にそこ、お願いします”と言われて、大きなお芝居をやったり。みんないろんなことをやるので、どんどん長くなって、どんどんカットされて。ボツになったアイディアはたくさんありましたね。あの稽古、観ていただきたかったなあ。完成した舞台にもお客様がすごく笑ってくださって、とても嬉しかったです」
『ファントム』シャンドン伯爵役undefined写真提供:梅田芸術劇場

『ファントム』シャンドン伯爵役 写真提供:梅田芸術劇場

――ソロのある役に進出するきっかけになったのは、『ファントム』(2010年)のシャンドン伯爵役でしょうか?

「そうですね、シャンドン伯爵です。オーディションを受け、演じさせていただきました。あの時は、作品自体はミュージカルなのですが、演出が鈴木勝秀さんで、舞台の作り方が芝居を構築していく感じでした。ミュージカルで伯爵役だと、とかくスタイルで(様式的に)演じてしまいがちなのですが、そうではなく、この人物がこういう状況になるとどう心理的に崩れていくか、ということのリアリティを学ばせていただきました。貴重な経験でしたね」

*次頁ではいよいよ『レ・ミゼラブル』マリウス役を掴み、新進スターとして頭角を現し始めた頃、そして今、抱いている夢をお話しいただきます!

『レ・ミゼラブル』マリウス役で一躍、注目を集める

『レ・ミゼラブル』写真提供:東宝演劇部

『レ・ミゼラブル』写真提供:東宝演劇部

――そして大きな転機となったのが『レ・ミゼラブル』だったのですね。

「オーディションには演出補のエイドリアン(・サープル)さんがいらっしゃったのですが、彼はすごく役者を大事にしてくださる方なんですよ。いわゆる、オーディションの“はい、やって下さい。はい、お疲れ様でした”という感じではなくて、場を和ませて“こういうシチュエーションで、こういうふうにやってみようか”と何回かトライしながら、その人の持っているものを引き出してくださるんです。ワークショップみたいな感じで、それ自体に学びのあるオーディションでした」

――そこで引き出されたものが評価され、合格に繋がったのですね。本番での海宝さんのマリウスには、“若さゆえの危なっかしさ”が漂い、バルジャンが助けたくなるのにも説得力がありました。
『レ・ミゼラブル』写真提供:東宝演劇部

『レ・ミゼラブル』写真提供:東宝演劇部

「僕は子供の頃から『レ・ミゼラブル』が好きで、何回も観ていたし、とても出たい作品でした。だからイメージはいろいろあったのですが、自分がチャレンジするからには今までのマリウス像を忘れて、一から作ってみようと思ったんです。現場でディスカッションしながら作っていきましたね。

僕の中では、マリウスの“成長”を大事に描きたい、という思いがありました。最初にアンジョルラスと一緒にビラを配るシーンにしても、未熟さゆえの熱さ、力強さを出したい。はっきりした信念のあるアンジョルラスとは違って、マリウスには行き場の定まらない熱さがある。だからコゼットと出会った時に、ばっとその恋に走ってしまうんです。そんな彼が、エポニーヌの気持ちに気づいていなかったことを彼女の死を通して初めて知り、大事な友人たちもバリケードで次々に失ってゆく。そういう悲劇を経験することによって、最後にコゼットという一人の女性を“守る”人間に成長してゆくのです。その過程をできるだけ丁寧に演じようと努めましたね」

――続く大役は『アラジン』のタイトルロール。やはりオーディションで掴んだお役ですね。私もどきどきしながら見学しましたが、ご自身は?

「いやあ、緊張しましたね。アニメ版は、小さいころからビデオを何度もテープを巻き戻して観て、愛着のある作品だったので、最初はがちがちでした。でも歌の審査で『逃げ足なら負けない』というナンバーを歌いだしたら、海外スタッフの方々が楽しそうに聞いて下さって、それが救いでした(笑)」

――オーディションでは演出補のスコットさんが台詞審査の際、皆さんに「テンポよく、間を詰めて」と何度もおっしゃっていました。これはお稽古でもポイントだったのでしょうか?
『アラジン』(C)Disney 撮影:荒井健

『アラジン』(C)Disney 撮影:荒井健

「すごく難しかったです。確かに海外スタッフには“なるべく間を切ってください”と言われましたが、テンポを出すからと言って台詞がつぶれてはいけません。それに日本版ではジーニーとの友情やジャスミンとの愛情をしっかりと描くことで、大きな感動を得ていただくということが重視されていますので、テンポ感と間合いとのせめぎあいはいつも感じながら演じていました。オーディションを受ける前にブロードウェイ版を観て、その時はただただ楽しんでいましたが、振り返るとやはり(日本版より)ショーの部分が強く押し出されていたかもしれません。(自分が出演を経験した)今、また観たら新たな発見があるかもしれないですね」

――海宝さんは音楽活動にも力を入れていらっしゃるのですよね。

「ええ、4月24日にディナーライブ、そして7月にはバースデーライブと東山義久さんたちとのVOCE CONCERTOというライブを控えています。今月のディナーライブでは、主にディズニーをやりたいなと思っているんですよ。前回のライブではディズニー“ミュージカル”をテーマにしていましたが、今回はシャーマン兄弟(『メリー・ポピンズ』)からアラン・メンケンまで、様々な作曲家によるディズニー“アニメーション”の名曲を歌います。

ライブをやる第一の理由は、歌が好きで、自分の表現手段として追究してゆきたいという思いからです。歌が好きになったのは3歳ぐらい、家族とミュージカルごっこをしていた時からですね。自分が理想とする声が出せなくて壁にぶち当たったことは、もちろんあります。でも、だからやめようと思ったことは一度もなくて、発声や解剖の本を買いあさって研究しました。凝り性なんです(笑)。今の自分の声はそうやって作ってきたものですが、まだまだ、作品やカンパニーによって求められる声はいろいろなので、柔軟性を持ちたいですね。例えばクラシカルな発声が求められる作品であれば、それに対応できる自分でありたいです。ミュージカル俳優をやっている以上、それは大事なことだと思います」

――今のお話の延長線上になりますが、今後のビジョンをどう描いていますか?

「ミュージカルは僕の原点であり、好きなものでもあるので突き詰めていきたいですし、歌も永遠に勉強し続けたいと思っています。その一方で、ストレート・プレイもやっていきたいし、機会があれば映像にもチャレンジしたいです。体が一つでは足りない? そうですね(笑)。

あとは、自分に出来るかどうかわからないけれど、いつかミュージカルを書くということにも興味があります。もちろん海外の作品も素晴らしいものはたくさんありますが、日本語で作られた作品は自然に気持ちが入りやすいこともありますし、以前、事務所の先輩のtekkanさんが演出したオリジナル・ミュージカル『POSTMAN THE MUSICAL』に出演して、日本人が作るものには独自の繊細さがあるなと感じました。そういう舞台の創造にはとても興味を持っています」

*****
芸歴20年以上、ということが信じられないほど、終始初々しく語ってくれた海宝さん。98年7月の『ライオンキング』ヤングシンバ役オーディションでは、天才肌だったりダンスが得意だったりといろいろなお子さんがいるなかで、無心に、のびのびと課題に取り組む海宝少年はひときわ目立ち、すぐに審査員たちに好感を持たれていることがうかがえました。その後様々な経験を重ね、地道に、いくつもの壁を乗り越えて来た彼。しっかりと身に着けた技術はもちろんですが、その芯には今もあの日の、“ただただ、芝居が好き”という無心の原動力があり、私たちを魅了しているのでしょう。昨年からの大役ラッシュを経て、今後彼がどんな役者になってゆくのか、興味は尽きません。

*公演情報*
◎『ライオンキング』上演中=四季劇場「春」(出演者スケジュールについては劇団HPにてチェックを)
『ジャージー・ボーイズ』7月1~31日=シアタークリエ(6月29,30日プレビュー)
◎『NAOTO KAIHO スプリング・プレミアム・ディナー・ライブ“Friend Like U”』4月24日=ザ・プリンス パークタワー東京
◎『海宝直人 Birthday LIVE』Home My Home in Ichikawa 7月4日=市川市文化会館 小ホール
◎『VOCE CONCERTO~GALAXY DREAM~』(7月18~19日)=赤坂BLITZ
*次頁に『ジャージー・ボーイズ』観劇レポートを掲載しました!*

『ジャージー・ボーイズ』観劇レポート
極上のハーモニーに彩られた
“やんちゃ坊主”たちの愛しき半生

『ジャージー・ボーイズ』写真提供:東宝演劇部

『ジャージー・ボーイズ』写真提供:東宝演劇部

演出は『ザ・ビューティフル・ゲーム』『手紙』が記憶に新しい、新進気鋭の藤田俊太郎さん。『NINAGAWA・マクベス』など、ダイナミックな空間使いで知られる蜷川幸雄さんのもとで修業を積んだとあって、今回も客席通路から舞台上の3層構造のセットまで、劇場空間全体を使った演出が特徴的です。
『ジャージー・ボーイズ』フランキー=中川晃教undefined写真提供:東宝演劇部

『ジャージー・ボーイズ』フランキー=中川晃教 写真提供:東宝演劇部

とりわけ、ヒットチャートを登りつめたフォー・シーズンズの4人が最上部に組まれた楽屋セットで話す構図では、彼らの達成感が一目瞭然。またリーダー格・トミー(wキャスト、この日の出演はホワイトチームの中河内雅貴さん)の膨大な借金を巡って一同が積年の鬱憤を露わにする場面では、ギャングの親分(阿部裕さん)さえたじろぐ迫力の台詞の応酬があり、演劇的な見ごたえも十分です。
『ジャージー・ボーイズ』トミー=中河内雅貴undefined写真提供:東宝演劇部

『ジャージー・ボーイズ』トミー=中河内雅貴 写真提供:東宝演劇部

そんななかで浮かび上がるのが、“ニュージャージーっ子”であることに誇りを持ち、結ばれた4人の絆。世慣れたトミー、ナイーブな少年から大人へと成長してゆくフランキー、地味な役回りに甘んじつつ“何か他の道”を夢見続けるニック、そしてフランキーとの出会いで作曲家の才能を開花させてゆくボブ……。
『ジャージー・ボーイズ』ボブ=海宝直人undefined写真提供:東宝演劇部

『ジャージー・ボーイズ』ボブ=海宝直人 写真提供:東宝演劇部

一見ばらばらのキャラクターを中河内雅貴さん、中川晃教さん、福井晶一、海宝直人さんが“オリジナル・キャスト?”と見まごうフィット感で演じ、彼らの絆を絶妙のハーモニーに昇華させています。特に全米ヒットチャート1位第二弾となった「Walk like a man」の声バランス良し、息もぴったりの歌唱は必聴。
『ジャージー・ボーイズ』ニック=福井晶一undefined写真提供:東宝演劇部

『ジャージー・ボーイズ』ニック=福井晶一 写真提供:東宝演劇部

基本的に派手な振付のないフォー・シーズンズですが、今をときめくミュージカルスターであるこの4人が歌うと、リズムに乗ってのちょっとした振りも見どころです。特にアップテンポなナンバーでの中河内さんと福井さんの動きは、同じ振りでもご自身たちの持ち味がにじみ出ているのでしょう、随分とニュアンスが異なって興味深く、目が離せません。
『ジャージー・ボーイズ』写真提供:東宝演劇部

『ジャージー・ボーイズ』写真提供:東宝演劇部

スピード感とメリハリ重視で進行してゆくオリジナル版と比べ、より各人物像を掘り下げた印象のある今回の藤田演出。中川さんは“スター”の虚像と家庭人としての在り方の狭間で揺れるフランキーに“やさしさ”を(そして歌唱においてはまろやかさのある声質で、実在のフランキーよりR&B的なテイストも)、中河内さんはどこまでも自分流で物事を進めようとして挫折するトミーに“憎めない愛嬌”を、福井さんはおおらかに見えてある日突然感情を爆発させるニックに“人間臭さ”をプラス。また海宝さんはその端正なたたずまいに、最後にグループに加わった“弟分”の冷静な視点を漂わせており、4人の関係性がよりヴィヴィッドに描きだされています。
『ジャージー・ボーイズ』写真提供:東宝演劇部

『ジャージー・ボーイズ』写真提供:東宝演劇部

いったんは袂を分かった4人が再結集した後、“その後”を語る終盤。実話に基づいているだけに、そこにはある種のほろ苦さが漂いますが、今回の日本版ではそれに加え、演じる俳優たちが残すそれぞれの“味”が格別です。“Oh, What a night”に始まるヒット曲群が耳に残る中で、日本版『ジャージー・ボーイズ』は“ジャージーのやんちゃ坊主たち”の半生が、この上なく愛おしく映る舞台に仕上がっています。

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